読んでる皆さんは楽器を弾いたり、吹いたり経験はあるだろうか?

僕は中一の頃はチューバを中2から高3にかけてユーフォを吹いていた。

長年、同じ楽器をやり続けていると楽器に対して愛情だとか思い入れが強くなって、人によって異なるが、親友だと思う人もいれば、彼氏彼女だと思う人もいれば、お子さんだと思う人もいるだろう。

僕が中2から高3にかけて吹いていたユーフォは男子校で恋愛経験もなかった僕にとって彼女のような存在だった。

チューバからユーフォに転向したのかは昔の記事を見てください。

ユーフォに転向してばかりの時は僕の一方的な不器用な片思い。僕の技術が無いから、先輩が吹いていたみたいに綺麗な音を出してくれない。擦れるようなノイズのかかった音だった。綺麗な音が聞きたかった僕はそれを聞きたいから必死に練習しては録音した。

中2から中3の2月まではそんな音が続いていたが、春頃から音色が変わった。なんだこの音?ときめいた。優しくて、丸い音が出た。楽器の音は吹き手の感情によってだいぶ変わると思う。性格も音に現れると思う。

このフレーズは優しく、曲のその場面を理解して甘い音をじっくりと出す。激しい時は気持ちを高ぶらせて吹く。そういった感情に乗せて吹くと音もそういう音になる。

曲の際に持ち込んじゃいけないのは、他の感情。あいつウザかったなとか悲しかったなっていう気持ちを持ち込んだまま吹くと、音色がそうなってしまう。無機質で悲しげで、音量は出ていてもそんな音色になってしまう。逆も然りだ。恋愛などで浮ついた心の時、華やかで軽やかな曲の時は構わないが、しっとりと悲しい曲の時はこの感情はまるで邪魔になる。

少し話が横道にズレたがこのように、奏者は楽器と一心同体である。だからこそ、楽器に愛情が芽生える。その為、他人に楽器を吹かせてくれと言われると少し腹が立つのだ。毎回、吹かせてくれと言われた時は部室にある誰も使ってないユーフォを手入れして使わす。絶対に自分のは使わせたくなかった。さっきも言ったように彼女のようなものだ。

もし渡したとして大切に扱ってくれるのか?壊したらただじゃおかないぞとそう言う気持ちになるからこそ渡せない。

時折、自分の不手際で少し乱暴に扱ってしまう時がある。そんな時はすぐに怪我はしていないか?大丈夫かとすぐに点検を始める。

楽器は本当に繊細だ。少しでも傷がつけば、音質やら何やら全てが狂う。だからこそ紳士的で無ければならない。

特に一年目の僕はユーフォが一人しか居なくて、極限に追い込まれた。だからこそこのユーフォとは色んなことを乗り越えた。一年目なのにそんな時に限って、ユーフォのソロがあるような曲が並ぶ。先輩たちにおんぶに抱っこだった僕は腹を括る時が来ていた。どうにか、猛練習の末、その曲たちをこなした。

こうして銀の恋人としばらくの月日をこなした。そして高校三年生の5月。コンクールをやるか、コンサートをやるかの戦いの末、コンサートをやる事になった。このコンサートは現役としては最後のコンサートだ。その曲目を選ぶ際、僕は選ばれることは無いだろうがやってみたいなという意志でユーフォニウム協奏曲ユーレイズミーアップを候補に挙げた。

すると同期を含め、後輩たちもユーレイズミーアップに多くの手が上がった。信じられない光景だった。嬉しさは勿論あったが不安もあった。協奏曲だ、僕が一人で立ってメイン部分を吹き続け、他のみんなは伴奏や裏メロなど支える部分に入る。緊張は並大抵のものでは無い。またミスをすればすぐにお客さんにバレて誤魔化しも効かない。

そうして僕はユーレイズミーアップとの戦いが始まった。一音一音に感情を乗せて、綺麗な響きのある音を心掛ける。一応一人で通すことはできるようになったが、合奏の時になるとやはり周りがいるという環境の変化がプレッシャーを生む。ソロは何個もこなして来たが、やはりすごいプレッシャーだ。ミスが続いたが止まれば、曲も止まる。止まるわけには行かない、通すと。ミスはしたけど、頑張ったなと顧問から褒めてくれた。

でも、ダメだ。まだ完成できてない。恋人を活動が終わった後も吹き続ける。そして、コンサートの日。ノーミスで完成させた時は安堵と学校の借り物である、この恋人とお別れをするという寂しさが一斉に来た。僕はその日家に帰ると、銀の恋人を後輩に渡さなきゃいけない気持ちが少し辛くて、なんとも言えない気持ちになった。

後日、ただ一人の後輩いや愛弟子には、大切に扱うように、心を込めて吹き込むように伝えて、継承した。卒業の送別会の日。僕は同期とレミオロメンの3月9日を吹いたのかな。涙は溢さなかったが、後輩が気を利かせてくれて久々に吹いた、銀の恋人に感情が溢れた。受験期を経て、肺活量は落ち、唇の耐久力も落ちたが一生懸命に吹くことを心がけた。

今は大学二年生になり、前に書いた記事のようにお笑いや落語などをやっているが、定期的に銀の恋人を吹きたくなる。今も吹きたいなぁ。

文化祭などに顔を出すと、愛弟子も大切に扱ってくれて居た。どこかむず痒い気持ちもあるのだが、結構、無機質な演奏だった彼は感情豊かな演奏になって居た。

楽器というのは良いものだ。楽器を演奏した事がない人も、何かやってみるといいと思う。それはとてもいい経験になって、自分の疲れた心に良い影響を与えると思う。