最後です。


Ⅴ部 まとめ

・「ピークオイル論」はあくまで予測であり、石油減退に直面して後手に回らないためのものである。

・有限であることは事実なので、いずれ減退が来ると世を啓蒙し、その影響を最小限に抑える努力をするべきだ。

・重要なことは省エネルギー、資源の有効利用、代替エネルギーへの転換などによって、石油資源の延命をはかること。早めに対応すべきだ。

・埋蔵量増加への努力は引き続き重要だ。

・代替エネルギーへの転換が重要。輸送機関用の液体燃料の代替が特に重要だ。


さて、みなさん、どう思われましたか? 本を買った私は「肩透かしを食った」気分です。もっとハードな予測が書いてあるのかと思いましたから。

冷静に考えてみると、最初に述べましたとおり、現役の業界人としては、特に業界の地質専門家としては、この程度までしか言えないと思います。また、ritaさんが別のところで述べてらっしゃるとおり、地質の専門家はあくまで地質の専門家であり、経済社会への影響を論じるのは著者の能力を超えていることではあります。

それでも、私としては、一つ重要な不満があります。

根岸博士は、エネルギー収支について一言も論じていません。これがこの書の重大な欠陥だと私は考えています。

もちろん、これも厳密に言うと地質の専門家の能力を超えていることではあります。物理学/熱力学の話しですから。それでも、完全に欠落しているのは問題だと私は思います。(わざと書かなかったのか? と勘繰っています。あくまで私個人の憶測です)

#84で将来の需給予測について書きましたが、この予測は人によっては「楽観的に過ぎる」と思うと思います。私もそう思っています。著者が楽観的になれる最大の理由はおそらく「エネルギー収支を考慮せずに論じているから。エネルギー需給を単なる量の問題だと前提しているから」だと私は思います。