知識でその事実を知っていたとしても、そう簡単にできる仕草ではない。
祥子様なら立食パーティーには手の平にグラスを優雅にのせて蝶のように会場を歩き回るだろう。周囲の男性たちの求めに応じて。
その日ラウンジでワインをたしなむ何人かのお客様はほとんど不用意に・・・ワインの温度の上昇にも関係なくグラスに触れていた。もちろん祥子様以外のグラスには私どものハウスワインしか出していませんでしたが。
長谷川様の言う通り、祥子様だけが・・・特別な雰囲気を醸し出していたのだ。

「いいですね、彼女。雰囲気が、まぁるい。オーラが綺麗っていうんだろうか。」
長谷川様がひとりごちる。先日少しだけ祥子様に対する情報を与えただけなのに、的確に彼女の魅力を把握している。
「あの右側はお友達ですか?」
「ええ、そうです。」
「あんなふうに女性2人でいながらそれぞれが思う存分楽しんでいられるなんて、大人なんですね。いくつになっても自立できない女性同士が多いが・・・彼女達は違いそうですね。」
「ええ。」