― 税制改正大綱が示した方向性と、その先にあるもの ―

第5回では、
令和8年度税制改正大綱の法人税分野について、
「3層構造」という視点から整理しました。

その整理を通じて見えてきたのは、
個々の制度のテクニカルな変更以上に、

税制を通じて、国としてどのような経済構造を目指しているのか

という点でした。

最終回となる今回は、
この法人税改正全体を振り返りながら、
その評価と、今後を見据えた位置づけについてまとめてみたいと思います。


今回の法人税改正の総合的な印象

今回の税制改正大綱・法人税分野を通して感じるのは、
税制の使い方が、明らかに変わりつつあるという点です。

  • 中小企業の足元を支える制度は維持する

  • 一方で、

    • 大規模投資

    • 研究開発

    • 技術力の強化

    • スタートアップとの連携

    • 実体を伴う地方拠点形成

といった分野については、
「選んで、厚く支援する」姿勢が、これまで以上に明確になっています。

これは、
景気対策として広く薄く税負担を軽減する税制から、

中長期的に日本経済の稼ぐ力を高めるための税制

へと、軸足が移り始めていることを示しているように感じます。


法人税改正に通底する政策メッセージ

第5回で見てきた各制度を横断すると、
今回の法人税改正には、共通するキーワードがあります。

  • 戦略性

  • 付加価値

  • 技術力

  • 実態重視

  • 国内での蓄積

いずれも、
短期的な税収や単年度の経済効果よりも、

将来にわたって国力を支える基盤をどう作るか

という視点から選ばれた言葉だと感じます。

税制改正大綱を、
単なる制度の集積ではなく、

国の進もうとする方向を示す文書

として読むと、
今回の法人税改正は、
その方向性をかなりはっきりと示した内容だったといえるでしょう。


それでも感じる「高市カラーは、まだ一部」という印象

もっとも、
高市総理がこれまで語ってきた
「国力」を高めるための構想と照らし合わせると、
今回の税制改正大綱に反映された内容は、
まだその一部にとどまっているという印象も否めません。

『国力研究』の著書などで語られている、

  • フュージョンエナジー(核融合)

  • エネルギー安全保障

  • 食料危機への備え

  • 鉱物資源・素材産業

  • 危機管理投資としての国家的技術開発

といったテーマは、
いずれも超長期・巨額・国家主導の色合いが強く、
年次の税制改正大綱にそのまま落とし込める性格のものではありません。

今回の改正で見られる
研究開発税制の重点化や戦略分野への支援は、
そうした構想の入口部分が、ようやく税制に姿を現し始めた段階
と捉えるのが、最も自然ではないでしょうか。


税制改正大綱という「現実の中での第一歩」

税制改正大綱は、
理想や構想をそのまま書き込める文書ではなく、
財源制約や合意形成の中でまとめられる、
極めて現実的な政策文書です。

その制約の中で、

  • 戦略分野

  • 技術力

  • 国内重視

  • 実態重視

といった要素が、
法人税分野の複数の制度に共通して織り込まれたこと自体は、
決して小さな変化ではないと感じます。

今回の法人税改正は、
高市総理が描く「国力」を高める構想のすべてを表したものではありませんが、

その方向へ向かうための、制度上の第一歩

として位置づけることはできるのではないでしょうか。


おわりに(シリーズの締めとして)

第1回から第6回まで、
令和8年度税制改正大綱について、
いくつかの切り口から見てきました。

個々の制度を追うだけでは見えにくいものも、
全体を俯瞰し、文脈を意識して読むことで、
一定の方向性や政策意図が浮かび上がってきます。

本シリーズは、
税制改正大綱を
「制度の集まり」ではなく、
「国の進もうとする方向を示す文書」として読み解く試みでした。


税制改正大綱の解説は今回で一区切りとし、
また別のテーマでも税制を取り上げていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。