英国のヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長は、バイオ燃料への投資にご執心ということで、サンマイクロシステムズ創業者にして現在はベンチャーキャピタリストのヴィノド・コスラ氏と並ぶ有名人だと思います。

9月23日付日経朝刊9面に、ヴァージン・グループがバイオ燃料の開発に投資する、とブランソン会長が発言した旨書かれていました。

こういう記事もあります。

Biopact 10月4日 "Interview with Sir Richard Branson on biobutanol and the future of the planet"
http://biopact.com/2006/10/interview-with-sir-richard-branson-on.html

ブタノールとエタノールの開発に投資する旨書いてあります。ヴァージン・アトランティック航空でブタノールを使うつもりなんでしょうか。

エタノールはジェット燃料の6割程度のエネルギー密度です。ということは、エタノールで代替しようとすると、航続距離6割で我慢するか、或いは燃料タンクを1.7倍にするか、どちらかを選ぶことになります。

自動車の場合は、ガソリンスタンドへ行く頻度を上げればいいので、それほど深刻な問題とはならなさそうですが、航空機はそうはいきません。

空中には給油所がありませんからね。次の空港まで意地でもたどり着かないといけません。燃料タンクを大きくすると機体が大きくなりますから、新しく機体を開発しないといけません。燃料搭載量が増え機体が大きくなれば機体重量と空気抵抗が増えます。思い通りに航続距離が伸びなくなるでしょうね。

そうすると、エネルギー密度の高い燃料が要るわけです。

ブタノールのエネルギー密度は、#21で引用した Forbes.com の記事によると、エタノールより30%高いそうです。

そうしますと、

60% × (100%+30%) = 78%

となり、ブタノールのエネルギー密度はジェット燃料の8割弱、と推定できます。

まだちょっと低いですが、それでもエタノールよりはずっと良いですね。石油や石炭から製造したジェット燃料と混合すれば、もっとエネルギー密度が上がるでしょう。例えば50%混合すれば、100%濃度のジェット燃料に対して9割弱のエネルギー密度となります。

#21によると、「ガソリンといかなる割合でも混ぜられる」そうです。ジェット燃料と自在に混合できれば、上の推論の通りとなるわけですが...

それはそれとして、これから航空会社は大変でしょうね。航空輸送に依存している産業も、大変なことになるでしょう。生活面では、少なくとも、輸入生鮮食品を安く買える楽しみはこれから危うくなるかもしれませんね。