2018年9月13日(木)から15日(土)にかけて上演された、Dance Dance Dance@YOKOHAMA 2018開催記念 ダンス舞台「恋ノ水」の14日(金)昼公演を観てきました。

われらがTEMPURA KIDZリーダーYU-KAが出演することを5月に知ってから、ずっと行きたいと思ってました。抽選にハガキ5枚申し込んで、8月下旬に落選ハガキが4枚届いてから、翌日夕方最後の1枚が当選で戻ってきたときは嬉しくてしかたありませんでした。

そしてこの舞台を見ることを楽しみに指折り数えながら当日を迎えました。



開演時間になると、シルバーの衣装の「ブレーメン宇宙の音楽隊」の4人が登場。コミカルなアイドル風の自己紹介に続いて上演中の注意事項があって、舞台が始まりました。

第1幕
M01 アオイコドク
M02 クジラノナカ
M03 フユウ
M04 ブレーメンドリームオーケストラ
M05 トゥインクルピーポー
M06 ビューティフルパーティ
M07 ナナヒツジ

(休憩15分)

第2幕
M08 スペイシー
M09 サヨナラムーンンタウン
M10 ラブマゲドン
M11 ホシドケイ
M12 ハジメマシテ
M13 トワノマチ
M14 エポックパレード

(曲順ははぎこさんのツイートから引用)

始まりは、教室のシーンから。最初はYU-KA演じる「私」と大坂絵莉さん演じる「私(心)」のすれ違いが表現されました。クラスメートに愛想良く振舞う「私」だけど「私(心)」は孤独。そんなミスマッチがダンスでも表現されていました。

そして松田鼓童さん演じる「僕」との出会い。「僕」はNaokiさん(※)演じる「僕(心)」の中に深くて黒いものを抱えている。
※Naokiさんは、9月初めに足を骨折、全治3週間と診断され出演が危ぶまれたのですが、そんなことがあったとは思えない動きでした。最前の観客によればテーピングしていたそうですが、何ヶ月も稽古してきたと思うので、出演できて良かったです。

最初は学校の制服風の衣装だった「私」と「僕」は、互いの内面と向き合うシーンでは「心」が最初から着ていたスエット風の衣装と揃いだけど色違い(実体=グレー, 心=白)のものにチェンジしていました。「私」と「僕」がこの衣装を着ている間は、二人と二人の「心」がファンタジックで非現実的な世界を漂いながら距離を縮めていきます。「私」と「私(心)」、「僕」と「僕(心)」そして「私」と「僕」。最初は暗いイメージの曲から後半はハッピーな曲にダンサーさんたちの陽気なダンスもあってちょっとしたテーマパーク。ミュージカルのような華やかさをダンサーさんたちが彩ってくれました。

やがて「私」と「僕」と二人の「心」は「ブレーメン宇宙の音楽隊」に導かれて宇宙へ旅立ちます。目的地に着くまで少し時間がかかるから、と「ブレーメン宇宙の音楽隊」からアナウンスがあってそこで第1幕が終わって休憩になりました。

第2幕が始まるちょっと前にも「ブレーメン宇宙の音楽隊」から「もうすぐ目的地に着くから席に戻って」とのアナウンスがあって、ほどなく第2幕開幕。

到着した場所は滅亡寸前の星。生き残るにはカプセルに乗って脱出する必要があるが、誰かがカプセルを回収しなければそのまま目覚めず永遠の別れになる、という「星の彼女」と「星の彼」のストーリー。互いを愛しているとのキーワードで用いられる「月が綺麗ですね」。二人がカプセルに乗って去った星に残った「私」と「僕」と二人の「心」。滅びゆく星の上で月を眺めながら「月が綺麗ですね」と愛を確かめ合う。このシーンは生と死が紙一重のあやうい感じが心に突き刺さる感じがしました。

この舞台のキーワード「あと何回、君にアイラブユー伝えられるだろう」は「ラブマゲドン」の歌詞だったのですね。Apple Musicでダウンロード失敗してその曲で再生が止まってしまうのでスキップしてました。歌詞をしっかりチェックすれば良かったです。

と、いつの間に「ブレーメン宇宙の音楽隊」はいなくなっていて、「私」と「僕」と二人の「心」がその星に取り残されていたことがわかり、やがてその星の最期が迫ってきて、ステージが暗転。

ステージにふたたび照明が灯ると「私」はいつもの教室に戻っているのに「僕」がいない。星から戻る際に離れ離れになってしまったらしい。

再び「心」と向き合う「私」。時計の音が聴こえてきて、TEMPURA KIDZファン的には
「おー、ここで来るか!ヤバい!ヤバい!」となる「ホシドケイ」。TEMPURA KIDZのイベントとは違う新井健太さんによる振り付けは、「私」役のYU-KAと「私(心)」役の大坂絵莉さんが一つになったようなエモーショナルなダンスでした。このシーン、動画欲しいですね。できれば15日のシナリオアートのクミコさんの生ボーカルバージョンで。

そして時が過ぎて、「私」は看護師になって、記憶が一日しかもたない「僕」と再会します。ナース姿のYU-KA様ステキ!スカートじゃないのが残念だけどパンツの方が医療のプロとしてのリアリティがありました。「ハジメマシテ」でオーロラの奇跡により「僕」の記憶が戻るところは展開が速すぎるように感じましたが、曲がそういう曲なのでしかたありません。「恋ノ水」は恋をする人が流す涙という設定ですが、ここで「私」の目から「恋ノ水」が流れて「トワノマチ」で大団円。

祝祭感にあふれた「エポックパレード」で出演者が入れ替わり立ち代わりステージ中央に登場して短い踊りを踊って挨拶。いわゆるカーテンコールという奴ですね。キャスト全員が「やり切った」感に満ちた素敵な笑顔。手が痛くなるくらいの拍手を送りました。もちろん主役の大役を務めたYU-KAも良い顔。こりゃぁTEMPURA KIDZファン的には黙っているわけには行きません。YU-KAが礼をしたところで「ゆーかー!」と叫びましたが、届いたかしら。

最後にキャストに演出の新井健太さんが加わって全員で手をつないで一斉に礼をする、みたいな感じになったらスタンディングオベーションしようと思ったら、それはなしで終演。こういうのは千秋楽だけなのね。


見た瞬間「北島マヤ」と「速水真澄」という人名が浮かびました。若い人にはわかりませんね。近くで見るとバラじゃなかったし。

コインロッカーから荷物を引き取ってホワイエでアンケートを記入してたら、連番のZenith400さんのところにYU-KAが現れるというサプライズ。私も挨拶させてもらいました。「ホシドケイ」で「私」と「私(心)」の一体感がピークに達した感じがしたので、そういう解釈で良いのか本人に質問したら「この人は勝手にいろいろ解釈しようとする面倒くさいおっさんだな」という含みのある笑顔で肯定してくれました。あー、突然のことでキモい発言をしてしまいました。




感想としては、まずは何と言ってもYU-KAが主役という大役をしっかり務めてくれた嬉しさです。ダンスが大好きなメンバーで構成されているTEMPURA KIDZの中でもダンスと真正面から向き合ってきたYU-KAならではの全力投球のダンスを見ることができましたし、大坂絵莉さん、松田鼓童さん他キャストとの調和みたいなものも素晴らしかったです。幅広い人脈を活かして「THE BLOCK PARTY」を多彩な出演者で華やかにプロデュースしてきた頼もしいリーダーのYU-KAがどちらかというと内向的な「私」を演じるのは決して簡単ではなかった思いますし(本人は「似ている」と言ってますが)、休憩を除けば1時間45分の上演時間の半分以上出ずっぱりで踊るのも体力的にキツかったと思います。特に2日目の14日(金)は2公演ありましたし。ダンスのジャンルもふだんのヒップホップをベースに運動量と細かい手足の動きが多いものから、モダンバレェとかジャズダンスっぽいエレガントなものが多かったこのステージでは困難もあったんじゃないかと思います。それらを乗り越えてくれたYU-KA天晴れです。

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舞台全体の印象としては、シナリオアートの曲をつなげて作った全体のストーリーの起承転結が必ずしも一曲一ごとの起承転結とぴったり合っていない部分が、観客として難しかったです。全体のマクロなストーリーの流れからは、不自然に感じるようなダンサーの表情や体の表現があったりと。

あとで、曲順に沿って歌詞を読んでみるとわかるのですが、マクロなストーリーから細かいエピソードを一つ一つ作りこんでいくのではなく、シナリオアートの曲が持っているエピソードをパーツにして全体のストーリーを組み立てているんですよね。あくまでも曲(そしてその曲に結びついたエピソード)が先。公式サイトでもそんなこと書いてましたね。

ですから、シナリオアートの曲をふだんから聴き込んで一曲一曲に思い入れのあるシナリオアートファンの方には、そういった粗はあまり感じられず、曲の世界観を気持ちを込めて踊るダンサーの表現をより楽しむことができたのではないかと思います。私もこの公演の一週間前くらいからシナリオアートの曲ばっかり聴いてたんですけど、もっとしっかり予習していれば良かった。歌詞をちゃんと読んでいれば、「この曲やるな」というのがあと2~3曲は見当を付けることができたと思います。ちょっと後悔。

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ダンスが売りのTEMPURA KIDZファンながら、ダンス中心のイベントは今回が初めてでした。個人的にダンスはバンドにおけるドラムスやベースのように重要な要素と捉えてはいても「ダンスだけ」となるといつまで経っても終わらないドラムソロを延々と聴かされるような印象があって、ダンスだけのイベントは避けてました。そういう先入観として持っていたものは、一切感じることなく、あっという間の2時間でした。18人のダンサーさんのダンスが素晴らしかったですし、慣れないお芝居の要素もしっかりとこなしていたように感じます(特に「ブレーメン宇宙の音楽隊」の4人は笑いも取ってましたし)。もちろんこのステージの軸になったシナリオアートの曲も何かを訴えようとする「強さ」がありました。

素晴らしいステージを作ってくれたスタッフさんとキャストのみなさん、ありがとうございます。

できましたら、映像を放映していただけるとありがたいです。あと、もう少し大きめのハコでシナリオアートの生演奏での再演とかありましたら、ありがたいです。NHK視聴者さんのお金じゃなくて有料でかまわないので。




この機会にYU-KAが主演に抜擢された経緯を記録しておきます。

TEMPURA KIDZに取って師匠であるMAIKOさんが産休に入り、MAIKOさんが担当しているダンスワークショップの代講をYU-KAが務めました。その模様をYU-KAがInstagramにアップロードしたのが、この動画です。



それがシナリオアート関係者の目に留まって、クミコさんに届いたのがこれ。



これがちょうどこの「恋ノ水」の企画・キャスティングのタイミングに合ったのでしょうね。3月には新井健太さんからこんなツイートが出ました。TEMPURA KIDZに関する情報はこまめにエゴサしているつもりでしたが、今朝まで気付きませんでした。



いやー、ちょっとしたことがつながっていくことで、こういうお仕事が来るようになるのですね。「縁」というものの面白さを感じています。こ

今回限りに終わらず、またYU-KAが、そしてTEMPURA KIDZがシナリオアートとコラボするチャンスがあったら良いなと思います。YU-KAと大坂絵莉さんのデュオダンスもまた観てみたいです。




最後に、いずれ公式サイトが閉鎖されたときのために、そして素敵なステージを作ってくれたことに対する感謝の気持ちを込めて、この公演のクレジット情報をコピペして、このレポの結びとします。長文失礼しました。

Dance Dance Dance@YOKOHAMA 2018開催記念 ダンス舞台「恋ノ水」
会期 2018年9月13日(木) - 15日(土) <3日間4公演>
9月13日(木)[開場]午後6時 [開演]午後6時30分(終演:午後8時30分)
9月14日(金)[開場]午後1時30分 [開演]午後2時(終演:午後4時)
9月14日(金)[開場]午後6時 [開演]午後6時30分(終演:午後8時30分)
9月15日(土)[開場]午後4時30分 [開演]午後5時(終演:午後7時)
会場 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ(横浜市中区山下町281)
主催 NHK横浜放送局、KAAT神奈川芸術劇場
共催 横浜アーツフェスティバル実行委員会

■CAST
「私」YU-KA(TEMPURA KIDZ)
「僕」松田鼓童(nts)
「私(心)」大坂絵莉(東京舞座)
「僕(心)」Naoki(Memorable Moment / ricordo)
「ブレーメン宇宙の音楽隊 コッコ」米内理紗(MKMDC)
「ブレーメン宇宙の音楽隊 ミュー」erika(LUCIFER)
「ブレーメン宇宙の音楽隊 ブレイ」MOMOCA(LUCIFER)
「ブレーメン宇宙の音楽隊 バウ」新本芙由美
「先生」ほか寺澤佑紀(MKMDC)
「白馬の王子を待つ彼女」ほか時田小粒
「ギター鳴らし歌う彼」ほか髙橋匠太(ROYCE')
「高架下の人」ほかKEiTa(Gentaro+KEiTa)
「宙に舞った人」ほかK-sKe
「変身ベルトを信じる少年」ほかSHOJIN
「トゥインクリン少女」ほか山星ともか
「ビューティフル青年」ほかSHUNSUKE
「星の彼女」ほか高木沙知子
「星の彼」ほかkizuku

■STAFF
演出・振付 新井健太(動制作)
音楽 シナリオアート (ハヤシコウスケ(G/Vo)、ハットリクミコ(Ds/Vo)、ヤマシタタカヒサ(B))
脚本補佐 波田野淳紘(劇団820製作所)
照明 杉本公亮
音響 田中裕一(サウンドウェッジ)
音響操作 市川裕之
舞台監督 宮田公一
プロダクションマネージャー 川口眞人(レイヨンヴェール)
写真・ヘアメイク NANAE KITATANI(merry shibuya)
衣装 梅村まい
イラスト いづこ
グラフィックデザイン 米原誉哲(ヨネハラデザイン)
ホームページ 「特別コラム」執筆 正安寺悠造(DACTparty)
スペシャルサンクス あさこしはな、稲葉眞由穂、尾関晃輔、キムラモトコ、芝田和、諏訪百妃子、田家知行、中野みほ、なかむらあんな、なっちゃん、マルコ、湯浅瑠衣、渡辺小雪、AYAO、IPPATSU、minako、rena sato、39
企画・構成・脚本 NHK横浜放送局