先ずは、今日の「産経新聞」の記事から

「中国刺激するな」 

野田政権の尖閣での消極姿勢また判明

昨年9月11日の尖閣諸島(沖縄県)の国有化後、
周辺海域で挑発を繰り返す
中国海軍艦艇への対処について、
野田佳彦前政権が
中国に過度な配慮をした指示を
出していたことが4日、分かった。
海自艦艇は中国軍艦と
15カイリ(約28キロ)の距離を置き、
中国側が近づくと後退するよう命じていたほか、
領海侵犯の恐れがあっても
先回りして警戒するのを禁じた。
複数の政府関係者によると、
こうした指示を出したのは
岡田克也前副総理が中心だったという。

国有化以降、中国海軍艦艇が

尖閣北方海域に常時展開するようになった。

これを受け昨年10月3日、

当時の野田首相は岡田氏や藤村修官房長官、

玄葉光一郎外相、森本敏防衛相を集め

尖閣に関する関係閣僚会議を開き、対応を協議した。

政府関係者によると、その際、

岡田氏は「中国を刺激しないように」と発言。

中国軍艦に海自艦艇を15カイリ以内に

近づかせないことも求めた。

この距離では目視は困難で

レーダーによる監視に頼らざるを得ず、

領海侵犯を未然に防ぐための措置も遅れかねない。

岡田氏は次いで、

中国軍艦の領海侵犯を黙認させるような対応も命じた。

他国軍の艦艇の領海侵犯に備えるためには

先回りして領海内で待ち構えるのが常道だが、

中国軍艦が領海に入るのを確認するまでは

海自艦艇も領海に入らず待機するよう指示していた。


「領空侵犯措置」でも過度な自制を求めていた。

 

中国の海洋監視船「海監50」はヘリを搭載可能で、

国有化直後から再三にわたり領海侵犯していた。

侵犯時に搭載ヘリが飛び立てば即座に領空侵犯になる。

このため領海侵犯と同時に

空自戦闘機による緊急発進(スクランブル)を

準備する必要があるが、

岡田氏は「軽微な領海侵犯だから中国を刺激するな。

海上保安庁に任せればいい」と準備を認めなかった。

昨年12月26日に発足した安倍晋三政権は、

防衛省や外務省から

野田政権の対応について報告を受け、

領域警備で対抗措置の強化を検討するよう指示。

海自は中国軍艦との距離を約3キロまで縮め、

中国軍艦が領海侵犯する恐れのある場合は

領海内で待ち構え侵入を阻止する態勢に改めた。

ヘリ搭載艦船が領海侵入した場合には

スクランブルの準備に入るようにした。

こうした事実関係について、岡田氏は産経新聞に

「いずれも事実に反する」とコメントした。



(以上、産経新聞記事より)



さて、今朝のこの「産経新聞」の記事については

当然のことながら保守陣営の方々は

一斉に岡田批判、民主党政権批判を書いておられたが、

「産経新聞」の記事に疑問を呈しておられたのが

潮匡人先生だ。

私も潮先生と同じ考えなので、

潮先生の見解を紹介する。


今朝の産経一面記事。
①産経は相変わらず「領海侵犯」といいますが、
われわれ(『尖閣激突』扶桑社)の指摘もあり、
NHKも使用を中止した表現です
(NHKは「領海侵入」、海保は「領海に入域」)。
国際法を無視した表現には違和感を覚えます。
②岡田副総理が認めなかった「スクランブルの準備」
と言いますが、具体的には、
どんな「準備を認めなかった」のでしょうか。
航空自衛隊は、自衛隊法の明文規定を根拠に
24時間、365日、アラート待機についています。
待機を中止させたのでしょうか。
記事が指摘した当時は、
空自出身の森本防衛大臣でした。
そんな馬鹿げた「指示」が出たとは思えません。


以上が潮先生の指摘ですが、確かにその通りだ。

或る国の領海内への外国船舶の「進入」をもって

ただちに「領海侵犯」と解釈されることはない。

沿岸国以外の国家の船舶に対して

無害通航権が認められており、

或る船舶の他国の領海においての無害な通航は、

領海侵犯ではない

無害な通航である限りにおいて外国籍の船舶が、

軍艦でも商船でも、他国の領海へ無断で入って、

通航することが許される。

国際法上、国家が自国の領海に対して有する管轄権は

排他的なものではないからである。

この点で、「領海」の国際法上での定義は、

「進入」をもってただちに「侵犯」と解釈される

「領土」や「領空」とは大きく異なる。

領空侵犯との違い

領海侵犯」は、「領空侵犯」に対応する用語として

しばしば用いられるが、この2つは意味は

大きく異なることに注意すべきである。

「領空侵犯」は国際法に規定される用語である。

しかし、領海侵犯」は法律用語ではなく、

自国領海内に外国船舶による航行が

「無害でない通航」であることを意味する

一般用語である。 

「領空侵犯」という用語は、

自衛隊法に定める自衛隊の活動たる

「対領空侵犯措置」(自衛隊法第84条)として

法律用語としても用いられる。

それに対して「領海侵犯」という言葉は、

国会の審議応答・政党の政策発表や発言・

外務省や海上保安庁などによる公的な発表等で

使用されるが、

海上保安庁法や自衛隊法には、用いられていない。