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中小企業診断士 山崎勝雄の部屋

新潟県長岡市を中心に活動する中小企業診断士です。
長岡の自然や生活、診断士としての目線で思うままに書いていきます。
よろしく!

帝国データバンク様の帝国ニュースに投稿したものを掲載します。

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 「働き方改革」という旗印の元に生産性向上が叫ばれ、AI活用を含めたIT化の導入に関する補助金がたくさん出ています。

 私は中小企業診断士として独立する以前、IT業界におりましてクライアント企業様にIT導入を勧めていた立場でした。しかしながら、診断士として中小企業様と接していると、IT導入が経営として効果を発揮しているとは思えない事例をたくさん見ることになりました。いくつかの例を上げてみます。

(1)   会計的な知識不足で逆効果になっているケース

製造業様で原価管理システムの例です。原価管理システムから出される受注毎の製造原価データとして、材料費と外注費、社内工数を合計した全部原価だけが出力されており、幹部の方は「原価率が悪い」とお話をされていました。では「原価低減としてどんな活動を進めておられますか?」と質問すると、「社内の工賃が高いので安い外注を使うようにしている」との回答でした。

決算書を見ると、社内固定費は変わらないのに外注費が増加しており、かえって利益が出にくい状態になっていました。そのため、「受注単位での材料費と外注費のような変動費だけを抜き出すことはできませんか?」と質問しましたが、導入した原価管理システムからは容易に出ないことがわかりました。

(2)   会計的な知識不足で活動の方向性が誤っているケース

前項と同様に小規模製造業の原価管理システムの事例です。受注案件毎にかなり詳細な原価データを収集しており、そのデータをステムに入力するためにパートさんを0.5/月で採用されていました。決算書を見ると明らかに総受注量が不足しているのですが、社長さんは「まだまだ原価低減が必要だ」とお考えになっていました。そうは言いながらも原価管理システムのデータはほとんど見ておられず、その上、肝心な営業行為に目が向いていない状態でした。

(3)   せっかくの情報を生かしていないケース

卸業や小売業では販売管理システムが導入しているところが多くあります。「どの商品やカテゴリで売上と粗利が取れていますか? また過去数年でどんな傾向ですか?」と質問することが多いですが、システムからすぐ出せる企業様はほとんどいらっしゃいません。売上は分かっても粗利がわかるケースはかなり少ないです。

(4)   社内のオペレーションがついてこないケース

多くの業種で在庫管理システムを使っておられますが、実際の在庫数とシステム上の在庫数がかなり乖離している企業様もかなりあります。システムに情報を入れないでモノだけを動かしてしまう、或いは、動かした後、まとめてシステムに入れるためその間はアテにならないなど現場の運用がついてこないなど現場がついてこないケースを多く見かけます。

 現在のITシステムは万能機械ではなく、あくまでも「道具」です(巷で話題のAI(ディープラーニング)も同じく万能ではないです)。「道具」は使う人により効果が出る場合もありますが、使い方を間違うと逆効果になることも有るのです。正しい知識の元に「目的と目標」を明確にし、組織内で正しく使える環境が揃って初めて効果を出すことを導入前にチェックすることをお勧めいたします。

 少し古くなるが、「てるみくらぶ」なる旅行者が破綻した。
 個人的には旅行している余裕もないので被害に合ったわけ
ではないが、報道を見ていて違和感があった。

 資金が回っていない事は、金融筋も、会計を見ていた税理士か
会計士かどちらかが、ある程度は知っていたはず。
 粉飾をしていたと言っても、全く気づかないはずがない。

 http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170405_01.html
にレポートが有るが、やはり信用調査機関は確実に認識していた
事がうかがえる。

 分かっていても誰が鈴をつけるのか・・。

 金融筋は、自分から「やめなさい」と言えば、他の顧客から
厳しい目線で見られるので言い出ににくい。
 会計士や税理士は気づいたとしても、独自に公表する訳には
いかない。
 金融筋や、会計士(または税理士)がどれだけ経営者を説得したか
までは全く見えないが、良い解釈をすれば「言っても経営者が聞かなかった」ということであろう。
 最悪のケースは、顧客から見放されたくなくて一緒に粉飾に参加していたなんて結論もあり得る。
(あくまでも可能性も問題であり、てるみくらぶの 担当がそうだったとは言っていない)

 経営者が「絶対にやめない」と言い張った場合、「てるみくらぶ」の
ような結末になると分かっていても周りのステークホルダーの最終行動は「ほったらかす」しかなくなる。

 中小企業においても、同じような事例は多々ある。
 
 金融筋が「ほったらかす」ケース、
 金融筋は分かっていても言い出せないケース
 会計関係者が経営者と一緒になって粉飾するケース
 関係者が分かっていても「ほったらかす」しかないケース

 私の立場は支援者の立場ではあるが、貸付金があるわけでもないし、その顧客から支援を断られても困る立場でも無いのである意味ストレートに言いやすい立場にある。
 きちんと現状を伝え、未来の計画案を模索しながらも、未来が描けな
い場合は、経営者に「鈴をつける」役割ではないかと思うことも多い。

 とは言え最後の決断は経営者自身がする以外にはないので
「それでもやりたいのです」と言われると辛い・・・。
 

 政府の経済対策として「ものづくり補助金」など様々な
補助金があることはご存知のことだろう。
 補助金申請のための支援は個人の仕事としては受けない
が、公的機関からの依頼で支援をせざるを得ないケースが
多々あるが申請の支援の中で思うことを書いてみたい。

(1)そもそも設備投資がいるの?
  補助金があるから、古い設備を入れ替えたいといった
  動機の申請がかなりあるのも事実である。
  いくら補助金があるにしても、全額それで賄えるわけ
  では無いのだから、それなりに投資対効果の評価が必要
  になるが、この辺りを正しく評価しているとは思えない
  事例が散見される。

(2)投資対効果の評価は正しい?
  「○◯の設備を入れると、工数が◎%削減されるので
   効果がある」という評価がほとんどである。
   しかし、原価低減すれば必ず利益が増加するという
  妄想は、誤った理解であるのだが、かなり広く信じられてい
  る事がよく分かる。
   原価低減が利益に直結するには、様々な条件が満足
  されないといけないがそれを理解している事業者は少
  ない。
   
 正しい知識を持たないまま投資を行うことがどんなに危険か
を各支援機関は正しく企業に説明する事が必要なんだろうと思う
が、各種支援機関も怪しくないだろうか?
 
京セラ 稲盛さんの言葉に
 「考え方×熱意×能力」
という言葉があるが、
 考え方が間違っている(マイナス)とどんなに頑張っても
マイナスの答えしか出なくなる。
 事業者の皆様、ご注意あれ。