水引幕とは別途、現在進めている 大幕の復元新調事業。
「布を選ぶだけ」
これに想像以上の苦労がありました。
現用(昭和期)はフェルト、本来(江戸期)は羅紗。そのため、大幕は 原点に立ち返り羅紗で復元する方針を取りました。
業者の方にご用意いただいた生地は3種類。
厚み(1.2〜2.0mm)、ウール混率、風合いを細かく比較し、光の反射や色の沈み方まで確認しました。色味もこだわり、現用幕に近い深みのある赤を求めました。
そのなかで最も近く、質感も厚みも納得できたのが
ウール90%/ポリエステル10%・約1.8mm の生地でした。
「ウール100%のほうがいいのでは?」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし実際に触り比べた結果、質感・風合い・耐久性の総合点は90%の方が上と判断しました。
特にウール100%は湿気や虫害に弱く、長期保存を考えるとリスクがあります。
祭礼の品は、一代で終わるものではありません。
二代、三代先まで残るものを考えると、90%が最良の選択だと確信しました。
先日、生地を使用した試作品が届きました。
色味も質感も予想以上に良く、旧幕との違和感がほとんどありません。
手に取った瞬間、
「これなら胸を張って未来へ託せれる」そう素直に思いました。
生地を決めたので、ここから仕立ていただきます。
完成がとっても楽しみです!
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【番外編】
今回の復元新調にあたり、
私は一度、「もうこれでいいか」と妥協しそうになった瞬間がありました。
事業をうまく進めることばかり考えて、当たり障りなく終わらせようとしていたのです。
しかし、仲間と議論したとき。
先輩が語ってくれた過去の苦労を聞いたとき。
後輩たちが未来を語りながら目を輝かせていたとき。そして、これまで軕を守り繋いできた担い手の方々の思いを考えたとき。
ふと、気づかされました。
東軕の一番の敵は、
「妥協しようとする自分」
そう気づいた瞬間、「中途半端な選択はすべきでない」と心の底から思い直しました。
最近は、選択や決断の連続で、
歴史という名の祭礼独自の重圧に押しつぶされそうになることがあります。
ただ、未来の担い手たちが、私たちが本気で作ったものを目にしたとき、心から感動する姿を想像すると
辛さが、幸せに変わります。

