障害福祉サービスを考える

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04Feb
- 本屋さんでトークショー
  おしらせチラシ私ごとですが、2月25日に人生の新たな挑戦として出版記念トークショーを行います！どうなるか正直分かりませんのでとても緊張すると思います。ただ新たなこと、新たな未来が楽しみでもあります。ここでは、企業の方や就労支援する方がより良い障害者雇用を考えるきっかけになったり、当事者の方は自分らしい働き方のヒントを見つけたりする中で、それぞれの思いを分かち合い、障害者雇用のより良い可能性を創り出す機会にできたらと思っています。ぜひブログを読んで頂いた方と直接お会いし、分かち合いができたら幸いです。ご興味ご関心がある方は、ぜひお待ちしています。申し込み申し込み先は以下のURLからお願いします。↓ ↓ ↓Microsoft Formsforms.office.com
13Jan
- 「本出版」発売日決定しました！　〜統合失調症のQWLを高める雇用のブログ〜
  お知らせです昨年はブログを見ていただきありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたしますさて、この度は統合失調症のQWLを高める雇用に関するブログが本になります。令和5年2月2日発売20年以上ソーシャルワーカーとして障害者就労支援の実践と研究を行ってきました。うまく行かないことも色々とありましたが、それらの経験とエビデンスを踏まえた上で、ようやくようやくまとめることができました。これもブログを読んでいただいた皆様からの「温かいコメント」や「いいね！」が励みになって、最後までやり切ることができました。心から感謝いたします。【タイトル】統合失調症の人と働くために知っておきたいこと〜みんなが幸せになる精神障害者雇用　〜【内容】データで読み解きながら、精神障害者の「幸せな働き方」上司として、同僚として、後輩として、ともに満足して働き続ける秘訣　を徹底解説した本にいたしました。この本を通して、障害あるなしに関わらず、誰もがイキイキと働ける共生社会につながる一助にしたいと思ってます。Amazonで予約できます　↓https://www.amazon.co.jp/dp/4867231193/ref=mp_s_a_1_1?crid=2V1DZM6PCLU2E&keywords=統合失調症の人と働くために知っておきたいこと&qid=1673576995&sprefix=統合失調症の人と働くために知っておきたいこと%2Caps%2C160&sr=8-1ぜひご一読いただき、感想を聞かせていただけたら幸いです　
06Nov
- 出版にむけて
  久しぶりの投稿をします。今何をしているかと言いますと、このブログをまとめて出版するための編集作業を行なっています。色々と誤字脱字を直したり、本当にそれはエビデンスであるかを確認したり、自分の思いをまとめたり、そして本を通して社会にどのようなインパクトを与えたい自分なのかを考えたり、などしています。2023年初旬に発売予定です。
18Oct
- レジリエンス　身体的要因
  統合失調症のレジリエンスを高めるに当たって、心理的(サイコ)や社会的（ソーシャル）の要因だけではなく、身体的（バイオ）な要因も重要になります。食事とメンタル食生活によって、精神的な健康が影響される研究が数多く報告されています。例えば、食べ過ぎによる肥満は、うつ病や認知症の要因になると考えられています。脳自体も体の臓器の一つでありますので、食べ物によって影響を受けています。今回は食事について述べたいと思います。ビタミン・ミネラル脳の神経伝達物質の原料になるのは食事から得られるアミノ酸であり、それを合成するにあたって、ビタミン、ミネラルは必須になります。十分な栄養が取れないことで、イライラしたり、気分が落ち込んだりと気持ちに影響を与えることがわかってきました。例えば、多くの研究で、統合失調症やうつ病の人たちは、血液中の葉酸の濃度が低いことが報告されています。葉酸は野菜不足やアルコールをたくさん摂る人は、不足しがちになると言います。またビタミンDの血中濃度が低いと、うつ病になるリスクが約1.3倍になるという報告があります。ビタミンDは食べ物（イワシ・鮭などの魚介類、きくらげ・乾燥しいたけなどのキノコ類）からもとることができますが、紫外線を浴びると体で合成されます。日中屋内でずっと過ごすのではなく、外にでて散歩をするのも良いのでしょう。魚の油（DHA、EPA）。これは昔から脳に良いと言われています。実際にうつ病の人はDHA、EPAの濃度が低いことが示されたり、統合失調症の発病予防に効果があるという研究結果もあります。アミノ酸の研究では、うつ病の人はトリプトファン、チロシン、メチオニンなどのアミノ酸の血中濃度が低い傾向があると報告されています。それらのアミノ酸は神経伝達物質の原料になります。ミネラルの研究では、亜鉛は、気分の安定や抗うつ効果があることが指摘されています。亜鉛が十分でないと、うつ病のリスクが高まることも報告されています。亜鉛は神経伝達物質の合成の際に必要とされていて、精神安定の作用や学習能力を向上させる作用があると言われています。腸脳相関またここ最近注目されているのが、腸脳相関についてです。過敏性腸症候群という病気があります。これは腸を調べても異常がみられないのに腹痛やお腹の不快感があり、緊張する場面では下痢や便秘を繰り返す病気です。うつ病、双極性障害、統合失調症の人の中でこの病気を合併している人は、20％〜30％もいると言われていて、その原因は腸の細菌のバランスが乱れているものが多いと分かってきました。また腸内に善玉菌が少ないとうつ病のリスクが高いことが明らかになっています。腸内のバランスを整えるために乳酸菌や食物繊維を含む物を積極的に食べていくことが重要であるでしょう。このようにメンタルを安定させるには、脳を作る原料になる食事を整えることが大切になるのでしょう。
11Oct
- I can 哲学的な話
  完璧主義（少々長いです）I canを阻害する内的要因として挙げられるのは、「完璧主義」になります。有能感を高めるには、まず自分をほかの人と比べずに肯定でき，褒めることができ，励ますことができる心の働きが大切です。しかし、完璧主義や勝ち負けの価値観（パラダイム）が強い方は、理想の自分や他人と無意識レベルで比較するため、有能感の欲求が満たされにくい傾向があります。当事者では、周りから「素晴らしい」「頑張っているね」と声をかけられたとしても、「普通に比べれば…」「昔の時に比べたら、できないことが多い」と悲観し、周りの声が耳に入らず、自己承認ができないことがあります。これは当事者でない方にも言えることではありません。「あの目標が達成したら…自信がつく」「資格が取れたら…堂々としていられる」と思っていたとしても、達成たらまた「あれができていない」「これができていない」と次々と自分を認められない思いが現れては、どれほどやりきったとしても一生満足することはできないことでしょう。その根本には、他者と比べては、勝ち負け、優劣、損得などの比較の中で自分の存在を見出しているからです。形而上学突然ですがなぜ昔の人は神や仏を大切にされてきたのでしょうか。ニーチェは、それを自分の存在価値を知るためといいます。人間は自分を理解するができる動物であり、自分に意味をつける生き物です。そして「何のために生きているのか」と自分の存在理由を問い続ける存在です。よって人間は、他者や社会との関係性を通して自身の存在を確かめることが必要であり、その関係性が人の生きる力になります。しかし、人は社会の中ではただのone of themであり、存在理由を他者から全て確かめることは不可能でしょう。そこで古代の人たちは、意識に形而上学的（神や仏など）概念を作り出す必要性があったのかもしれません。どんなに苦しいことや上手くいかないことがあったとしても、神や仏からの愛や慈悲があることを信じることで、自分の存在理由を確かめることができたのです。そのように、昔の人たちはその知恵を通して、自分と他者の存在のバランスを保ち、自分らしく社会で生きることができていたのでしょう。実存哲学しかしながら、現在の科学によって、形而上学的な概念は否定され歴史の中から消されつつあります。その結果、他者評価への意識が強くなり、恥と不安に捉われ、個人は平均化されて、他者評価の依存の中で自分らしさを失っていきました。それにより「完璧でありつづけようとするとらわれ」が生じて、ありのままの自分が見えなくなっていきました。その中で、第一次世界大戦、世界恐慌、第ニ次世界大戦で大勢の人が亡くなった最も混沌としていたドイツで、自分らしさを取り戻す哲学「実存主義」が作られていきました。ハイデガーは、「I am（私は何者であるか）」を自らが生み出すことが可能であるという存在論の哲学を確立しました。その哲学は多くの精神医学、心理学、社会学なと様々な分野に影響を与えています。そして、統合失調症のアイデンティティを再構築する「リカバリー」の概念もそこが根っこにあります。日本人と完璧主義日本人は、自分が自分に対して「失敗はダメ。完璧でいなさい。」と言い聞かせていて、失敗に不寛容な人種と言われています。それは文化的な要因からか、言語的な要因からなのかは分かりませんが、そのような傾向がありそうです。たしかに私もできれば失敗はしたくないし、（自分にとって）上手くいくようにしたいと思う気持ちは強くあります。もしかしたら日本は、レジリエンスのI can （コンピテンス（有能感））が育まれづらい環境にあるのかもしれません。人生は、色々とありますので当然完璧ではないでしょう。自分にとって良い時もあれば悪い時もあります。それが現実です。もちろん完璧主義をポジティブに考えると、しっかりやろうとする気持ちから行動に繋がるので、決して悪いわけではありません。しかし、先ほども話した通り、この観点に囚われ過ぎていると、いつまで経っても満足はしないし、自己否定となり、それが結果的にレジリエンスを下げることになるでしょう。なぜならどんな人にとっても、上には上がいるからです。ではこの完璧主義の観点とどう付き合っていくのが良いのでしょうか。完璧主義でいることで生じる、自他ともにある影響を見ていくことが大切です。では、自分にとっても、まわりの人にとっても、なにが起こるでしょうか。これは自分のあるあるの話ですが。失敗すれば私は完璧ではなくなってしまうので、無意識的に自分や他人を責めるふうにして、周りに慰めてもらい、自分を守ろうとすることがあります。これは自己憐憫といい、自分を自分で慰める行為がありますが、これもただ一瞬の癒しにはなりすが、余計に自身の力を奪っていく行為になります。他に、自分の失敗を隠して、何も言わずに、自分を守ろうとすることもあります。これらのようなことで自分なりに勝手に完璧さを保とうとします。完璧主義の価値観（パラダイム）で生じる行動は、多かれ少なかれ、このようになるでしょう。ただ、これを客観的に見たらわかると思います。自分の世界の中では完璧でいると勘違いしていますが、周りから見るとめちゃくちゃ最低なことをしていることがわかります。人は多かれ少なかれ、意識的にも無意識的にもこのように自分を正当化し守ろうとします。また、これは上手くいって成功したとしても同じようなことがあります。うまくいって周りが褒めてくれても、完璧主義のパラダイムにいれば、常に誰かと比べて、自分は大したことはない、そんなことはないと言い、他人が承認してくれた言葉は聞こえず、その人にもう二度と褒めようとは思わないでしょう。完璧主義にはこのような負の影響があります。もちろん繰り返しますが完璧主義は決して悪いことではありません。ただこのネガティブな視点を知ることで完璧主義を手放すかどうかの選択肢が生まれてきます。精神障害のリカバリー精神障害のリカバリーは、自分のストレングス（良さ）を認めていく行為でもあります。また、ソーシャルワーカーで研究者であるブレネーブラウンは長年の研究から本当の強さは弱さを認めることと言いました。このようにありのままの自分でいい、今弱さを「これでよし」という感覚も大切になります。その結果、レジリエンスは高まり、職業生活の質は高めることにつながるでしょう。
08Oct
- I can 提供サポート
  I canを高める要素I can のレジリエンスを高める要因として、以下のどの項目が最も高まる項目が最も重要だと考えられますでしょうか①職場に当事者に参考になる意見を言ってくれたり、相談に乗ってくれる人がいる（情緒的受領サポート）②職場に当事者に用事を引き受けたり、体調が悪い時に必要なサポートをしてくれる人がいる（道具的受領サポート）③職場に当事者が参考になる意見を言ってあげたり、相談に乗ってあげられる人がいる（情緒的提供サポート）④職場に当事者が用事を引き受けたり、体調が悪い人に必要なサポートをしてあげられる人がいる（道具的受領サポート）答えは③の情緒的提供サポートの職場に当事者が「参考になる意見を言ってあげたり、相談に乗ってあげられる人がいる」ことでした。つまり、当事者の意見を取り入れてもらえる関係性が職場内にあることが、彼らのレジリエンスを高め、職業生活の質を上げてくれるということでした。多くの人が、統合失調症＝助けてあげる存在という考えを持っているかもしれません。しかし実際は、ただサポートされて働きやすい環境があれば良い訳ではありません。ある施設で障害者雇用されているAさんの話を聞くと「今の職場は配慮をしてくれるし、自由にやらせてもらえて、とても良い働きやすい環境」「ただ誰にも求められることもなく、本当にこのままでいいのか、何か物足りないと思ってしまう」「もちろん状態が悪くなることもあるから、このままでいいと思うのだけど…」と話され、情緒的提供サポートがない現状に不安を抱いていました。実際、この問いをすると多くが①か②の受領サポートを選びます。ほとんどの人は、症状がある当事者の方にとっては、職場にサポートしてもらえる人がいることが、働きやすく、長く続けることができる職場になると考えるからです。もちろん、当事者が困った時に相談できたり、体調が悪い時に助けてくれる人がいる職場は、安心した働きはできるでしょう。そして、実際①情緒的受領サポート「職場に当事者が参考になる意見を言ってあげたり、相談に乗ってあげられる人がいる。」の項目も、③の次に職業生活の質を高める要素として示されました。ここから言える合理的配慮は、互いに尊重し、意見を言い合えるコミュニケーションがある職場づくりが重要であると言えるでしょう。これは統合失調症当事者だけに言えることではなく、良い職場は上司部下間でもお互いに意見を交換し、風通しの良い環境だと言われています。当事者の合理的配慮を行うことを通して、より良い職場環境を作り出すことも可能ではないでしょうか。
07Oct
- I can 自己効力感
  自己効力感R.W.ホワイトによれば、コンピテンス（有能感）は、自己効力感の側面を含むものであるとされています。そこで今回は自己効力感について簡単に述べていきたいと思います。バンデューラは、ある課題や状況において自分がどの程度の「効力予期」を持っているかを知覚することを「自己効力感」と呼んでいます。効力予期とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していることです。簡単に言えば「うまくいきそうだからやってみる」という感覚でしょう。では実際に自己効力感に良い影響する要因は何でしょうか。4つあると言われています。達成経験：いわゆる成功体験で、自分で何かに臨み、成功したという経験を指します。代理経験：自分以外の他人が何かを達成・成功するのを観察すること。言語的説得：自身の行為を言葉で励まされること。「君ならできる！」とジモンディ高梨さんがいう感じなのでしょう。生理的情緒的高揚：生理的状態（ワクワク、ドキドキ）が自己効力の判断の手掛かりになること。小難しく書かれているため、簡単にしてみました。「まぁこれだったできるでしょう。以前もやったし（達成経験）」「〇〇さんもやっていたから、そんな感じでやれば大丈夫でしょう（代理経験）」「〇〇さんが「自分ならできる」と言ってくれたし（言語的説得）」「話を聞いていたら、ワクワクして面白そうだしやりたくなってきた（生理的情緒的高揚）」だからやってみよう！と言う感じでしょう。多くの障害者雇用の研究者からは働くことで、自己効力感が高まることが述べられています。端田は、精神障害がある方の働くことは、それが単なる対価を得る行為ではなく、役割意識や仲間意識を獲得し、自己効力感を充足させていくと述べています。また、菊池は働くことを通して自分が社会に役に立っている実感は、自分の存在証明であって、自尊心、自己効力感につながると示しています。さらに、松為は、精神障害者にとって働くこととは、自己効力感や有用感を肯定的に変化させることができ、自分が選択した人生の役割に満足と成功を得ることができると表しています。このように働くことで自己効力感が高まり、アイデンティティの確立、自分らしさのリカバリーにつながることが報告されています。もちろんただ働けば良いと言うわけではありません。職業生活の質が低い働き方では、自己効力感を高めることはできないでしょう。そこで、統合失調症のレジリエンスのI canを高める要因は何かを探ることが重要です。
05Oct
- レジリエンス　I can
  I can次は、レジリエンスの最後の「I can（私は〇〇できる）」です。これはエリクソンのライフステージでいう、自主性、勤勉感を表しています。自主性とは、自分で行動する積極性が育まれると、何かをするとき目的意識を持てるようになります。勤勉性とは、自ら学んで物事を完成させたり、仲間やグループ行動から成功する体験を通して「できる」という自分が有能である感覚から自尊心が育まれます。エリクソンのライフステージから作られたレジリエンススケールによると、I amの土台の上にI canがあります。I can（私は〇〇できる）とは具体的にどういうことでしょうか。人間関係や問題解決スキルなどのコンピテンスを表します。ここでいうコンピテンスとは、有能感と訳され、ある環境への適応能力を表す言葉になります。例えば、私は何かする時に新しい方法を考えたり工夫することができる。私は人に考えや気持ちを伝えることができる。私は様々な年代の人と良い関係を作ることができる。私は一つのことを最後までやり遂げることができる。私は衝動的にならずに自分の感情を統制できる。私は必要があるときに自分から助けを求めることができる。などがあげられます。コンピテンスは、経験や学習を通して獲得した能力であり、ある状況下で有効に作用すると考えられる潜在能力の側面と、その環境において、その力が有効に活用でき自分の有能さを発揮しようとする動機付けの側面、という２つの側面が統合した言葉になります。簡単にいうと、あることをできると思っていて、ある条件でできるからやりたいと思う気持ちのことになります。つまり、ある場面での対人関係、問題解決スキルができると感じていて、ある条件でその力を発揮したいと思うことを表しています。みなさんも自分ができる力を発揮して、何かの条件の時に貢献したいと思うこともあるでしょう。例えば、仕事において、生活のおいて、自ら進んで「それ私できるよ、やるよ」と言ってあげられるのは、どういう時でしょう。そのような場面をぜひ思い出して下さい。「それ私できるよ、やるよ」と気軽に言えるコンピテンスがあれば、職業生活の中で、人に貢献し、協力し合い、より良い関係が生まれて職場の中で良いポジションを作ることができるでしょう。一方で、当事者の中には自己有能感が育まれておらず、結果、職場で自分のポジションを作れない場合もあります。何事にも自信がなく「それ私できるよ、やるよ」と言えずに、指示待ちの働き方であれば、積極性がない、協力的ではない、受け身であるなどと思われて、誤解されることもあるでしょう。結果、職場での周りから必要とされるボジションを作るのが難しくなります。そこで、会社での合理的配慮として考えられることは、積極的がない協力的ではないと考えるのではなく、実はコンピテンスが低いのではないか。だから消極的になっているのではないか。と仮説を立てて関わっていくことも大切になります。みなさんも「それ私できるよ、やるよ」と言えない分野、条件は必ずあるでしょう。それを思い出せれば、コンピテンスの意義に気づくことができるのではないでしょうか。その時に自分はどのように関わってほしいかを考えてほしい。またコンピテンスが育まれた分野では、どのようなプロセスがあったのかを想像してみると、ヒントが見つかるかもしれません。
02Oct
- I am 未来語りのダイアローグ
  トラウマや過呼吸や疲れが心配でした。人間関係で気を使いすぎて、疲れやすいと安定剤が必要な生活になっていました。そこで、絵を描いて気持ちが安定しました。また妹が自分のことを的確にアドバイスしてくれて、私も素直に受け入れられました。Aさんとはそのようなことを対話しました。そして1年後に本当にその希望を実現されました。ここでポイントは、この3つの質問について、「聞くと話すをわける」「安心して話せる空間を確保する」ことをし、本人だけではなく、参加者全員が同じことを語ってもらうのが、この未来語りダイアローグの特徴になります。支援者が本人の問題を語るのは、当事者にとって批判や非難されていると感じやすくなります。よって支援者や周りの人も自身が何に心配に感じているのかにも焦点を当てて語れるようにします。また「自分はどんな未来を想起して、自分には何が出来るか？」は、側から見ると簡単そうな質問に聞こえますが、答える本人にとっては、不安と難しさを感じる質問になります。ここでは、参加者がアドバイスも提案もしない「じっくり聞く」というのが大切です。「話すことと聞くことを分ける」ことで、ほかの人の発言を真剣に聴きながら、自らの中で自己対話をしているし、発言もしっかり聞かれていて、他の人の内的対話を促しています。不確実な未来への何らかの宣言は、勇気が要ります。しかも、馬鹿にされたら、非現実的だと言われたらどうしようかと不安や心配事も抱えやすくなります。そこで、安心した場をつくりながら、未来を互いに語り合い、希望を生み出していきます。そして、今後どのような行動するかというマイルストーンが自然にイメージされていくなかで、I am「私は〇〇である」を生み出すことができるでしょう。つまり、I am「私は〇〇である」は過去からの自分を表すと思いがちですが、決してそうではありません。未来からの今、から作り出すことが可能だということです。この希望が、レジリエンスを高めてくれることでしょう。余談　私のメモせっかくなので、私自身のことを書いてみます。①「共生社会に向けてついて1年後、どんな嬉しい変化がありましたか」私の自身の希望は「障がい者も地元企業の人も福祉関係者もみんな元気になっているインターンシップ事業と共生コラボ事業を行っています。」②「あなたは何をしましたか？誰が助けてくれましたか？」「私は一緒にやろうと宣言し続けました。協力者が集まってきて形になって嬉しかったです。地域の福祉関係者、障害当事者の方々と、商工会議所の事業所の方々、また市役所の方々と、この事業に向けた仕組みを作りました。」③「1年前の心配事は何で、何があなたの心配事を減らしましたか？」と聞きます。「他の福祉事業所に全てノウハウやリソースを持っていかれたり、調子に乗っていると非難されて、自社が潰れるのではないかと思っていました。職場仲間や福祉関係者、同じ志を持つ仲間と共にシェアしながら、夢を語り合い、一緒に自社の問題を解決していきました。また、自社の職員教育に力を入れて貢献できる職員を育成しました。」不確定な未来は、いつでも誰でも不安はあるかと思います。まず、職場で明るい未来を言ってもよい、そして、周りもその可能性に向けて自由に言っても良い、互いに対話できる場があることが大切だと考えます。
30Sep
- I am 希望
  I amの続きです。社会構成主義「言葉は世界を作る」の続きです。レジリエンスを高める言葉言葉が世界を作るのであれば、レジリエンスを高めるのにどのようなことを対話がよいのでしょうか。職業生活の質(QWL)の研究では、「将来の目標に向かってやる気を持って頑張る自分である」ことが、I amで最も内発的動機付けを高める要因として示されました。要するに「私の夢は〇〇である」「それに向けて〇〇をやる」と希望を宣言できることがリカバリーしていくことになります。当事者自身が可能性を持ち、自分とその周りにいる人たちの明るい未来を創造し、それを声にしていくことが、レジリエンスを高める力になります。簡単に言えば、希望を言葉することがとても大切になります。実際、コープランドはそのエビデンスを明らかにしました。WRAPの1番の肝は希望になります。しかし、何度も失敗したという思いが強く、調子の波がある当事者にとっては、一貫して「自分は〇〇である」とは思えず、未来に希望が見えない状況に陥りがちです。そこで企業の合理的配慮として考えられることは、「共に働きつつも、何ができるのかどうか」を対話しながら、共に希望を語れりあえる関わりが大切と考えます。また日々の活動の中で、今日の「自分とは〇〇である」と宣言できる機会があることが一貫したI amを言葉で作り出せて、レジリエンスを高めることができると考えます。『心理的ストレス反応とリスク回避４　WRAP１』前回クライシスプランに絞るとお伝えしましたが、訂正してWRAPを全体的にお伝えします。WRAPの５つのキー概念コープランドらが開発したWRAP（元気…ameblo.jp
29Sep
- I am　自己概念の再構築
  成績が良かった。だけど、もっと上には上がいると思った。人は、経験の一側面だけを捉えて「自分は〇〇である」と意味をつけがちです。この意味は、本人にとって真実として考えしがちですが、実際は自身の判断であり、でっちあげたものに過ぎません。私自身も「人と関わるのが苦手だ」「周りに気を使わせてしまう人だ」と意味をつけていますが、それは一側面であり真実ではありません。社会構成主義そこで、この理論的背景にある社会構成主義について、簡単に説明したいと思います。社会構成主義とは、「社会の様々なことは人々の頭の中で作り上げられたもの、つまり認知というメガネがあって、そこを離れて社会は存在しない」とする立場を表します。ガーゲンは、これを「わたしたちが日常使っている言葉や感情は、所属しているコミュニティの文化そのものであって、コミュニティはお互いの対話の中で「意味」を作っていくのであり、「意味」とは話し手と聞き手の相互作用の結果である」と言います。簡単にいうと、現実は会話で合意がなされることによって作られているということです。そしてガーゲンは、それをWords create world（言葉が世界を創る）と表現しています。この感覚を奇跡の人ヘレンケラーが、言葉を獲得できなかった頃と獲得できた後のことを比べて次のように述べています。「言葉を知るまでの私は暗黒と寂しい世界だけしか知らなかった。楽しい過去も期待する未来もなく、ただ時間が過ぎ去っていくだけだった。しかし、いったん私の手のひらから人の言葉が伝わって、僅かながらでも理解できるようになると、私の心は躍動した。人として生きることの喜びを感じた。」「言葉を知るまで、どんな観念も持ち合わせていなかった。私は文字どおり身体で考えていた。当時の私の記憶は触覚によるものだった。私は、獣のように食べ物と暖を求めていたのを覚えている。泣き叫んだことも覚えているが、その涙の原因となった悲しみはわからない。ただ言葉を知ることで、自然や善悪についての一般的な観念にも目覚めた。私は、虚無の世界から人間らしい生活へと、実際に救いあげられた。」このようにWords create world（言葉が世界を創る）はヘレンケラーによって明らかにされています。人を人として生きる力、人に過去と未来を与えてくれる力、夢を描き計画し目標を立ててそれを実現させてくれる力は言葉にあります。そしてI am は、対話の中で成立していきます。それは他者との対話もそうですが、自己対話といい自分との対話も含みます。今まで積み上げた自分へのネガティブな意味づけを積みおろす、脱構築の作業をしながら、また新たな自分を再構築していく、アイデンティティのリカバリーへの対話が必要になります。
28Sep
- I am　存在って？
  レジリエンスは3つの要素で構成されています。I have（私は〇〇を持っている）I am（私は〇〇である）I can（私は〇〇ができる）であり、この理論的背景にはエリクソンの発達理論があります。私は何者であるか今回はI amの私は〇〇であるについて示していきます。amというBE動詞は、…である。…がある。と略され、ある存在を示す言葉になります。つまり、I amは「自分は何者であるか」という自己同一性を表します。ちなみに「あなたは何者でありますか」と問われてすぐに答えられますでしょうか。もちろん所属、出身地、などの属性は簡単に答えられるかもしれません。しかし、自分が何者であるかという存在について、明確に答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか。また、自分が何者であるかを知る必要もないと感じている方もいるかもしれません。そこで、なぜI amがレジリエンスに重要であるのかを伝えていきたいと思います。アイデンティティの危機みなさん「自分って何か」「何者であるのか」と考えたことはありますでしょうか。この問いは、何かの人生の危機的な状況に陥った時に、途端に「自分とは何か」と考えるようになります。例えば、学生の就活時には「これは本当に自分がしたい仕事なのか…」仕事で大失敗すれば「この仕事を私がすることに何か意味があるのか…」愛する人を失ったら「いったい何のために自分はここにいるのか…」また、病気になり何もできなくなれば「世話になるばかり、迷惑かけるばかりで、人に何もしてあげられないこんな私でも、まだここにいていいのだろうか…」定年を迎えて自分のもとに訪れる人がぐっと減って、自分の実力だと思ってきたものが、実は会社の看板の力だったのだと思い知らされた時には「あくせくするばかりで、いったい何が残ったのかなんか、何もものにならなかった…」老後体が動かなくなった時は「人に対して何もしてあげられず、ただしてもらうばかり、そんな自分がここにいることにまだ意味があるのか…」このように、どんな人にもどんな年代でも自分らしさに疑問を感じる危機は訪れます。人は役割という服がなくなれば、ただの人間として裸になり「自分の存在とは何か」に直面せざるおえない状態に陥ります。これがアイデンティティの危機というものになります。人は役割を失ったときに、何をするかというDoという行動よりも、自分が何があるかBeという存在に対する問いとなります。この自分の存在に意味を見出せない状態においては、当然ストレス耐性が弱くなっていきます。「私は…である」というI amがあることが、レジリエンスを高めるのに重要であることが理解できたのではないでしょうか。では、統合失調症のI amからリカバリーについて考えていきたいと思います。（つづき）
25Sep
- I have　無条件の愛
  親の関わり「I have（私は…持っている）」の要因で「家族の無条件の愛がある」ことがレジリエンスを高めるとお伝えしました。これについて少しお伝えしたいと思います。当事者を信じる気持ちまず「信用」と「信頼」という言葉の区別についてお伝えします。信用とは「条件付きで信じる」ことで、信頼は「無条件で信じる」ことです。例えば「仕事に行けたから素晴らしい。」というように「〇〇ができたから」という条件つきで信じる場合が「信用」になります。信用することも本人を信じることには変わりありませんが、これらの言葉には「あなたを認めるためには、なんらかの条件をクリアしないとだめ」という言葉が暗に隠されています。これは、当事者にはそのような条件を突きつけられているのは、「もし条件をクリアできなかったら、良しではなくじゃなくなっちゃう…」と怖がり、さまざまな挑戦する行動を回避するような生き方しかできなくなってしまうでしょう。そこで、まず親が統合失調症の当事者を無条件で信じる「信頼」こそが大切になります。これは、「無条件の愛」とも言い換えられます。一番近くにいる親が無条件の愛をもって関わることで、本人は「この世界は、そして自分は、生きるに値するのか」と確認できます。統合失調症の症状が強い時は、なにもできない状況に陥ります。それでも「自分に対して親は肯定してくれている。」という中で、「ありのままの自分が受け入れられている」「何も生産性を生み出さなくとも、ありのままの自分ですでに価値を持っている」という感覚が芽生えてくるでしょう。それが、その基本的信頼の感覚が人生をしっかり歩んでいくうえで重要な基盤になります。もちろん親も人間ですから、同じように過去に記憶から、「また、するのではないか」と信じられないことも多く、何かと条件付きの話をしてしまうこともあるかもしれません。もちろん、闘病生活を支えて色々と苦労してきた親だから、簡単に信じることは難しいかもしれません。しかし「信じられない」という感覚を持っていることにも、アドラーの目的論でいうと親自身がメリットがあるのかもしれません。では、信じないことのデメリットは何かを考えてみると、本来の目的を新たに発見できるかもしれません。ボウルビィは、セキュアベースという安全地帯があることによって探索的行動ができるといいました。つまり、何があっても戻れる安全な場所があれば、チャレンジする行動が生まれて、試行錯誤できるようになっていきます。もちろん親の無条件の愛はレジリエンスを高めるに重要ですが、ただ前回もお伝えしたように親の愛だけではやる気を高めることはできません。友人や会社の仲間の存在がやる気を上げてくれます。その両輪の関わりがあることで、レジリエンスは高まります。このI haveの土台があって、次のレジリエンスのI amの自律性や自己同一性になっていくことでしょう。
24Sep
- レジリエンス　I have 補足
  以前、スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」の話をしました。そこで、「人は、自分では物事をありのままに見ていると思いがちですが、実際は、自分のパラダイム（認識の枠組み）を通じて物事を見て解釈している。そしてパラダイムとは、私たちが無意識にかけている「メガネ」のようなもの。そのメガネを通じて世界を見ている。」とお伝えしました。パラダイムは、人それぞれの人生経験に基づいて形成されています。そして一人ひとり異なるパラダイムをもっていますので、同じものを見ても違うふうに解釈しています。『統合失調症の特徴２　パラダイムを想像する』見え方(パラダイム)とは何か？スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」の中にSEE-DO-GETという言葉があります。人は、自分では物事をありのままに見て…ameblo.jpレジリエンスのI haveの感覚側から見れば、色んな人から愛されているし、サポートしてくれる人もいて、「I have」がたくさんあるように見えても、本人は「誰にも愛されていない」「誰も助けてくれない」と思い、自分が持っている大切な資産に気づけていない方がいます。ないところの負債ばかり見て、あるところの資産は見ない、というメガネをつけた生き方をしていることもあります。もちろんこのように人を信頼できない生き方であれば、レジリエンスは低くなりますし、職業生活の質も下がり、苦しい生き方になっていきます。このようなメガネは誰もがあることです。特に被害的思考に陥りがちな当事者の方は、持っていない負債に目が行きがちでなりやすいため、持っている資産に気づけるようなサポートが必要になってきます。以前話した認知行動療法を通して、マインドに変えていく支援方法も良いと思いますが、もう一つアドラーの目的論がありますので、それをお伝えします。アドラーの目的論では、ない負債ばかり見る人は、どうしてそのように考えてしまうのでしょうか。アドラーからすれば、それに目的があるからだと言います。要するに、愛してくれる人がいないことや、サポートしてくれる人もいないと思っていることが、その人にとってメリットを得られる目的があり、無意識でメガネを作り上げてしまっているからです。つまり、目的論でいうと、人は何かの目的があって、今の状況を作り出しているとする考え方になります。例えば、「親の離婚がトラウマになって恋愛することができない」と過去に原因を考えるのが原因論。一方、目的論は「失敗して傷つきたくないという目的のために、恋愛をしたくないと自らその感情を作り出している」と未来の目的に向けて考えます。つまり、自分にメリットがあって、その目的のためにメガネを作り出しているということになります。同じような経験をされている人は、いやそんなことはないと思うかもしれませんが、よくよく考えてみるとよいでしょう。何か思い当たる節があるのではないでしょうか。もちろん、今までそう思っていたことが、実はメリットをもって行動していたという視点には、気づくことはできませんし、認めたくない気持ちにもなります。ではどうすればよいでしょうか。方法としてまずそう思っていることのデメリットから考えられると、自分が思っている目的が、本当にしたいことかどうかが考えられ、その本質に気づくことができるようになるでしょう。先の例のデメリットを考えた時、何も行動しなければ成果は得ることはできないでしょう。周りは寂しい思いや残念な思いになり、人が離れていくこともあるでしょう。このようにデメリットも含めて考えていけば、いつもの自分の思考と比べられ、自分が本当に目指したい目的に向けて、自己決定ができるようになります。その中で行動ができれば、新たな気づきを得ることができるようになっていきます。これは特に統合失調症の方に限らずの話です。特別な話だと思わないでほしいと思っています。実際、嫌いな人、苦手な人、避けたい人などを思い浮かべてみれば、同様の気づきがあります。何かその人のないところを見て、その人のあるところを見ることはないでしょう。相手が絶対に悪いと思っている人でも、そう思っていることで何か自分にとってメリットが隠されているのではないでしょうか。そこで、合理的配慮としてできることは、一緒にI haveのあることの資産をあげていくことや、いつもの行動のデメリットをあけで、自身で選択できるようにサポートすることをお勧めします。そのプロセスを通して本来自分が達成したい目的に向けて行動できれば、徐々に人はそれほど悪くないと思えたり、その中で希望を持つことができるようになるでしょう。
22Sep
- レジリエンス　I have２
  I haveの続き家族のできることと限界について。多くの統合失調症の研究において、家族のネガティブな感情表出が高いと、低い人に比べて、再発率が高くなるというエビデンスがあります。つまり、家族との良好な関係がレジリエンスを高めると言えるでしょう。では職業生活の質(QWL)に関する研究ではどうでしようか。先行研究と同じように「無条件の愛がある家族がいる」と感じている当事者の多くが、いない人に比べて、抑うつ感が低いことが示されました。要は、家族とより良い関係を築いている方の多くが、安定して職業生活を送れているということです。職業生活で一見関連がなさそうな家族関係が、働く上で大きな影響を与えています。ただ「愛してくれる家族がいた」としても、もちろん職業生活において、それが全てではありません。職業生活の質（QWL）の研究結果においては、家族との良い関係は抑うつ感を減らす力になりました。しかし、内発的動機付けを高める力にはならないことも示されていました。つまり、家族は気分の落ち込みを減らしてくれる存在ではありますが、一方で仕事へのやる気や活力を与えてくれる存在にはならないということです。以前、統合失調症の治療ターゲットとして内発的動機付けが大切であることを話しました。そこで、この内発的動機付けにも関連したレジリエンスを探っていく必要があります。統合失調症のレジリエンス職業生活の質(QWL)の研究において、I haveと内発的動機付けと関連する要素は、以下の2つです。「心強い仲間がいる(ピアサポート)こと」「身近にお手本になる人がいる(ロールモデル)こと」が内発的動機付けを高めることが示されました。つまり、職業生活の中で一緒に働く心強い同僚がいることや、お手本になる先輩や上司の存在があることが、当事者のやる気に影響を与えてくれます。みなさんも想像してもらえれば理解できるとおもいますが、たとえストレスフルな状況であったとしても、心強い仲間がいれば頑張ろうと思えたり、またお手本になれる先輩や上司がいれば、この人のようになりたいと思って、努力しながら前向きに仕事をすることができるのではないでしょうか。実際に当事者の中で、職場にお手本になるロールモデルがいることで、働きがいを持って仕事を行うことができています。個人的側面として捉えがちなやる気、そしてレジリエンスも、実は環境的側面が大きく関係していて、人との関わりの中で高めることができます。このデータをヒントに各会社の障害者雇用の合理的配慮では、メンター制度などの関係性が作りやすい環境を整えていくことや、雇用し経験を積んだ障害者の昇格をさせてロールモデルとして活躍できる仕組みをつくるのもよいでしょう。また家族との関係に関しては、主治医や支援者と協力を依頼してサポートするのもよいかと思います。なお、他者からの“注意助言”や“励まし”があることに対して、抑うつ感との関連は示さず、一方で、「私は安心して暮らせる環境にいる」ことが抑うつ感が低いことが示されました。つまり、もしストレスフルで調子を崩している場合は、他者からの助言や励ましの声かけはあまり効果がなく、安心して生活できる環境を整えていくことが大切といえるでしょう。もし調子を崩したときは周りは焦らずに、まずは安心できる環境や関わりをしていくことが必要であると考えられます。
21Sep
- レジリエンス　I have１
  久しぶりに投稿します。書かなくなると、ずるずるとやらない習慣になっていました。今日から改めてスイッチを入れ替えて書きたいと思います。では前回の続きのレジリエンスの続きです。レジレンスとは、ストレスから跳ね返す力と言われ、ストレスフルな状況において、ストレスとうまく付き合いながら生活できる力になります。そのレジリエンスの構成要素の1つである「I have」についてお伝えしていきます。I have「I have」は「私は・・・を持っている」というサポート要因で、エリクソンのライフステージ論でいうⅠの「基本的信頼」に該当します。基本的信頼感とは、その言葉の通り人を信頼できることです。信頼は生きていく基盤で、人を信頼できるようになれると、希望が得られると言います。信頼感があれば、次は新たな場所に探索的な行動ができ、挑戦をする意思が生まれいきます。レジリエンスでいうと「無条件で愛してくれて信頼できる家族がいる」「私には私のためを思って注意をしてくれる人がいる」「私は必要な時にサポートが得られる環境がある」などの環境要因になります。※ もっと詳しく知りたいのであれば、Glogbregのレジリエンスの文献を見てください。レジリエンスは、個人の資質と考えられがちですが、他者との関わりによっても影響を受けます。もちろん先天的・身体的にレジリエンスの高さ低さはそれぞれあるでしょう。特に統合失調症の方は、そもそもストレス耐性に弱いと言われています。レジリエンスが低い人が多いことでしょう。しかし、先天性や身体的なことで決まってしまっているのであれば、それは諦めて受け入れるしかありませんが、このレジリエンスの高さ低さに関しては、個人の要因だけで全て決定されるものではありません。ある教師を対象にした研究を例にします。仕事にしっかりとコミットし、有能であって、レジリエンスが高かった教師はどのような要因があるのかという調査がありました。レジリエンスが高い教師は、子供たちの可能性を信じ教育していたり、地域の方々とつながって貢献していると感じられていた人が、レジリエンスと正の相関があったといいます。つまり、レジリエンスとは、その個人の気質だけではなく、属するコミュニティによって大きく影響を受けています。皆さんもぜひ想像してほしい。職業生活を送る上で、ストレスフルな状況に陥ったことを思い出してください。そのような時に、いつでもサポートしてくれる家族がいたり、自分を慕って頼ってくれる仲間がいたり、努力を認めてもらえる上司がいれば、たとえ心身ともに大変な状況であっても、やり切ることができるのではないでしょうか。家族のできることと限界そこで一番身近な家族についてお伝えします。家族のできることと限界について。
13Sep
- 余談　イラストについて
  小難しい文章を分かりやすくするために、絵を描いてくれる方がいます。本人は、絵を描くと、イメージがつき頭に入ってくるので、自分のためにも描きたいと言ってくれます。ありがたいです。時々、どこに使えば分からないけど、癒される絵も送ってくれます。ありがたいです。
- レジリエンス３　私は何ものであるか
  今回は、前回に続きストレス脆弱性モデルでいうと器の部分、レジリエンスになります。レジリエンスとは「折れない心」であり「回復力」です。持つ、ある、できる！それを測定するGrotbergのレジリエンスチェックリスト（RC）は以下の３つで構成されています。１つ目は「I have（私は、・・・を持っている）」２つ目は「I am（私は・・・であること）」３つ目は「I can（私は・・・ができる）」I haveは、レジリエンスを高めていく周囲のサポート要因です。例えば、私には頼りになる両親がいる。など自分を支えてくれる人（ソーシャルサポート）を指します。I amは、自信、自尊感情、責任などの個人の内的な要因です。例えば、私は人に優しい。など自分を肯定する気持ちを指します。I canは、対人関係や問題解決スキルなどの能力的な要因です。例えば、私は人と話ができる。など自分ができることを指します。この３つは、エリクソンのライフステージ１の乳児期から、５の青年期の部分から成り立っています。「I have」＝基本的信頼感「I am」＝自律性、自我同一性「I can」＝自主性、勤勉感エリクソンのライスステージを１から５までざっくり説明します。１段階の基本的信頼感とは、その言葉の通り人を信頼できることです。信頼は人が生きていく基盤です。信頼できると、希望が得られると言います。明るい未来が描けることで、ワクワクした気持ちが生まれていきます。２段階の自律性とは、自分の行動をコントロールすることです。信頼感があれば、次は自分で探索的な行動したいという意思が生まれます。そして「私は私のままでよい」と肯定する気持ちも育まれます。３段階の自主性とは、行動する積極性が育まれると、何かをするときに目的意識を持てるようになります。〇〇に向けてやってみようという目的が作れるようになります。４段階の勤勉性とは、仲間やグループ行動から成功する体験をし、自分が有能感という「できる！」と思え、自尊心が育まれます。5段階の同一性とは、「自分がどんな人で、何者であるのか」と思い悩み、自分の「アイデンティティ」を探し始める中で確立していきます。青年期は、進路や結婚などのライステージが多く、自分の人生を選択する機会が増える時期でもあるため、気持ちが行ったり来たりするモラトリアムの中で自分らしさを確立していく時期になります。逆のネガティブにお伝えするとより理解できるのではないかと思います。人に信頼がなければ、社会で生きることが不安な状況です。自由に行動できなくなります。そして、生きている目的も薄れ、何かできるとは思えません。自分の存在に意味はないと悩み、結果的に人生を選択できないまま、社会と関わらない生活を送るようになっていくでしょう。実際にこのように感じている統合失調症当事者の方もいます。職業生活を送る上では、ちょっとしたストレスにも極端に弱くなり、再発する恐れもあるでしょう。より良い職業生活を送るためにレジリエンスを高め、ストレスの器を広げていく工夫が必要になります。（づづき）
11Sep
- レジリエンス２　エリクソン
  レジリエンスの基礎エリクソンでは、エリクソンはどのような人物かをざっくり説明します。1902年にドイツで生まれました。20歳で芸術学校を中退し、芸術家を目指し放浪するモラトリアム生活をし、25歳の時に友人の紹介で精神科医フロイトの娘であるアンナ・フロイトの弟子になり精神分析を学びました。その後、31歳の時にアメリカに移住して、心理士や大学教授として活躍し、アイデンティティという概念を作った人物です。アイデンティティとは、自分が自分であること、そしてそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚のことです。この背景にはエリクソンがユダヤ人であることや実父を知らないことで、自分は何者であるのかを悩んだ思春期、移住した時に自分が何者でもなくなる危機を感じた青年期などのアイデンティティの危機の体験がありました。そのような自身の体験や、精神分析学の学び、クライエントとの関わりなどによって、アイデンティティの概念を発明しました。岡本のアイデンティティのらせん式発達モデルがわかりやすいので紹介します。この図は、アイデンティティのらせん式発達モデルといいます。上に行くほどアイデンティティが確立できている状態を示しています。達成、モラトリアム、拡散を、何度も繰り返しながらぐるぐるとらせんを描き、絶えず自分とは何かを理解していきます。自分は何者か分からなくなる、アイデンティティの危機は青年期だけではなく、人生を通して何度も訪れると言います。職業生活においては、様々なライフイベントがあります。頑張ってきたことが達成した時期、何をしてもうまくいかずにスランプに陥る時期、その中で家族や仲間に支えてもらいながら徐々に新たな目標を見つけ、行動し、新たな自分を掴んでいく時期など、成長、再探索、再確立というサイクルから自分らしさを何度も確立していきます。このアイデンティティの確立のプロセスが、人生の様々な問題やストレスに対し柔軟に対処し、回復し、成長できる土台になると考えています。レジリエンスチェックリスト（RC）は、その概念のもとで作成された尺度になります。
10Sep
- レジリエンス
  レジリエンスこれまで「ストレス脆弱性モデル」での「ストレスの量」「適度なストレス」「ストレス反応」「ストレスの蛇口」と話してきました。最後に「ストレスの器」の部分についてお伝えします。職業生活には、思いがけないようなストレスはつきものです。そのストレスを柔軟に受け止めつつ、自身のエネルギーに変えながら、成長していくことが必要になります。一方で統合失調症の方は、ストレスに対して脆弱性があり、職業生活の状況によっては、症状の悪化や再発する可能性があります。そこで、ストレスを柔軟に受け止めていけるためのストレスの器を広げていくことが重要になります。この器を心理学ではレジリエンスと言いますが、これは「逆境やトラウマ、惨事、脅威、さらには重大なストレス源に直面したときにうまく適応するプロセスであり、困難な経験から再起すること」と定義されています。シンプルにいうと、へこんでも折れない心であって、逆境から立ち直る回復力のことを指します。レジリエンスを高めストレスの器を広げることが、ネガティブな心理状態に陥ったり、心の傷を受けたりしても、ストレス反応を軽減させて、回復し成長し、職場で自分の力を発揮できると言われています。ではレジリエンスとはどのようなものでしょうか。今レジリエンスを測る心理尺度は様々あります。職業生活の質（QWL）の研究では、Grotbergのレジリエンスチェックリスト（RC）の尺度を用いました。このRCは発達心理学者であるエンク・H・エリクソンのライフステージを土台に作成されています。エリクソンでは、次は、エリクソンはどのような人物かをざっくり説明します。（つづく）

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