ある日突然犯罪者扱いに? 無許可ダウンロードの罰則化が引き起こす問題
先週「著作権者の許可を得ずに著作権を持つデータをネットからダウンロードする行為を違法と認定して罰則を..........≪続きを読む≫


「著作権者の許可を得ずに著作権を持つデータをネットからダウンロードする行為を違法と認定して罰則を与える」(上記記事より)
 「ダウンロード」って要は「複製」だよね。なら、この行為は現行法でも「原則」的には違法なんじゃ……
 しかも「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」どころか、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれを併科」のはず(著作権法119条1項)。

 おそらくは、現行法ではこの「原則」から除かれている「私的使用の目的をもつて自ら著作物の……複製を行つた者」の“一部”についても、一定の刑罰を科そうってことだろう。

 ただ、上記記事を読む限り、この改正が成立した場合、「刑事上」違法となる行為は「ネットから著作権を持つデータ(著作権の目的となっているデータ)をダウンロードする行為」とある。もしこの通りなら恐ろしい。民事上は適法な行為なのに、刑事上は違法となる複製の類型ができてしまう!
 ……まあ実際、こんなことはありえないだろうから、民事上(著作権法30条1項三号)と同じか、これより狭い範囲についての規制にはするのだろう。

 正直、ウイニー等P2Pの問題があるから、侵害していると知ってのダウンロードを禁止したいのは分かる。ただ、ここまで来ると文化の発展より、プライバシーの保護にも気をつかって欲しい。親告罪とはいえ、捜査自体は「将来告訴を得られる見込みがある限り」開始していいみたいだし(※1)(記事によると「一応申告を待ってから」捜査を開始するとあるけど、その申告って被害届けみたいなもの?)。

 とはいえ、文句を言ってもしょうがない(わけではないか?)。
 これ以上、著作権がキチキチに固まる前に、 著作者の権利、ちゃんと守ろうぜ!
 これ以上やると、下手すると、映画館以外でもこれ(↓※2)すら違法になるかもしれないし、なる「かもしれない」非親告罪化する可能性もあるしね……

                ;;-、
                /ヽ;;)
        ∧_∧ /
  ∧_∧_(◎・∀・∩
 ( ・∀|[__|o|_∧つ      ___
  | つ ∩( ・∀・))     | i \ \
 と_)_)( つ|三|O     | i  l =l
       と_) ̄)        | |__ノ  ノ
           ̄       | ̄ ̄| ̄ ̄|

――――
※1 田中開=寺崎嘉博=長沼範良『刑事訴訟法(第3版)』53頁(有斐閣、2008年)
※2(http://typeangler.net/?m=blog&eid=9778827ee97f1d184af2489d4ffc68641099ec81)2012年4月18日最終検索


ピンク・レディー敗訴確定「著名人は無断使用も受忍すべき場合ある」(※1)

 事案は上告人X(「ピンク・レディー」陣営)らが、「Xらを被写体とする写真」14枚(以下、本件写真という)を、被上告人Y(「女性自身」陣営)が無断でY発行の週刊誌に掲載した行為が、「Xらの肖像が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利」を侵害する行為であるとして、不法行為に基づく損害賠償請求を求めるものである。

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸又は学術の範囲に属すると主張するブログ-Xの主張

 最高裁の判断は(※2)
  肖像等を無断で使用する行為は,
   ①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,
   ②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,
   ③肖像等を商品等の広告として使用するなどの専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合

 には、「パブリシティ権を侵害する」とし、一般論としての「パブリシティの権利」を認めた。
 ただし、事案の解決としては、「読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたもの」にすぎず、「専らXらの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず,不法行為法上違法であるということはできない」とXらの請求を棄却した。


 「何人も、その承諾なしに、みだりに容ぼう等を撮影されない自由を有する」し(※3)、自己の肖像等の情報をコントロールする権利(「プライバシーの権利」)も認められている。
 ただし、「顧客吸引力を有する著名人は……様々な意味において社会の正当な関心の対象となり得る存在であって,その人物像,活動状況等の紹介,報道,論評等を不当に制約するようなことがあってはならない」(※4)などという理由から、「人格的な利益の確保」という点において肖像権等が制約されるとされている(※5)。もっとも、このような者らの肖像の経済的な利益(顧客吸引力)に着目し、学説や下級審の判決などで「パブリシティの権利」という「肖像に係る財産的な利益の保護を図る権利」(※5)が認められてきた。
 本判決では、パブリシティの権利を「顧客吸引力を排他的に利用する権利」として一般的に認めたものの、雑誌に収録されているひとつの記事の「補足とする目的で使用」する場合には、その侵害性を否定した。

 要するに、Yの本件写真掲載行為は、「Xらの財産性を有する個性(キャラクター性)に着目した利用」ではなく、「ピンク・レディーの曲を歌って踊っている人の図」としての利用であって、この程度は「有名人である以上あきらめなさい(有名税だ!)」ということだろう。

 本日の結論:ピンク・レディーはふつうの女の子にはもどれませんでした。
 

 ※ちなみに、写真につていは撮ったカメラマンの創作した著作物となる場合はありますが、通常、単に被写体となった者には著作権法上の権利は発生しない。だから、肖像権やパブリシティの権利のような議論がでてくるんだろうなぁ。


※1 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120202-00000083-spnannex-ent(2012年2月2日最終検索)
※2 最判平成24年2月2日最高裁HP「ピンク・レディー de ダイエット」事件
※3 最大判平成44年12月24日刑集23巻12号1625頁「京都府学連」事件
※4 本判決の金築誠志裁判官による補足意見
※5 作花文雄『著作権法 制度と政策(第3版)』536頁(発明協会、2008年)
 今季アニメで驚いたことがある。
 以前、某本屋で「パパのいうことを聞きなさい」のストーリーを確認した時は、「主人公をパパと呼ぶ少女が突然やってくる~」的なSFチックなことが書いてあった覚えがあるのに、いったい飛行機事故ってどういうことだ。いったい何と読み間違えたんだ!

 で、本来のストーリーでは(アニメ1話を見た後に気になって原作1巻を購入)飛行機事故が起き、主人公の姉とその夫が「行方不明」となり、そのまま場面はお葬式、親族会議へと移ります。
 しかしちょとまて、まだ遺体も見つかってないハズなのに、勝手に死亡扱いにしていいのか?

 人は出生により「権利の主体となる能力」(「権利能力」)を得、死亡によりこれを失う。権利能力というのは、「所有者」になったり「賃貸人」になったりする重要な能力であって、それを失う原因である死亡を、死体が確認されていない――確実な死亡が確認されていない――ような場合に、軽々しく認めていいわけはないし、そもそも役所が死亡届を受理してくれるかどうかもアヤシイところである。

 (1) 特別失踪
 たしかに民法には、飛行機事故のような「死亡の原因となるべき危難」に遭った者の生死が不明なときに、一定の手続きにより死亡したものとみなすという制度がある(「特別失踪」民法30条2項)。しかしこの場合でも、その「危難」が去った後「1年以上明らかでない」という条件が付き、1週間程度では当然これは使えないはずだ!

 (2) 認定死亡
 と思って民法総則の教科書を調べてみたら、民法ではなく、「戸籍法」という法律に「認定死亡」という制度があるそうだ。この制度は「死亡したことは確実だが、誰も死体を見たわけではない」といった場面で使われ、調査に当たった役所が死亡を認定し、戸籍上死亡したと扱うものらしい(※1・戸籍法89条参照)。「権利能力の存否にかかわる民法上の制度ではない」(※1)が、相続の開始原因にはなるらしい(※2)。なるほど、「政府の見解で搭乗員全員の死亡が発表」されているのだから(原作1巻93-94頁)、これの適用があったのか。


 ちなみに、この認定死亡という制度は2011年の「3.11」の場合には「大量の人々が広範囲にわたる津波によって行方不明となっているため」に、利用が進まなかった(「役所」が把握しきれなかったのかな?)そうである(もっとも、「死亡の事実を証すべき書面」の認定を緩やかにして対応したよう)(※3)。
 
 なにをどうして人の死とするか。認定がユルいと「生きてた時どうすんの?」という話になり、キビシいと今回のような場面で残された財産やらの処理がめんどくさいことになる。

 


 まあ、1巻の引きを読む感じ主人公の姉と義兄は、どうせ生きてんだろうな~


引用・参考
※1 内田貴『民法1(第4版)』94頁(東京大学出版、2008年)
※2 内田貴『民法4(補訂版)』331頁(東京大学出版、2004年)
※3 宮本ともみ「人の死をめぐる法律問題」法セミ685号19頁(日本評論社、2012年)

今回の元ネタ
パパのいうことを聞きなさい! (パパのいうことを聞きなさい! シリーズ) (集英社スーパーダッ.../松 智洋

¥600
Amazon.co.jp
ちなみに1巻は購入済。2巻~は検討中。

 このブログの趣旨は著作権法に関する議論を取り上げることです。
 といっても、東芝の「私的録音録画補償金事件」のようなタイムリーなネタではなく、「桃太郎は強盗致傷罪だ!」といったような「しょうもない」議論を中心に取り上げていきます。




 裁判長!桃太郎は「強盗致傷」です! (電撃ジャパンコミックス)/相川タク

¥599
Amazon.co.jp