ごくっ・・・ワインとともに生唾を飲み込む音が思ったよりも大きく響く。
「長谷川様なら加納様を誘惑なさることも簡単だと見込んだ上での御相談です。そのためのご協力もいかようにでもいたします。加納様と関係をもたれる時に・・・私が近くにいることを許してくれませんか?」
いかに破廉恥なことかわかっていた。
いつもよりも早口でまくしたてる様に・・・でも声を顰めて一気にお話した。

長谷川様は一瞬唖然とした表情をされた。 当然だろう。
が、アウスレーゼを一口口元に運ばれたあと、ゆっくりと返答なさったのです。
「上手くいったら、で良いんですね。」
「もちろんです。」
「希望は3Pですか?」
「いえ、その場に同席できなくても構いません。そう・・・声だけでも、あの方の声だけでもいいのです。」
「ほう、そんなに魅力的な声なのですか。」
「ええ。ここではお聞かせできないのが残念です。深くて、まるい魅力的声なのです。」
「それは聞いてみたいですね。」
グラスをまた傾ける。
アウスレーゼはあとグラス2杯分ほどだ。
「僕ではだめかもしれませんよ。」
「そんなことは。長谷川様でしたら、きっと。いらっしゃる人数さえ決めてくださればお席は必ず確保いたしますから。」
「わかりました。来月の末ごろですね。あれほどの女性だ。いまから楽しみです。」
「ありがとうございます。お引き受けくださって。」
長谷川様のグラスと自分のグラスに最後のワインを注ぎ分ける。
「成功を祈って」「おねがいします」
チン・・・ グラスを合わせて乾杯した。