#375で若干書きましたが、「メタゲノム」を応用して海中の微生物に焦点を当てている研究者達がいます。

日本経済新聞(朝刊) 2007年9月17日(月) 23面
「微生物ゲノム研究活発化 腸内細菌国際計画発足へ 培養不要の新技術カギ」

(Quote) 人体や海、土壌など地球のあらゆるところにいる微生物のゲノム(全遺伝情報)を調べる動きが各国で活発になっている。...(中略)...人類が知りえている微生物はわずか。微生物は新たな資源で、新薬やバイオ燃料などの製造に役立てようと期待が高まっている。

...(中略)...

 海の微生物に照準を合わせたのは米国のクレイグ・ベンター博士だ。博士はヒトゲノム解読で日米欧の国際チームに先駆けたことで知られるが、私財を投じて研究所を設立し世界の海洋微生物を網羅的に調べ始めた。

 海洋調査船を世界一周の旅に派遣、行く先々で海水を収集し、生息する微生物のゲノムを調べている。すでに六百万種もの未知のたんぱく質の存在を示すデータを得たことを公表し、世界の科学者を驚かせた。

 日本の海洋研究開発機構も地球深部探査船「ちきゅう」が津軽海峡の海底深くの地層から得た資料で多数の微生物の存在を示すデータを得た。

 欧州ではBASFやバイエルといった大手化学企業が大学と組んで土壌などの微生物を網羅的に調べる産学共同研究を始めた。「石油資源が底をつくことを見越して石油を原料にしないバイオ合成プロセスに着目しているからだ」と、この分野に詳しい協和発酵の中川智マネジャーはみる。

 微生物ゲノムに注目が集まるのはメタゲノムが登場したため。この技術は海水や土壌に含まれる様々な種類の微生物を培養せずにゲノムをすべて分析する。培養できない九九・九九%の微生物の世界に迫れる。

 メタゲノムはゲノムの解読装置が飛躍的に進歩して実現した。ヒトゲノム解読後も装置の性能向上は続き、かつては十年以上かかった三十億文字からなる人の遺伝情報も、血液検査並みの手軽さで解読が可能になりつつある。

 米科学アカデミーは三月、「微生物の惑星を理解する」と題した報告書を発表、あらゆる微生物のゲノムを読む国家計画を提唱した。米エネルギー省なども研究資金を増やしている。

 一方、日本では服部教授ら一部を除き、ゲノム研究は縮小方向。ヒトゲノムで遺伝情報の解読は終わったとの認識が浸透したからだ。理化学研究所にある国内最大の研究センターも今年度で廃止が見込まれる。海外に比べ日本は対照的だ。 (編集委員 滝順一)(Unquote)