視界がまだ爆発音で揺れているような感じのままですが、とりあえず巣に急いで戻らなければ。次の瞬間、緊急時の連絡手段である触覚電波による女王メッセージが伝わってきました。非常時に女王から発せられる全仲間への連絡手段、生まれつき女王から生まれた全てのアリが受信可能と教えられていました。ただ実際に受信したのは今回が生まれて初めてのこと。やはり先ほどの爆発音に何か関係のある連絡ではないかとすぐに感じました。
「全ての我が子へ。
第七部隊より若い部隊所属の者 は、しばし巣への帰還を禁ずる。第七部隊の者は、緊急帰還を命ずる。以上。」
第七部隊はすぐに帰還ということは⁈何かの襲撃があったのか、それとも……内部反乱⁈……と色々な妄想が頭を過ぎります。第七部隊で無いと対処出来ないのだろうか…それだけの強力な敵の襲撃⁉正直なところ、私どころの実力ではどちらにしてもどうこう出来ないのは分かってはいましたが、脚は巣に向かっていました。何かチカラになりたい、その一心でした。私も第三部隊所属の兵隊、びくびくしていたのでは、これから先の訓練にも、ましてカーディフさんが言っていた第七部隊昇格への昇格レベルに達する訳がない。私も戦う。そう決めた意志を必死に携えて、巣穴に向かう足取りは、ゲンゴロウを担いでカーディフさんと巣に向かっていた心境とは正反対のものでした。
巣の入り口からは砂煙が上がっていました。巣の周囲もその砂煙のせいで視界が悪く、巣の廻りを慌ただしく動く仲間も識別が全くつかないくらいでした。
「侵入者を探せ、怪しい者は捕らえろ、真偽眼を使え、変装しているかもしれん。」
真偽眼……以前第二部隊長老が昔話を聞かせてくれた時に教わった事があるフレーズ。確か……………
~遡る事10か月前~
「第二部隊に入りし者達よ、先程の話の続きになるが、我々兵隊アリには巣穴に万が一の敵襲の際に備えられた
特殊能力がある。もちろんそなた達第二部隊が習得できる力ではまだない。ただ知っておくとよいだろう。我々の巣には数多の兵隊アリが慌ただしく出入りしている。その中に外敵が紛れ込み、しかも我々と同じ姿形をしていれば?どう見分ける?という事になる。その時に能力を発揮するのがこの技。
視界に入った対象全てを敵味方見分ける離れ技じゃ。そなた達の身体にもすでに備わっておる。あとは、発動訓練をこの先受けるだけじゃ。その為にはどんどん昇格せなだめじゃな。」~…
もちろん今の私はまだ第三部隊に入隊したばかり…そんな高等技は使えない。今は何よりこの騒動の原因を突き止めねば。
巣に入ると救護班が慌ただしく怪我人を運んでいた。
いつも通る通路、ふと食糧倉庫に目を遣ると、いつもいるタイラーの姿も無く、食糧倉庫には鍵が掛けられていた。一体誰が何の目的でこんな事を…
第二部隊フロアに下ると、被害はほぼ食い止められていた。おそらくここより下層にある各部隊フロアは無傷だろう。それだけ下層に行けば行くほど在籍兵隊のレベルも上がる。
タイラーは大丈夫だったろうか…ずっと帰還してから頭のどこかで小さな嫌な予感が頭を離れず陰を落としていた…