私は池の端にしばらく立っていた。
そしてあのベンチに戻ってみた。
祥子様があんな淫らな表情をさせられるほどに嬲られた場所を堪能したかった。
ベンチの長谷川様の座っていた場所に座り、祥子様の腰のあったところを撫でる。
まだ・・・火照った祥子様の身体の熱が残っているような気さえする。
彼女の腰の秘められた部分が接していた場所にキスをしたい・・・衝動がつきあげた。屋外なのにこもっていたフェロモンが直に擦り付けられていたであろう場所。
上体をベンチにむけてかがめた時に、地面に残っていたGジャンにはじめて気がついた。
祥子様のものだ。
取り上げて抱きしめる。ワインの薫りがわからなくなるから香水など決して使わない、そう仰る祥子様なのにGジャンからはなんともいえない甘い薫りが漂ってくる。
きちんとお預かりして、お帰りのときにフロントでお返ししよう。あぁ・・・これでお帰りになる祥子様とお話ができる。

大の男がベンチに口づける、そんな恥ずかしい衝動は別の欲望にやすやすと・・・取って代わられた。
それに・・・早く茶室へいかなければ。


サービスカウンターに空いたグラスを預け、白ワインをデキャンタで、それとワイングラスを2つ、タンブラーを2つ、ミネラルウォーター、氷、おしぼりを4つ用意するようにいいつけた。
「どちらですか?」
「離れのお客様だ。お届けして、しばらくお相手をするからここは頼むな。」
サービスチーフに言いつける。
これで彼が茶室や離れにくることはない。
簡単な用事は離れ付きのサービスが処理することだろう。
手にしたGジャンをフロントオフィスに置いて、トレイを手に茶室に向かった。