ワークスアプリケーションズCEO 牧野正幸のブログ

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前編



当社では営業部門とソフトウエアの開発部門がまれに対立することがあるのですが、

お互いが交渉術を使うと、このような会話になる。


営業:「大事なクライアントの依頼で、来週中に仕上げないとまずいんですよ。

    本当は今週中にと言われたのですが来週に延期してもらいました。

    何とか一部分だけでもできないですかね?」


開発:「別のクライアントからも今週中という依頼があって、もう何日もみんなに

    無理をさせているんです。正直言って不可能ですね」


営業:「そうなると今後の取引が相当まずいことになる。何とかお願いします」


開発:「全く無理です。今の状況をよく見てくださいよ……」


これでは本当の問題点がどこにあるのかさっぱり分からない。交渉術の本なんか

には、「問題の本質をすべてテーブルに挙げ、お互いにとって最適なWINを

探しましょう」なんて書いてあるのだが、それはかなり「きれいごと」である。


実際には必ず、自分が少しでも優位になるようにと情報を出さない。出そうとしても、

相手が出してこないのではと思って、結果的には出し切れなかったりする。交渉術は

「核の抑止力」と似ていて、他人がその力を使うから自分も使うということになりがちで、

そうなると交渉そのものが意味を失う事態になりかねない。


そこで私は社員に「交渉術を使おうとするなら、二度と話を聞かない」と伝えています。

もちろんこれはトップマネジメントだからできることでありましょう。しかし、みなさん

でも同じことはできるのです。


同僚や、部下、後輩や友人、知人に「私は交渉術を使わないし、使われたくない」と

宣言するのはどうですかね? 万一、交渉の後でお互いにテーブルに載せていない

事実があったら許さぬ!くらいの気概が欲しいね。


そうすれば、先ほどの会話はこのようになる。


営業:「A社の依頼で、『来週末に××の仕様で』と言われています。先方は

    それを再来週使うようです。必要な納入数は最低で30個。製作の余力を

    教えていただけますか?」


開発:「現在は正直、厳しいです。至急の案件が今週いっぱい入ってまして、

    取りかかれるのは来週から。もしかしたら担当のA君が、少しずつなら取り

    かかれるかもしれません」


営業:「仕様に関してはクライアントも譲歩してくださる可能性があるので、開発側で

    これならできるというものを示していただければ交渉します」


開発:「この部分の仕様を全部簡略化してくれるなら、他社のものを改良して使えます。

    これなら3日もあれば十分可能です」


お互いが相手のことを考えてWIN-WINに持っていくのが交渉のあるべき姿で

あって、相手を屈服させるのは何の意味もないことです。


みなさんも交渉術の使いすぎに、ご注意あれ。