予算案を見ていると、前提条件を痛感させられます。

(1) 原子力産業は、発電能力の規模に関しては、アメリカでも大きな産業だが、発電関連設備の製造に関しては必ずしもアメリカ国内で大きな産業とはいえない。特に、「ものづくり」面では外部(特に日本企業)に依存するようになりつつある。従って、アメリカ人としては、「他国にウラン濃縮能力を出来るだけ渡さないようにすること」が二重の意味で良い選択となり、そこに主要な関心がある。

(2) 上述の「二重の意味」とは、a)原子力関連産業では既存技術による発電能力の増強を中心に考えればよく、製造業の研究開発を支援する必要はない、b)核燃料サイクルのうち、ウラン濃縮を(核拡散防止を口実に)アメリカ国内だけでできるようにさせることができれば、産業技術の向上なしに燃料サイクル上で寡占を実現できる上に、アメリカに不都合な核拡散を防止することも自在にできるようになる、の2点。

(3) 上述の(2)は既存技術で実現できる。従って、これから新技術を開発する研究開発の重点は、セルロース系バイオ燃料と石炭利用のうちの発電分野での熱効率向上、の2点に置けばよい。(石炭液化は技術的にはすでに可能になっている)

(4) 自分達が強くない分野では頑張らない。むしろ、それが得意な外部勢力を積極的に誘致する。

やっぱり、軍事目的を優先して考えていますね。もちろん、覇権国家としては当然の行動です。

そして、2番目に「効率」を考えています。最も効率の良い分野で頑張るわけです。

アメリカは製造業 - ものづくり - では、他国にあまり勝てなくなってきています。

(1)で上述した原子力分野なんかそうです。こういう分野では積極的に他国の企業を自分達の領域に入り込むことを容認しようとしているように、私には見えます。

東芝に Westinghouse が売却されても問題視されなかった理由の一つがこれだろうと私は考えています。もちろん、東芝が同盟国の企業だということも大きく作用していると思います。CNOOC に Unocal が売却されそうになったときは問題視されましたからね。

医療分野を中心に、ライフサイエンス分野ではアメリカは世界のリーダーです。勝てそうな分野で将来需要の増大が有望視されると、このように一生懸命になるわけですね。

火力発電については、まだ世界のリーダーたる企業が残っています(General Electric)。ここはまだまだ頑張る。

そもそも石炭が国内に大量に埋蔵されていますしね。一国では世界最大の埋蔵量です。国内エネルギー産業への支援になります。

こういうことを一つ一つ観察していくと、「あぁ、アメリカって、『ペンタゴンとウォール街』に手足が付いているような国家だなぁ」と、考え込まされます。