「走らせない」のではない。儲からないから、もう走らせられない――タクシー廃業の現実
「クルマはあるのに、なぜ来ないのか」
そう怒る人は多い。
だが現場から見れば答えは単純です。金にならないからです。
2025年度、タクシー業の休廃業・解散は66件で過去最多、倒産は36件、合計102件が市場から退出しました。これは、集計可能な2000年度以降で初めての100件超です。帝国データバンクは、背景としてドライバー不足と燃料費高騰を挙げています。
世の中には、タクシーをまだ「車があればできる仕事」だと思っている人がいる。
違います。
実際には、二種免許を持つ運転手がいて、長時間拘束に耐え、事故リスクを背負い、クレームにも対応し、それでようやく回る仕事です。しかも今は、その担い手が足りない。
その結果どうなるか。
車両はある。需要もある。なのに動かせない。
ITmediaが紹介した帝国データバンクの分析でも、ドライバー不足で「クルマはあるのに動かせない」状態が続き、需要を取りこぼし、実車効率が上がらず、売り上げが伸びない実態が示されています。
ここで一番腹が立つのは、外野の無責任さです。
「地域の足なんだから頑張れ」
「客が困ってるんだから走れ」
「台数あるなら回せるだろ」
その言葉、全部まとめるとこうです。
“儲からなくても責任だけ背負って続けろ”
現場にそう言っているのと同じです。
だが、会社は慈善事業ではありません。
運転手もボランティアではありません。
利益が出ない、燃料は高い、人は集まらない、責任だけは重い。
この条件で「やれ」という方が無理です。
帝国データバンクの資料では、2024年度の損益動向として、タクシー業で赤字が40.1%、**増益は33.4%**にとどまっています。つまり、かなりの事業者が苦しいまま走っている。そこに人手不足と燃料高が重なれば、廃業が増えるのは当然です。
「金にならないからやらない」と聞くと、冷たく感じる人もいるでしょう。
でも違います。
それは冷たさではなく、経済の現実です。
赤字でも続けろ。
人がいなくても回せ。
生活が苦しくても地域のために耐えろ。
そんなものは美談ではありません。
ただの押しつけです。
本当に批判すべきなのは、現場ではない。
「なぜタクシーが報われない構造のままなのか」
そこを放置してきた社会と制度の側です。
呼べばすぐ来る。
深夜でも走る。
高齢者の足も担う。
観光地も住宅地も拾う。
そこまで求めるなら、相応の対価と待遇を用意しなければ続くわけがない。
それをせずに「最近のタクシーは来ない」と文句だけ言うのは、あまりに都合がよすぎます。
タクシーが減っているのは、やる気がないからではない。
サボっているからでもない。
やっても報われないからです。
クルマはあるのに動かせない。
その言葉の本当の意味は、
“人も金も足りない仕事に、もう限界が来ている”
ということです。
理解しろ、と思う。
金にならない仕事から人が消えるのは当然です。
それを無視して現場だけ責める社会のほうが、よほど無責任です。