映画『男たちの大和 / YAMATO』(2005年)


昭和16年12月16日
全長263m、重量72800t
世界最大の46cm主砲9門を備えた
最強の戦艦大和は完成した。

しかし…
ガダルカナル島の敗退…
連合艦隊司令官 山本五十六の戦死…
戦局は悪化の一途を辿っていく…

そして、昭和20年4月6日────
水上特攻菊水作戦の指令を受けた大和は
7000余名の乗組員たちを乗せて
沖縄本島に向けて出撃。
大和はアメリカ軍艦載機の激しい爆撃と、
魚雷攻撃を受け轟沈したのだった────

平成17年4月。
大和沈没日の直前。

鹿児島県の枕崎漁港に
『大和沈没の海に連れて行ってほしい』
と懇願する女性が訪れてきた。

女性の養父は大和乗組員であり、
死に際しての遺言は
『大和沈没地で散骨し、
戦死した戦友の元へ帰してほしい』
というものであった。

偶然、その話を聞いた漁師も
菊水作戦時の大和乗組員だった。

特攻から生還し、60年間ひっそりと
暮らしてきた漁師は、自らの漁船に
15歳の少年乗組員と女性を乗せて
大和沈没の地…
北緯30度43分 東経128度04分へと向かう───


東シナ海沖に沈没した伝説の戦艦大和の
生存者や遺族などに取材をして書いた
『決定版 男たちの大和』が原作です。

公開当時は、撮影セットと
長渕剛さんが歌う主題歌が
まつり上げられていた印象。
観たことはありませんでした。

だから知らなかったんです…
音楽 久石譲さんじゃないか…!!
めちゃめちゃ良い!
めっちゃ良いんだけれど…
でも…えっ…ココ?
っていうシーンで流れるんだよなぁ…
情緒がないというか…
無音でも成り立つようなシーンも
たくさんある筈なのに…
それがとてつもなく惜しいのです…


さて…内容。

観ていてあからさまな
反戦やら賛美のメッセージはないかな。
【真実に基づいた創作】。

軍上層部の特攻指示への疑問と反抗、
そして精神論批判。
士官の苦悩や乗組員たちの痛ましさが
見事に表現されていました。


1945年…もう75年も前のこと…
沖縄に向かう乗組員に向けて
黒板に掲げられた

死ニ方用意

これが…あまりにも衝撃的だった。
死の準備をしろという命令。

『今から故郷に向かって別れを告げろ。
泣いてもいい。これも死ニ方用意の一つだ』


実際、この特攻について、
最後の酒宴で…菊水作戦の意義を
乗組員たちは激しく論争したそうです。

『戦死を誇りとする』か
『無駄死にであるとする』か。


それを臼淵大尉が治めた。
己の生死の葛藤を納得させた
その台詞に身につまされました。

『いずれは死ぬ者同士が
殴り合ってどうする。

日本は進歩ということを軽んじてきた。
進歩よりも精神主義を重んじてきた。

しかし進歩のない者は決して勝たない。
歴史がそれを証明している。

幕末、薩英戦争で負けた薩摩、
馬関戦争で破れた長州はその後
攘夷鎖国を捨てて、ヨーロッパから
新式の武器を輸入し幕府を倒した。

敗れて目覚める、
それ以外に日本が救われる道はない。

今、目覚めずして、いつ救われる。

俺たちは日本が
新しく生まれ変わるために、
その先駆けとして散る。

まさに本望じゃないか。』


あとはもう、
突き刺さる言葉ばかりです…

『武士道は
見返りを気にせずに死ぬ覚悟。

士道は
死ぬ覚悟を内に秘めて
人に恥じない生き方をすること。』




『あの年齢では死の意味さえ
理解できないだろうに。』

あの時代だから、
『お国の為に死ぬ』という思想が
通用していたなんて思わない。

『天皇万歳』と叫んで
死んでいくことしか
許されなかったけれど…

死ニ方用意で乗組員たちが
母や兄弟、恋人に別れを叫んでいる。
想いは確実に
愛する人々の元にある。

愛する人を守るために散った命。


たくさんの命を犠牲にし、
敗れた日本は
いま『目覚めた』と言えるのか。
『進歩』はあったのか。
その魂は、日本は『救われた』のか。


今の世を、
大和魂たちは見守っている。

今の日本は、
ほの魂に応えられているだろうか。


**・.+丸山小百合+.・**