第一回 メディアとは メディアとは、何か。 議論喧しいテーマであるが、私はメディアをシンプルに「何がしかの情報が載っている、情報を発するもの」と定義したい。 上の定義を是とした場合、所謂、マスメディアやネットメディアは言うに及ばず、人間、モノ、出来事、街/都市、商業施設などもみなこれらは、メディアてある。 但し、メディアにも現実若しくは現実的メディアと擬似的メディアが存する事は、多くの人の指摘する通りである。 現代のように、擬似的な或いは非現実的なメディアが隆盛を極める時、現実メディア及び現実は、その存在を希薄にせざるをえない。 私が、以前ブランドに関する講演をさせて頂いた折、聴講者のお一人が、ご自身の子息をデパートの屋上の昆虫園につれていった時の事を話して下さった。 昆虫園で、本物のカブトムシを見たその子息は、「お父さん、これカブトムシじゃないよ、カブトムシは、これだよ」と言い、ポケットからカードのカブトムシを取り出しお父さんである氏に見せたそうである。 氏は、その時やや震えるような愕然とするような感覚を覚えたそうである。 因みに、氏はまだ35歳前後であろうか。 その氏をして愕然とさせる、子息の現実ばなれ。 複製可能であって、それそのものに、それそのものの意味以外の何事かを載せる事が可能なものと言う意味で、通常の理解の範囲でのメディアである虫カード。 こうしたものを、私のブログに於いては「擬似メディア=擬似現実」と表現する事としたい。 現実の世界、社会において上述の如く擬似的メディアと現実的メディア=現実との境界が曖昧になり、人々の心の内の現実感、現実認識のありようが変容している事実を指摘して、私のブログの前説とする事をお許し頂きたい。