セルボ・モード | しろグ

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私が26歳で関西より鳥取国の実家に戻り、免許を取った後、最初に買った車。

余りお金がなくて帰ってきて、とにかく車がないと仕事にも行けないし生活できないので、取りあえず親に借金をして買ったのが軽自動車というのは必然であり、それ以上に、将来ポルシェに乗るための訓練としてマニュアル車を探し当てたのも必然である。

そこで見つけたのがスズキのセルボ・モード。排気量は堂々の660cc。5速ミッションで、エアコン付き。CDデッキなどなく、当然のようにカセットデッキ。カーナビというものは見たこともなく、ETCなど形もなかった。スピードメーターにタコメーターは当たり前で、2ドア仕様。必要なもの以外ついていないというのだから、ポルシェに近い。走行距離は既に85,000キロ超という気合いの入りようで、いつ止まってもおかしくない。ライトはバイクでも車でも丸がいいと決めているが、これは四角……これは妥協するしかなかった。そして、来るべくポルシェ時代に備えて、セルボ・モードをポルシェ・モードと改めたのは言うまでもない。

Landscape and portrait ver. 2

この車でどこでも走った。砂浜を走った時は、不意のブレーキでタイヤが埋まってしまい、再発進が出来ず、なぜなのか積んであったスコップで掘り出して脱出。パリ・ダカールラリーの困難さを想像して感慨に耽ったものである。大雪の峠では調子に乗りすぎてくるくる回りかけた。注意1秒ケガ一生を体験しかけた瞬間だった。スキー場に辿る坂道ではタイヤが空転しがちで前に思うように進めず、FFの軽自動車の非力さを思い知る。真夏でエアコンをかけるとエンジンの出力が一気に下がって難渋し、真冬だと目的地に着く直前に暖かい空気が出てきて悲哀に沈むなど、660cc エンジンの性能を見せつけられた。

純正マフラーに穴が空いたことがあった。その時点で既に110,000キロくらい走っていて、どこがどうイカれてもおかしくなかったのだが、エンジンやブレーキではなくマフラーというところが運が良かったのだろう。とはいえ、我が愛するポルシェ・モードは全然走らなくなり、特に上り坂ではアクセルを踏めども踏めどもうまく前に進んでくれない。そういう時に限って、やる気まんまんの大型タンクローリーが後ろに来るので困る。

ほぼ4年乗り倒して、走行距離も140,000キロを超えなんとしていたポルシェ・モードだが、わたくしが東京に出ると決まった際に手放した。上京後に親に頼んで廃車にしてもらったので、“死に目”にも会えなかったことになる。非常に残念である。せめてハンドルでも残しておけばよかったと後悔することしきりだが、後の祭り。

ところで、“来るべきポルシェ時代”とやらだが、本格的なものはまだ来ていない。
どうしてなのか、不思議で仕方がない。