【妄想劇場】 同窓会 | まきしま日記~イルカは空想家~

まきしま日記~イルカは空想家~

ちゃんと自分にお疲れさま。

今朝、玄関に落ちていた1枚のハガキ、
中学の同窓会の招待状。

もう中学のヤツラとは十何年も会っていない。
会える訳がない。

俺は学校が大嫌いだった。
逃げるように高校を中退。
でも逃げ出した先は、社会はもっと厳しかった。

社会では誰も何も教えてくれなかった。
職場に馴染めず仕事を転々、
定職につけぬまま、気がつけば30になっていた。

どこの職場に行っても思う、俺は頭が悪い。
もっと勉強しておけば良かった、
そうすればこんなに馬鹿にされずに済んだのに。

そういえば中学時代、凄え勉強が出来るヤツがいたな。
テストはいつも学年1位、俺はアイツに生まれたかった。

アイツは今頃、どんなエリートになってるのかな。





今朝、玄関に落ちていた1枚のハガキ、
中学の同窓会の招待状。

学生時代のことなんて、
もう何年も思い返したことなかったな。

俺はとにかく勉強が出来た。
中学も高校も学年1位、現役で一流大にも合格。

思えば俺は、周り中のヤツラを馬鹿にしていた。
そんな俺に、友達なんているはずもない。

でも社会に出て思い知らされた、
俺より優れたヤツなんて腐るほどいることを。
同期の背中を遥か先に見送る屈辱、
学生時代、周りはこんな風に俺を見てたんだろうな。

そう言えば中学時代、
バカばっかやってみんなを笑わせてるヤツがいたな。
俺はソイツを心底見下していた。
でも本当は、自由奔放なソイツが羨ましかった。

アイツは今、何をしてるのかな。





今朝、玄関に落ちていた1枚のハガキ、
中学の同窓会の招待状。

もう十年も地元には帰っていない。
友達どころか、親にも会っていない。

学生時代、俺はとにかくみんなの人気者だった。
みんな言った、「お前、お笑い芸人になれよ!」

高校卒業と同時に、親の猛反対を押し切って上京。
もちろんお笑い芸人になる為だった。
3年でお笑い界の頂点に上り詰めてやる!
とんだ自惚れだった。

テレビに出るなんて夢のまた夢、
舞台にすら上がらせてもらえない。
食ってく為に本業そっちのけでバイトバイト、
何人もの後輩が俺を追い抜いて売れていった。

そういえば中学の頃、凄え可愛い子がいたな。
ずっと片想いしてたけど、その子はみんなのマドンナ、
俺なんかが告白出来るはずもない。

あの子は今頃、何をしてるのかな。





今朝、玄関に落ちていた1枚のハガキ、
中学の同窓会の招待状。

学生時代、私はみんなにチヤホヤされた。
「可愛い」と言われることなんて、
私にとっては当たり前だった。

高校を卒業してすぐに上京、
夢は女優になることだった。

でもオーディションを受けるたびに落選。
それでも何回も何回も受け続けた。

そんな時、スカウトが私に声をかけて来た。
「君凄くいいよ!うちの専属女優にならない?」
まさに夢のような話だった!

でもそれは、AV女優のスカウトだった。
訳も分からず初めての撮影、
大金と引き換えに、私は身も心も汚れてしまった。

こんな私が、どんな顔してみんなに会えばいいの?
帰れない。今の私に帰る場所なんてどこにもない!





同窓会には、100人以上が集まった。

みな後ろめたい”今”を背負い、
みな語ることの出来ぬ”今”を背負い。

それでも”過去”は色あせず、
それでも”過去”はかけがえのなく。

酔いが覚め、一時の回顧から覚めれば、
みな容赦なく”今”に引き戻される。

そして明日が来ればまた、
みなそれぞれの”今”を歩んで行くのだろう。
ただ昨日までと違うのは、
それぞれがみな”帰るべき場所”を胸に秘めて。