<真夏の夜のジャズライブ>沢田がつけた今月のライブの名前だった。
新学期まであと数日。宿泊客も2日前よりは少なくなっていた。
宴会も今夜は2席だけ。私自身が立ち会う必要もほどんどない落ち着いた席だった。
まるで今夜の企みを神も祝福しているような気さえする。無宗教で無神論者な私だが・・・。

長谷川様は今日は打ち上げだ・・とおっしゃって、6時少し前にお若い2人の部下の方とお見えになった。
「今夜はジャズライブがあるんです、いかがですか?皆さんでお席はご用意しますから。」
私がお誘いすると、部下の方は興味を持たれたようだった。
「ライブの席でも酒はいただけるんですか? それなら音楽を聞きながらのんびりもいいかもしれない。どうだ、君たちは」
長谷川様がお連れ様に声を掛ける。

そして事前に長谷川様と電話で打ち合わせをした通りに、長谷川様とお連れ様をラウンジにお連れすることが出来たのだった。
長谷川様には前もって私が知る範囲での祥子様のことをメールでお伝えしてあった。
お好みや普段の様子。お好みらしいジャズの曲名。いつものお召し上がりもの。
それと、当日長谷川様が祥子様と2人きりになれる場所についてもお教えしておいた。
「当日天候がよければそこを使わせていただきます。彼女を連れ出したら1stセッションが終わったところでその場所に来てください。必ず、お願いします。」
メールの返信にはそのように書かれていた。