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micky 動物達に愛と幸せな日々を❗️

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牛肉の格付けで最も重視されるのは「サシの多さ」だ

牛肉の仕事をするようになり、業界の重鎮のような方々と意見交換をするようになって、そうした人の口からよく出てくるのが「昔の牛肉はおいしかった」という、ため息交じりの言葉だった。私は青果業界でも仕事をしているので、同じように「昔のトマトは青臭くてうまかった」というような言葉をよく耳にしてきた。ただし野菜の場合、大概の場合はノスタルジーであって、客観的にみれば今のほうが味わいが深く濃くなっているというものが多いような気がする。

しかし、牛肉に関しては本当に「昔のほうがおいしかった」のかもしれない。なぜなら現在出回っているA5の牛肉は、ほんの20年前にはとうてい存在しえなかった、まったくの別物なのである。

前回記事(黒毛和牛「A5は、農家を守るための策だった」)では、牛肉の等階級を決める格付けについて解説した。その格付けにおいて評価されるのは大きく分けて2つ、「肉の歩留まり」と「肉質」である。肉質で評価対象となるのは、脂肪交雑(サシの多さ)、肉の色沢(いろつや)、きめ・締まり、脂肪の色沢と質で、これを5段階で評価することになっている。ただ、この中で最も重視されるのはやはり脂肪交雑である。脂肪交雑は1から12までの段階(これをBMSナンバーという)で評価される。

サシが多くなると肉の色が白に近くなる

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肉質評価で最高となる5番になるのは、BMSナンバーが8~12のものだ。BMSナンバー12に至ると、ロース肉の断面にはビッシリと白いサシが入り、本来の肉の色である赤色ではなく、どちらかといえば白に近くなっていく。では、BMS12の肉にはどれくらいのサシが入っていると思われるだろうか。

サーロインやリブロースといった高級部位が含まれる部位を、科学的には胸最長筋と呼び、その中に含まれる脂肪の量を粗脂肪量という。現行の食肉格付けが導入される1988年には、総重量中の23%が粗脂肪量であった。それが、2005年には41%に達し、現在は50%を超える個体も多く出てきている。50%というのは、1枚のステーキ肉の半分が油脂ということである。それを超える牛の肉の場合、もはや「赤身肉の中にサシがある」のではなく「サシの中に赤身肉がある」という状態である。

自由化に備えて格付け制度を改正する際には、ここまでサシ偏重の世の中になるとは思われていなかった。ところが日本の農家と研究者は極めて勤勉で研究熱心なので、どのように牛を飼えば格付け最上位であるA5に到達できるのかをあらゆる面から研究した。そして、1990年代から20年余りという極めて短期間の内に、粗脂肪量を倍増するところまで到達してしまったのだ。また、サシだけではなく、もうひとつの重要な評価項目である肉の歩留まり、つまり1頭の牛から採れる肉の量も、倍増とまではいかないものの、着実に増加している。

つまり、20年前、格付けの改正前に「特選」と呼ばれていた格付け最上位の牛肉と、現在の「A5」の牛肉はもはや別物なのである。もし20年前にいる食肉関係者をタイムマシンで現在に連れてきてBMS12の牛肉を見せたとしたら、心の底から驚くに違いない。

とはいうものの、サシ量が増えたことが牛肉のおいしさにつながっているならば、特に問題はないと思う。しかし残念ながらそうではないようなのだ。

肉牛生産の関係者が読む冊子に「日本飼養標準」というものがある。主要な家畜に、どのような内容の餌をどれだけ与えればよい家畜ができるかということを解説する資料で、第1級の研究者が監修・執筆した書物だ。現在、販売されているのは2008年度版である。この中に、脂肪交雑についてこう書かれている箇所がある。

「サシの多少が食味性にそれほど寄与していない」

「牛肉の焼肉による食味評価において、“脂肪交雑の多少が食味性にそれほど寄与していない”という記述とともに、遊離アミノ酸や脂肪酸の重要性が1987年の報告で指摘されている」

つまりある程度以上のBMSナンバーになると、もはやそのサシの多さがおいしさにつながるわけではないということだ。これは当然ともいえることである。それはなぜか。同書によればこう指摘してある。

「牛肉中の脂肪含量が増加すれば食感は、やわらかくジューシーである。その反面、牛肉中の粗脂肪量が50%前後まで増加すると、タンパク質含量が減少し、その結果として呈味物質である遊離アミノ酸含量が低下する可能性がある」

どういうことか。食に関する科学の世界でよく言われるのは、香りは油脂、味わいは肉から生まれるというものだ。肉を食べるとうま味を感じるが、これは肉の赤身部分を構成するタンパク質が酵素によって分解することで生じる遊離アミノ酸によるものである。この、うま味を生じるもととなる赤身肉の分量は、当たり前のことだがサシと反比例の関係にある。サシが入れば入るほど赤身が減るので、遊離アミノ酸によるうま味の少ない肉になるということなのだ。

おそらく20年前の格付け最上級の肉は、赤身肉とサシのバランスが程よく、本当においしかったのだろう。しかし、今、私たちが口にするA5の肉は、牛という動物の長い歴史の中のここ20年ほどに現れた、いわば未曾有の霜降り度合いになっている。それがイコール「おいしい」とは言えないというのが現実だと思う。いかがだろう。マスメディアの情報や飲食店などで「A5の肉が最上級」と連呼され、それがおいしさとイコールの関係になっていると思っていた人には、驚きなのではないだろうか。

ところで、このA5に到達することを目標に、全国の畜産農家や研究者が得た知見で、今、広く実施されている技術がある。それは「ビタミンコントロール」と呼ばれるものだ。これこそ日本の牛肉の現状をよく象徴する技術となっていると思うので、次項に簡単に説明していく。

ビタミンコントロールという「技術」

サシが多量に入るというのは、本来は不自然なことだ。というのは、通常は脂肪というものは皮膚の下や筋肉の間、そして内臓の周りにつくのが普通だからだ。

では、肉に含まれる粗脂肪量が50%を超えるような牛肉がどのようにして生まれたのか、大きく2つの要因がある。まずひとつは品種改良というもので、サシが入りやすい血統の牛を選抜していくことで昔よりもサシが多量に入るようにしたこと。もうひとつが、人為的にサシを入れる技術であるビタミンコントロールだ。

肉牛を生産する農家を「肥育農家」と書くが、これは文字どおり「肥らせて育てる」という行為だからだ。体を大きく育て、かつサシが多量に入った肉になることが望ましい。そこで、どのような餌をどの程度与えればよいのかという研究が、全国で行われてきた。その過程で発見され、普及したのがビタミンコントロールだ。

どんなものか。実際には「コントロール」というよりも「ビタミン欠乏」と言ったほうがよい。肥育期間をいくつかに分けたうちの中期と呼ばれる段階で、餌に含まれるビタミンAを制限、つまり与えないようにする。そうすることで結果的に、BMSナンバーは高くなり、ロース芯と呼ばれる部位の面積も拡大する。つまり、ビタミン欠乏によって格付けの上位を狙うことができるのである。

ただし、おわかりのとおり、ビタミンAは必須栄養素である。それを制限しすぎると、当然ながら牛に悪影響を及ぼすこともある。そこで、健康状態は保ちつつもサシや肉の歩留まりを向上できるようなギリギリの欠乏状態を保つというのが「ビタミンコントロール」なのである。ただし「コントロールしている」とはいえ、ビタミン欠乏が一定以上になると、牛の目が見えなくなったりと、さまざまな病気が発生しやすくなる。粗脂肪量が50%以上にもなるのだから、ビタミン欠乏以外の要因によっても、肉牛の体調は悪くなる。

ちなみに、肉牛の生理についていろいろ教えていただいている獣医師の先生によれば、「上手に飼う農家さんの肉牛は、A5になるものも意外と健康ですよ。健康でなければ餌をそんなに食べることはできませんしね」とのことだ。だから、ビタミンコントロールという技術自体を「よろしくないものだ」と断じるつもりはない。

けれどもやはり、一時的にビタミンAを欠乏させることでサシを入れるということを聞いて、快いと感じる人もあまりいないだろう。近年、欧米で叫ばれているアニマル・ウェルフェア(動物福祉)の観点からも、批判されてしまいそうな技術である。また、私の周りの複数の牛肉の流通業者が「ビタミンコントロールすることで牛肉の味が落ちるのではないか?」と疑問視する声をよく聞く。

今のところ、ビタミンコントロールを行うとサシが入り、ロース芯が大きくなるということは科学的にわかっているものの、ビタミンコントロールによって味わいがどうなるかを分析した研究はないようだ(あったら教えていただきたい)。「おいしさ」は格付け最上級の条件ではないので、研究が進んでいないのだろう。しかしこれだけ短期間で発展した人為的にサシを入れる技術なのだ。どこかに歪みがあっても仕方がないと思う。

生産者と消費者の間には大きな断絶がある

ただ、畜産の現場ではビタミンコントロールに対して、マイナスの側面から考える人はあまりいない。こんなことがあった。数年前、私がかかわっている高知県の畜産試験場で、褐毛和種(高知系)の肉牛に、牧草を中心とした粗飼料ばかり与えて、赤身が多い肉にしてみようという実験を行った。2頭の牛に私が名前をつけ、大阪を代表する熟成肉レストラン「又三郎」で食べるところまで完遂したプロジェクトだった。

この中で、牛たちの餌を設計し、日々の管理をしてもらう技師の方とちょっとしたやりとりがあった。私が「ビタミンコントロールはやめてくれ」と言うと、難色を示したのだ。

「うーん、やまけんさんの言うこともわかるんですが、牛がサシを入れる能力を発揮させないのは、かわいそうだと思うんです。最低限のビタミンコントロールだけはさせていただきたい」

とおっしゃるのだ。最終的に私が折れて、肥育中期にビタミンコントロールを施すことになった。ああ、これが現場の感覚なのかと思った。彼らにとって「サシを入れる」ことは、その牛の能力を発揮させてやることであって、よいことなのだと。生産者と消費者の間には大きな断絶があるな、と実感した瞬間だった。

その牛をと畜して枝肉になったのを見ると、やはり穀物飼料をあまり与えずに草を中心とした粗飼料中心に食べさせたからだろう、それほどサシは入っていなかった。面白いのはその技師さんが、最近になって顔を合わせるとこう言うのだ。

「最近、ビタミンコントロールのしすぎはよくないと思うようになったんです。研究段階ではすでに過度のビタミン欠乏はよくないと言っているのですが、生産農家はやはり“ビタミンを切れば切るほどサシが入る”と考える人も多く、牛の健康を損ねることも多いんです」

格付けによって価格が左右される以上、ビタミンコントロールという技術は生産者や彼らをとりまく関係者からすれば、牛を高く売るために必要な技術であり、正義である。だから、ビタミンコントロール技術の是非については、関係するおのおのが考えて答えを出せばいいことだ。

しかし、こうした事実は一般消費者には知られていない。知ったときにどんな印象を持つだろうか。もしかしたらギョッとするかもしれない。その反応は、おそらく今後、和牛が目指す海外マーケットでも起こりうるものだと思うのだ。そうしたことに関係者は今から対応策を考えたほうがよいはずだ。

次回、この牛肉編の最終回として、それではおいしい牛肉とはどんなものなのか、消費者レベルでどのように牛肉を選べばよいのかについて書いていきたい。