正義とは一体何であろうか。辞書で「正義」と引いてみたところ、「道理にかなっていて正しいこと」とあった。しかし俺は懐疑する。それは本当に道理にかなっていると言えるのだろうか。
例えば、互いに異なる正義を掲げるＡとＢがいたとする。そして双方の正義は互いに相入れぬものとしよう。今、ＡとＢがそれぞれの正義の正当性を主張するために議論し、ＡがＢを論理的に打破したとする。この時、Ｂは自らの正義の理論的な瑕疵を認め、これを是正する姿勢を見せるだろうか。否、より強固に頑なに自らの正義の正当性を唱え続けるだろう。
以上の例を見るに、俺は正義が道理にかなっているとは到底思えない。むしろ非論理的であるとさえ言えよう。正義を拠りどころに行動する人々についても同様だ。そしてそれは、決して他人事として片付けることは出来ない。大なり小なり、我々もまた何かしらの正義に基き行動様式を決定しているであろうからだ。