港町また地場産業の染色で有名な横浜を舞台にバブル崩壊の波に翻弄されたある達人の話

「ほれっ、ケイジッ、のりを10キロ作っとけよ」

「納期が無いからグヅグヅすんじゃねーぞ」

そう、さっきからがなり声を上げているのが但馬のオヤッサン、俺の師匠である。

納期の短いバンダナの仕事が入ってかなり血圧が上がっている。

但馬プリントは横浜の井土ヶ谷で主にハンカチーフ・バンダナなど布製品の染色工場で但馬社長の他に奥さんと長男の一生君、繁さん、菊さん、美っちゃん、本間さんと俺、

前田慶次郎の8人で運営している。

折りしもあのバブル崩壊の波がひたひたと忍びよっていた・・・。

「社長ッ、のり10キロって、なんでしたっけ」

「バカヤローッ、のりもしらねーのかオメーは」

「バカヤローッて、俺、まだ教えてもらってないですから」

「って、このやろー、仕事ってーのは教えてもらうもんじゃーねー、盗むもんだ」

「ったく、しょーがねーな、納期がねーから今回だけは教えてやっから」

「一回こっきりだぞ」

「いいか、のりってぇのは染料を生地に染色する時に・・・。」

「・・あぁーだめだっ、繁さんたのまー」

血圧が上がってイライラの頂点にいる社長は熟練の繁さんにタッチした。《…続く》
 時として、バンダナ製作の依頼主から無理な注文を付けられる。  それは、…「実は先日頼んだデザイン、うちのデザイナーがレイアウトをいじるなって言ってるんです」「そのままプリントしろって言ってるんです。」…担当者が困り果てた様子で嘆いている。  依頼してきたデザインのロゴの文字が細か過ぎて印刷出来ないからだ!            先方のデザイナーがバンダナの生地に対して印刷有効範囲の知識が乏しいこともあってよくある光景だ。        滑らかな表面の紙の印刷と違い生地の場合は糸を織った繊維状になっている為、印刷時に染料が糸の吸水性と相俟って滲むので実際の寸法より若干大きくなる性質がある。こういった特製を知らないと後で後悔することになる。《…続く》
私の仕事はいわゆるデザイナー。バンダナやハンカチ、Tシャツなどのデザインを手掛けいる! もっぱら、クライアントから支給されるデータの手直しが多いいが…。そのままでは版下として使えない場合があるので私の出番がやってくる! 印刷する段階で細かい柄や文字、細い線など印刷出来ない部分を全体のレイアウトを極力変えず直していく。 これは主に.アドビのイラストレーターやフォトショップなどのソフトを使ってパソコンで修正する。 まーこれが仕事だが、なかなか面白い。根気が必要な細かい作業ではあるが、印刷可能な範囲でギリギリ細かく、コンマ何mmの世界で格闘するのだ。《…続く》