さて、保護司の仕事には「保護観察中の犯罪者との定期的面接」のほか「刑期を終えた人の居住地探し」や「就職先のあっせん」があることを前回のブログで書きました。このほかの大切な仕事である「社会貢献活動」について説明させてください。

 

これは、対象者に公共の場所の清掃、障害者施設への慰問などをさせるもので、保護司はそこに付き添い行動を共にします。対象者の中には約束を守る意識が非常に低い人がいます。活動の日時が指定され、約束の時間に行ったら集まっているのは付き添いの保護司だけで仕方なく保護司だけで掃除をする、ということもありました。そのような場合は仕方ない、と割り切るしかありません。

 

この対象者に「社会貢献活動」をさせる目的は、「自己有用感」の醸成です。公共の場所を掃除してもらい、周囲の人から「きれいになった、ありがとう」と言ってもらうことで、自分は感謝された、自分は役に立っている、そう思うことが再犯の抑止につながる、という考えです。実際には通りかかった人が感謝の言葉を発することはあまりないので、同行する保護司は頻繁に「きれいになったよ・・・。」と対象者に声をかけます。

 

障害者施設では、入所者と散歩をしたりゲームをしたりするのですが、感謝されることが多いのです。対象者の中で将棋や碁が得意な人が入所者の要望に応じ相手をすると、入所者は喜びます。すると対象者は自分が人の役に立っていると感じるのです。「自己有用感」が犯罪の抑止になる、とする考えは間違いないと思います。失業率と犯罪率は密接に関係しているという研究結果もあります。人は仕事をすることで、収入のみならず「自己有用感」を得て、それが犯罪の抑止につながっているのです。

 

「社会貢献活動」が終わると対象者と保護司そして保護観察官が一堂に会してその日の活動の感想を述べる場があります。対象者はたいてい「人に喜んでもらえてよかった」というようなコメントを口にします。そして私が保護司としてコメントを求められた際に口にしたのは、やはり同じようなことです。対象者の、ではなく私自身の「自己有用感」です。対象者が「自己有用感」を感じているのを目の当たりにして、その場に同伴し手助け出来たことで、自分自身が「自己有用感」を感じるのです。

 

「スーパーボランティア」なる言葉が2018年の流行語大賞ベスト10に入りましたが、無償のボランティア活動に参加する人の原動力は「自己有用感」ではないでしょうか。私もここ数年、色々なボランティアに参加していますが、何れも無償です。金銭は得ていませんが「自己有用感」を得ています。その中でも保護司というボランティアを通じて得られる「自己有用感」は私にとって格別なものがあるのです。繰り返しになりますが、誰でも気軽出来るものではなく、覚悟も必要です。対象者の保護観察が終了した時点で、身内の人が挨拶に来てくださることがあります。対象者がその間に再犯しなかったのは自分が担当したからなのか?それは確認しようがありません。ただ、身内の人に感謝されると、少しは役に立ったのか、と感じます。

 

保護司は国家公務員ですが、議員との兼任は問題がないということなので、これからも続けていきます。