今年最後の稲刈りをした。

時期が遅い品種、

10月も終わろうとしている。

少し肌寒い。


刈り取った田は一面、藁(わら)色だ。

カササギやカラス達が

地面にあらわになった虫達を

ついばみに降りてくる。

干し草と日向の匂いに包まれる。




ところで、この時期

まわりの田んぼを見渡すと

藁の色ばかりではなく

秋に似つかわしくない

鮮やかな緑色の田んぼも目につく。


1〜2ヶ月前に稲を刈った田んぼだ。

稲は刈り取られてしばらくすると

切り株から緑の葉を芽吹かせる。

切り株から再生した稲のことを

この辺では「ひこばえ」と呼んでいる。



ひこばえはやがて20〜30センチほどに成長し

先の方に小さな穂をつける。

もちろん穂の中に

お米が詰まっているわけではないけれど

見てくれだけはいっぱしの稲穂だ。




稲は刈り取られた瞬間に

呼吸も成長も、

命そのものが終わってしまうかのように

見えるけれど

そんなことはない。


「ひこばえ」について少し調べてみた。

ひこばえを食糧危機の打開策として

研究している機関があった。

再生二期作として、このひこばえで

相当な収量を期待できるのだとか・・・

そういえば昔、義父が話していた。

ひこばえに肥料やれば、また米になる、と。

じつは、昔の人も「ひこばえ」に注目していたのかな?!


私が「ひこばえ」に抱く気持ちは

いじらしさ、愛おしさ、希望

愛するひとの命が

心の中で尽きないのと同じように

いつも新鮮に

初夏の風に吹かれる青田のように瑞々しく

私に語りかけてくれる。


そんな「ひこばえ」は

冬が来る前にトラクターで

すき込まれてしまう運命にはあるけれど

やっぱり生きたい、生きたいと

懸命にまっすぐ伸びている。


「ありがとう」

そう言って

可愛い小さな稲穂を撫でてみた。


今年も無事、稲刈りまでできました。

幸せです。

ふうちゃん。