昨年の8月25日の事だが、
その前日に中国の漁業監視船2隻が、
沖縄・尖閣諸島周辺の領海内に侵入した事に関して
高橋千秋外務副大臣(当時)は記者会見で、
領海侵犯の外国船を排除するための
法整備を進めるべきだとの考えを示した。

一昨年の中国漁船の海上保安庁巡視船衝突事件以降、
日本会議、たちあがれ日本をはじめとして多くの団体が
尖閣諸島をはじめ我が領土領海を守るための請願署名に
取り組み、昨年11月の「尖閣諸島を守る全国国民集会」へと
結実していった。

そして、年が明けて始まった今通常国会において
海上保安庁法及び領海等における外国船舶の
航行に関する法律の一部を改正する法案」が、
2月下旬閣議決定に向けて最終段階の議論が行われている。

例えば、巡視船が哨戒中、我が国の領土である
遠方離島に外国人らしき人間が上陸しようとしている場合、
現行法では海上保安庁法第31条「海上における犯罪」に基づき
対処する訳であるが、離島に上陸されてしまった場合、
そこは海上ではないので、警察の所管となり、
海上保安庁は警察に連絡をし、警察が対応する事になる。
しかし、尖閣諸島には警察官など常駐していないのだ。
つまり、何の対処もできないのと同じことなのである。


そこで今回のこの改正法案についてであるが、
離島における犯罪に対処することも業務として規定し、
警察官職務執行法の準用を認め行政警察権を付与
加えて、捜査権つまり司法警察権も付与する。
質問権の範囲も現行法では乗組員及び旅客に対し
その職務を認められているが、
その他関係者に対する質問が対象とされていない。
例えば、シーシェバードのような環境保護団体等の
船舶所有者、船会社、荷主、陸上にある海上犯罪の
関係者についても質問できるように質問権の範囲を拡大する。
これらを整理すれば、想定事例において、
海上保安職員が離島であっても職務質問をし
不法入国外国人であると認められた場合、
逮捕し所要の捜査が可能となる。
シェバードは現行法を利用し巧みに生き抜いてきたが
これからはそうはいかなくなるのだ。

また、領海内で不審船が停留・はいかい等をしている場合、
現行法では先ず立入検査を行い、
停留・はいかい等を行うやむを得ない理由がない場合は
退去命令を出す事が出来る。
しかし、立入検査は絶対にしなければならないわけで、
もし200隻の不審船が現われたら、200隻全てに
立入検査が必要なのである。
これを、船舶の外観等から判断して、
やむを得ない理由なく停留等を行っている事が
明らかな場合には、
停留等を行わなず航行するように勧告し、
従わない場合は立入検査を省略して
退去命令を発出できると改正する。

航空機での哨戒中不審船を確認した場合、
巡視船に連絡をし立入検査の後、
退去命令というのが今までの手順。
つまり、航空機で発見してもすぐには対応が出来なかったが、
今回の改正で、立入検査が省略できる事で、
航空機からも勧告の後、退去命令が可能となる。

本来であるなら、領海侵犯に対しては
領海侵犯罪」を適用すべきなのである。
日本は平成8年に国連海洋法条約を批准しているが、
それに伴って設けるべき「領海侵犯罪」の法令作りを
怠ってしまった。
実は怠ったというよりも、外務省が妨害したのだ。
時の政府は自社さ連立政権の村山内閣
外務大臣は河野洋平である。

そのため、一昨年の中国漁船の事件に関しても

本来なら「領海侵犯法」で取り締まるべきであったのが、

日本にその法律がないから

外国人漁業規制法違反」を適用するしかなかったのだ。

しかし、尖閣諸島を占拠しようとやってくる中国船団を

「外国人漁業規制法」で取り締まり続けるのは

既に限界なのである。


今回の改正案は「領海侵犯法」ほど充分なものではないが、
海上保安庁の執行権限を充実強化し、

将来を見据えた体制の整備、任務・所掌事務規程の整理等、

今国会で成立すれば展望は開けてくる。