「葬儀屋側から見たのもさぁ チラッチラッ」

って言われたので書いたよ。


ほぅら、これで満腹になったろう。


テイカーの思考が思った以上に複雑でまとめるのに脳みそ4つ分くらい消費したけど、ヤンデレなほど輝くんだから仕方ないね。

テイカーだから仕方ない。




【bioethics】



鼻につく薬品の臭い。
苦しみもがく患者の声。
そして、そこらじゅうに漂う死の気配。

どこか懐かしい気もするが、これ程までに胸糞悪い空気は初めてだ。
わかりやすい生に対する渇望と、死に対する絶望。
無理やり作り出す生。

どれだけ延命措置を試みたところで、人間は生きる時間が限られた生き物だ。
死神が裏で操作しても、皆一様に死は等しく与えられる。
死こそが真の救済だ。
長い長い人生に終止符を打つ時にこそ、人は全ての物事から解放される。

でも。
それでも、生を求めるのはどうしてなんだろう。
生きたいと願ってしまうのはどうしてなのだろうか。
人間とはつくづく変わった生き物だ。

「だから興味が尽きないんだけどねぇ……」

人知れず溜め息が漏れる。

そう、興味は尽きない。
しかし、その興味を満たす為の手段がない。
もっともっと研究がしたい。
走馬灯の先を望んでも、限られた検体で、周囲に気付かれないようにしか思索できない。

唯一の成功例は小生の監視の下、協会でぬくぬくと過ごしている。
あれを殺す訳にはいかない。
なればこそ、より多くの成功を生み出して、本物を作りださなければ。

焦るばかりで、追い詰められていく。
これでは時間がいくらあっても足りない。
如何な悠久の時を生きる死神と言えどもその生は無限ではない。

暗い霊安室での手続きをさっさと済ませ、新鮮な空気を求めて地上に出る。
重苦しい、どんよりと湿った空気が一気に軽くなるのを肩で感じた。

霊安室なんてものは、病気を完治させに来た患者に見せないよう裏口に作られている。
ここから出入りするのはその生を失った者か、小生と同じような業者の者くらいしかいない。
だからだろう。
木陰にはためく白衣の色が、やけに鮮やかに目に飛び込んだ。

ベンチに座り込んで頭を抱え込んだ医師の姿。
生に溢れた外界の中で、その陰鬱さがアンバランスだった。

あの医師は何度か見かけた事がある。
この病院の院長だ。
どこまでもお人好しで、如何にも人間が好みそうな好青年。
そして、単純。

「どうしたらいい……」

確か、彼の研究は……

気付いた瞬間、笑みが零れた。
――そうだ。
彼を使えばいいんじゃないか。

「まるで余命を宣告された病人の様だよ、先生」

素知らぬ顔で近付き。
話しかける。

「……余命を宣告された方がまだましです」
「おやおや、相当抱え込んでいるらしい」

憔悴しきった顔の医師は、鬱陶しそうにしながらも。
こちらの話に耳を傾けた。

その後は簡単。
この男の相談に乗る素振りをしながら情報を聞き出すだけ。

くだらない御伽話を信じるヒト程、愚かなほど単純だ。
盲信させる事など訳もない。
死神に信じ込ませることだってできるのだ、程度の知れた人間相手なら、もっと容易い。

自然と笑みが濃くなった。

人体実験に使われる身体は墓から掘り起こされる。
死体を使うわけだ。
それはつまり、小生が折角綺麗にして埋葬したものを掘り起こされるという事。

この男の研究のために必要なのは膨大な数の実験体。
それなら、いままで小生が病院から受け取っていた遺体をそのまま実験に使ってしまえばいい。
そうすれば綺麗なお客さんを丹精込めて作った棺から引っ張り出される事も、無残に切り刻まれる事もなくなる。
身寄りのない患者も使ってしまえばいい。
それにほら、どんな事をしても、全部この男に罪を着せてしまえばいいじゃないか。

嗚呼、なんて素敵な隠れ蓑。

「御伽話を信じてるんだろう? ねぇ、リアン・ストーカーくん、なら小生の事も信じてみてよ」

彼に近づく。
はじめこそ恐怖の色が僅かに揺れていたが、それも徐々に薄れていった。
もう、小生の事を信じて疑わない。

所詮は気休め。
小生の実験が成功するまで、資材を提供してもらえる場所として確保しておくだけだ。

多少の暇つぶしになればそれでいい。


fin



黒いね。真っ黒だよ!

2012/08/24 16:16

pさんがリアンを全力で祝ってたから、俺も祝ってあげたくなったんだ。

といっても、アホなリアンを書くのが楽しくていつの間にか文になってたんだけどね。

ま、いいよねー☆


何となく葬リア風味目指して書いたよ。

精神的な面で葬リアだから期待はするな。



【invasion】




学会で提唱した私の理論は馬鹿らしいと退けられた。
非人道的なのだと。
しかし、私は自分が間違っているとは到底信じられないのだ。

何故理解されない。
人間は皆等しく生まれてくる権利と死んでいく権利を持っている。
なればこそ、その生をもっともっと長く全うする事こそ人類の望みではないか。

「何故、わからない……」

その日も頭の固い医師達に門前払いを受けた。
膨大な資料を入れた鞄は一向に軽くなる様子もなく、ただ黒い重りとなって地面に横たわっていた。
腰を下ろしたベンチから動く気力すらない。

もういっそ研究をやめてしまおうか。
いやしかし、これは義務なのだ。
私がやらねばならぬ事なのだ。
けれど、そのためにはこの研究が如何に人類のために必要なのかを解らせる必要がある。
嗚呼、どうすればいい。

「まるで余命を宣告された病人の様だよ、先生」

頭を抱え俯いていた私の頭上から聞こえた不気味なイントネーション。
この独特の響きは何度か聞いた事があった。

「……余命を宣告された方がまだましです」
「おやおや、相当抱え込んでいるらしい」

喪服に身を包んだ葬儀屋が、顔を覗き込んでいた。
全身に死を纏ったこの男は、言わば私とは正反対の存在だ。

「どうしたんだい。いつも以上に避けられてるような気がするんだけど、小生何か気に障る様な事した?」
「いや、申し訳ない……研究に行き詰って、いて」

彼が笑みを濃くした気がした。

「行き詰っていて?」

先を促す声が、先程とは違う気がした。
それでも続けなければならない気がした。

「私は、完全なる救済を、行いたいのです」

いつの間にか私の隣に腰かけた葬儀屋に、気付けば研究の全てを話し始めていた。

「救済? 全ての人を救いたいってこと?」
「私が目指す医療は、死の克服です」

人間は健康であってこそ生きる意味がある。
生きることが健康なのだ。
死ぬことは健康ではない、不健康だ。
死を予防するばかりが医療ではない。
死から人間を救ってこそ。
死という不健康を取り去る事こそ、真の医療ではないか。

なのに、何故わからない。
わかろうとしない。
それは死を恐れているからだ。
死など克服できるはずがないと、はじめから決めつけているからだ。
固い頭で、そう思い込んでいるだけだ。
そして、私がそれを成し遂げる事が恐ろしいのだ。
人類の究極の野望、望み、それを叶えられてしまう事を邪魔しようとしているに違いない。

「そんな事が出来ると思っているのかい? まるで不死鳥のように生き返るなんて、人間にはまず不可能だよ」

わかっている。
けれど、もう少し。
あともう少しの技術があれば飛躍することができる。
その一歩が見つけられず踏み出せずにいる。

もどかしい苛立ちを更に苛立たせる、甲高い笑い声が響いた。

「ヒッヒッヒ! 君は本気で信じてるんだねぇ~」

笑うなら笑えばいい。
どうせ皆私を馬鹿にするのだ。

「それじゃあ、微力ながら小生が少しだけお手伝いしてあげるよ」

彼の発した信じられない言葉に、思わず立ち上がりふらふらと後ずさる。

「貴方が、私の研究の手伝いを……?」
「そうだよ。君の人間の生への執着と洞察は実に興味深い。だから、そんな君が行う研究の行きつく末路が見たくなったのさ」
「資金援助でもして頂けるっていうんですか」
「ヒヒッ、まさかぁ」

彼の提案に、今度こそ後ろに倒れ込んだ。
その提案はあまりに莫大で、酔狂で、非現実的なものだった。

「そんな……不可能だ!!」
「御伽話を信じてるんだろう? ねぇ、リアン・ストーカーくん、なら小生の事も信じてみてよ」

御伽話なんかじゃない。
私の行おうとしている事は、いずれ人類に必要となるものだ。
不可能なものか。

ゆらりと、愉快そうに立ちあがった葬儀屋は、歪んだ口元を更に歪めて私に近づく。
異形なモノの様なその風貌。
全身が粟立つとはこういう事を言うのだろうか。

不健康を取り除き、健康を世に認めさせることができる。
そのための手段が目の前の男の手中にあるのだ。
何を躊躇う事がある。
私の研究に対する熱意はその程度ではない。
不可思議なモノを前にして引きさがる程脆いものではない。

これは私の義務なのだ。


fin



アホなリアンとその性格を知って唆す葬儀屋の図。

2012/08/24 03:39

悪魔の日だし。


セバ葬。







坊ちゃんの“おつかい”で葬儀屋さんの元を訪れると、店のドアを開けた途端に大量の花びらが降ってきた。

店の奥にあるカウンターには、花束を持ったままニヤニヤと笑う店主。

よく天井を確認してみると、籠のようなものが糸で吊られていた。

その糸が壁を伝いドアノブに括り付けられている。

どうやら、ドアを開けると上のものが落ちてくるだけの、トラップと言うにはあまりに幼稚で初歩的なイタズラを仕掛けられていたらしい。

「……それで、これはどういう意味でしょうか」

死神流の出迎え方なのか、それとも遠回しの嫌がらせなのか。

どちらにせよ、皮肉には違いない。

「いやぁ、聖水のシャワーじゃなくてよかったねェ~」

やはり皮肉か。

「6月6日って君の誕生日だろう?」

「ヨハネの黙示録に記述されている、獣の数字のことでしょうか?」

13章18節にはこう記されている。

『ここに知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は666である』

それが転じて、悪魔の数字と呼ばれるようになり、いつしか6月6日が悪魔の誕生の日だという根拠のないデマが流れるようになった。

聖書を諳んじてみせると、相手はさも面白くなさそうに隠し持っていた聖書と聖水をカウンターに置いた。

「なぁんだ、悪魔には聖書と十字架と聖水が効くっていうから試してみたかったのに」

「そんなもの見せられたくらいでは何ともありませんよ。私をそこら辺の雑魚共と一緒にしないでいただきたいものですね」

「だって、狩るのがお仕事だったから、そんなもの試したことなかったんだもん」

聖水のビンをそのまま投げつけようとしてきたので、慌てて取り上げる。

そんな高価なものをたかが悪魔一匹に投げつけるなんて、頭がおかしいとしか思えない。

「あ、やっぱり苦手?」

「違います。貴方これがいくらするのかわかってるんですか」

「さぁ? けど、ストックなら沢山持ってるから一本くらい無駄にしてもどうということはないよ」

もう一本を取り出そうとしていた腕を何とか掴んでテーブルの上に乗せる。

実験するのは一向に構わない。

しかし、そういう高価なものはもっと有益なことに使ってもらいたい。

「ヒヒヒッ、冗談だよ。伯爵の執事くんにそんなことするわけないじゃない」

そう言った彼の目は笑っていなかった。

いや、目は前髪に隠れて見えてはいないのだから、正確にはオーラが笑っていなかったことになる。

これだから死神は性質が悪い。

特にこの男は何を考えているのかも、どこまで本気なのかも検討がつかない。

早く用件を済ませて屋敷に戻りたいと溜息を零していると、忘れる所だったと、目の前に花束を突き出された。

「はい、プレゼント」

カウンター越し、しかも相手は座ったまま。

片腕は私に掴まれたまま、片腕は大きな花束を掴んだまま。

何もできないとは思うが、何かをしてこないとは思えない。

「……何です」

警戒しながら花を見る。

受け取ったら爆発するような仕掛けでもされていたらたまったものじゃない。

「悪魔を毒殺にでもしてみますか? それとも、先程仰っていた聖水にでも浸してあるのでしょうか?」

「どうしてマイナスにしか考えられないのさ。ユーモアのない奴って、小生キラ~い」

「プレゼントにありきたりな花束なんて、ユーモアがないのは寧ろ貴方の方ではありませんか」

その言葉を待っていたと言わんばかりに笑みが濃くなる。

「ヒッヒ……この花はねェ、普通の花じゃない。クロユリなんだよ」

花言葉は呪い。

「トリカブトとも迷ったんだけど、英国だと騎士道って意味になっちゃうから面白くないと思ってね。誕生日に死神が悪魔に、手に入れた者が不幸になる花を贈るなんて、なかなか面白いジョークだと思わない?」

そう言って、両手いっぱいの花束を私に押し付けた。

ブラックジョークにも程がある。

この男はもう一つの言葉を知っていてクロユリを渡しているのだろうか。

目の前の相手は相変わらず笑顔で、私の顔を見て反応を窺っている。

だとするならば、皮肉には皮肉で返すしかない。

「……嬉しいです。まさか私の事をそんな風に思っていて頂けたなんて」

「おやおや、悪魔って皆総じてドMなのかい?」

想定外の返事だったのか、嬉しそうな声で切り返された。

「まさか……しかし、こんな熱烈なプロポーズを受けたのは久しぶりですよ」

「……へ?」

今度は本当に想定外なのか、間の抜けたような声が返ってきた。

もしやと思い同じように畳み掛けてみると、言葉の意図が理解できていないようで明らかに動揺しているようだ。

これはいい。

今までさんざん弄られてきた分のお返しをしてやろう。

「クロユリのもう一つの花言葉は恋ですよねぇ?」


魔性の  まま魔性の香りが強く、魔性の花とも呼ばれる悲 恋の花。

そう伝えた瞬間に、ようやく今までの言葉の意味に気が付いたらしい相手は更に動揺し始めた。

「ちち、違うっ! プロポーズとか告白とかじゃなくって、そんなんじゃなくって……!!」

「好きな相手に程意地悪したくなるってやつですか」

「ただの嫌がらせだよ!! 困ればいいと思っただけだもん!!」

やっぱり嫌がらせか。

「そうですね、困りました。告白されたのはいいとして、私は攻められるのが嫌いなんですよねぇ……」

「攻……!!?」

掴まれたままの腕を振りほどこうと必死の彼を上から見下ろす。

「嫌っている害獣の誕生日を祝って、更にクロユリの花束をプレゼントするなんて。ドMなのはどちらでしょうね?」

「うぅッ……!」

何も言い返せなくなったのか、睨みつけるだけでそれきり口を閉ざしてしまった。

一方的になじられるのはムカつくが、反撃ができるのならこれもなかなか悪くはない。

「気に入りました。恋の花を両手いっぱいに渡してくださるなんて、」

悪魔の誕生を祝ってくれるなんて悪趣味なジョーク、貴方くらいしかしませんよ。

ありがとうございます。

最高の誕生日プレゼントですよ。

2012/06/06 22:48

この嘘は、真実(ウソ)であり虚偽(ホント)だ。




「じゃあね、テイカー。また明日!」



「うん」




今日もまた、嘘で君を見送る。


明日もまた、嘘で君を迎える。






毎日、毎日、毎日。





また明日、そう言って。


君は会いに来てくれる。



君は話をしてくれる。




何気ないことをしてくれる。





君は、小生を小生として見てくれている。








でも。








そんな君に、小生は嘘を付いている。






本当は、本当はね。










もう会えなくなるんだ。








もう話せなくなるんだ。



君とこうして、お茶を飲むことも出来なくなるんだ。




また明日、なんて。





本当はもうない。




君の見てくれていた小生は、小生じゃない。





君の前から消えなきゃいけないんだ。





それは、君が小生の前に現れた時から決まっていたこと。


わかっていたこと。




でも、小生は嘘を告げた。




本当を隠して、嘘を繋げた。



毎日、毎日、毎日。






「また明日」


「また明日」





君に真(ウソ)をつく。



真を偽として。





明日を昨日として。



毎日、毎日、毎日。





君の声を繰り返しながら。





「もう会えないよ」


「また、明日」





また明日。







2011/09/13 04:34