芸能裏話(55) お笑いスター誕生NTVオーディション

新幹線で東京来るのも久しぶりだ、「とうきょうーとうきょうー」と云うアナウンスが流れた。

本当に東京にやって来たのだ、顔が思わずニヤけてしまう。

出口の無いとんねるからやっと外に出れたからだ。

日テレのリハーサル室には、今まで見た事の無い東京のお笑いタレントさんが一杯いた。

大阪だけお笑いスター誕生が放送されていなかったので、内容もシステムも全然分からなかった。

リハーサル室には緊張した雰囲気が張り詰めていた。

何回か出ている人達同士が固まっていた、僕ら新参者を寄せ付けないような雰囲気だった。

心配していた、ダウンタウン･トミーズ･ハイヒールは今回エントリーしていなかった。

唯一知っているのは『ちゃらんぽらん』だけ、彼らはこの番組で人気が出て来て、今回の優勝候補らしい。

赤尾プロデューサーと言うヤクザの親分見たいな人が、ネタを見て決めるそうなのだが、この人が凄い恐い人だった。

『ぶるーたす(筋肉漫談)』と云う人がネタをやっていた時、急に怒り出して灰皿を投げつけたのだ。

リハーサル室が凍りついた、何組もの人が怒られていた。

やっと僕等の番がやってきた、自信作であるが空気が悪いので練習どうりできるか心配だった。

暴走族のネタで僕が兄貴分、梅ちゃんが子分、そこに女子高校生役の竹ちゃんが来て、カツアゲをすると云うベタベタのネタだった。

リハーサル室は大爆笑だった。

今まで凍りついていたリハーサル室が春を通り越して、一変に夏がやって来た感じだった。

鬼のような赤尾プロデューサーの顔も笑っていた。

後で聞いた話だが、赤尾さんはめったに笑わないそうだ。

思った以上の手応えを感じた、練習は嘘をつかない、三ヶ月間毎日稽古したかいがあった。

終った後、東京のタレントさん達がやって来て「面白かったよ、大阪には面白い人が一杯いるんだね」

と最初の新参者は寄せ付けないと云う雰囲気は無くなった。

このオーディションに行く前、吉本の芸人に「お前らがオーディション通ったら、心斎橋を逆立ちして歩いたる」と云われた。

意地でも頑張った。結果は合格！！天にでも昇る嬉しさが込み上げて来た。

やっとスタートラインに並んだ。

サバイバルシリーズオープニングは予選を勝抜いた２５組の１分間ＰＲだけ

なので緊張しなかった。

サバイバルシリーズのシステムは５組が競って２組が落ちる、そして３組が次のトーナメントに進める。

いよいよ第一回戦の日がやって来た、これに掛けて来たからココで落ちたら

水の泡、緊張で前の日は余り寝むれなかった。

僕と梅ちゃんがまず舞台に出た、一つ一つのギャクは受けている、東京の

お客さんは暖かかった。

女子高校生役の竹ちゃんが出て来た時は、ちょっと引いたがギャグは大爆笑だった。

他のグループは見られなかったので、後は結果を待つばかり。

電光掲示板に得点がグラフのように出て来る。

いよいよ僕等の得点が表示された、８２点だった。

１位が９０点２位が８５点、今の所ギリギリ３位だ、最後の『きもさべ社中』の得点で決まる。

『きもさべ社中』の得点が表示されてきた、心の中で上がるな上がるなと祈った。

得点が８０点を越えて来た、ひょっとしたら落ちるかも知れないと一瞬よぎったが、８１点で止まった。

やった！！一回戦突破できた。

この１点は大きかった、もしあの時点で落ちていたら松竹梅は終っていただろう。

この時審査員から、竹ちゃんの女子高校生がよかったから、君達は女装で何かやったら面白いと思うよと言われた。

それが女装のきっかけだった。

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元よしもと・ホリプロ芸人 松稔の芸能裏話55お笑いスター誕生NTVオーディション

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