昔々、ある山奥に太郎という男の子がいました。太郎の友達は動物です。

太郎は毎日動物たちと相撲を取りました。

 

「ハッケヨイ、ノコッタ!」

 

太郎はとても強い男の子で山で一番相撲が強いです。クマにだって負けません。

 

「おりゃー!」

 

太郎はクマをふっ飛ばします。

 

「降参だ。太郎は強いな。」

 

いつもこんな調子でクマは負けてしまいます。

 

「太郎、なんでそんなに強いの?」

 

ウサギが聞きました。

 

「それは都一強い男の血が入っているからさ。」

 

太郎のお父さんは都で一番の怪力持ちで知られる男でした。男は若い頃、女との間に子供を作ります。しかし男は都を守る勤めがあるため、女と子供を山の小さな家に残し、都へ去ってしまいました。太郎はそれでも父への憧れから立派な人間になろうと努めてきました。

 

そんな太郎は強いだけでなく優しい人間でもあります。

 

ある日、太郎が山中を歩いていると動物たちが困っていました。

 

「どうしよう?橋が流されてしまって、向こう側へ行けないよ。」

 

「よし、僕に任せろ。」

 

太郎は近くに生えている大きな木を見つけると、

 

「これが丁度いい。」

 

と、いって、その大きな木に体当たりをしました。すると木は倒れ、谷にかかり、一本の橋になりました。

 

「ありがとう太郎。」

 

動物たちは太郎に感謝しながら崖の向こう側に向かいました。

 

そんなある時、山を侍が通りかかりました。侍たちはクマと相撲をする太郎を見てたまげました。

 

「これは是非ともお手合わせ願いたい。」

 

侍たちは太郎に相撲の勝負を申し出ました。侍たちは皆体が細く、クマにも勝てる太郎は内心余裕を感じていました。

 

しかしいざ相撲を取ってみると、お侍たちは太郎がどんなに力を入れてもビクともせず、逆に太郎が簡単に投げ飛ばされてしまいました。

 

太郎は驚きました。侍はクマに比べたら体も小さく、普段なら相手にもならないはずです。

 

「いやいや、クマと並ぶほどの怪力持ちと思って勝負してれば。」

 

侍は呆れた様子で太郎を見ました。

 

「なんでだ!」

 

太郎は悔しくてたまりません。家へ帰ってからも太郎は不機嫌でした。

 

「なんであんなヒョロヒョロに負けたんだ!」

 

母と食事をしている時も、太郎はブツブツ文句を垂れていました。

 

「!?」

 

すると突然母が胸を押さえながら倒れてしまいました。太郎は慌てて母に駆け寄ります。

 

「母さん!どうしたんだ!」

 

「ごめん太郎。お母さんどうやら疲れちゃったみたい。ちょっと休めば治るから悪いが横にさせておくれ。」

 

「疲れたなんてもんじゃないでしょ!胸までおさえて、絶対何かの病気だ。都へ行こう。」

 

「そうは言ってもうちにはお金がないじゃないか。それに都もお母さん一度も行ったことないから場所がわからないよ。」

 

「そんなもん、俺が都でいくらでも稼いでやる!都へはさっきの侍に連れて行ってもらおう。」

 

そう言って太郎は家を飛び出し、侍を探しに行きました。しかしあたりを探してもどこにも侍はいません。太郎は困ってしまいました。

(このままじゃお母さんがやばい。)

 

太郎がそんな不安に駆られていると、後ろからクマがやってきました。太郎が事の次第を話すと

 

「侍なら向こうの〇〇庵にいたよ。」

 

とクマが教えてくれました。太郎はクマに礼を言うと急いで〇〇庵に向かいました。クマの助言通り、〇〇庵には侍がいました。

 

「おや、お前は先ほどの坊主。なんだ、また相撲を取りたいのか?」

 

「違う!俺と母を都へ連れていってほしいのだ!」

 

「なんでそんなことしなきゃいけないんだ。」

 

「母を助けなければいけないんだ。」

 

「そんなもん、その辺の医者に頼めばいいだろう。」

 

「ダメだ、都へ行かないともう母は治らない。」

 

「なぜそんなことが言える?病気なのはお前ではなく母だろ?」

 

「わかるんだ。もうここでは無理なんだ。頼む、連れて行ってくれ。」

 

太郎は真剣な眼差しで侍に頼みました。

 

 

「よし、わかった。連れて行ってやろう。しかし、都の医者は高いぞ。」

 

「わかっている。俺がなんとか稼いでやる。」

 

こうして太郎と太郎の母は、侍に連れられ都の病院へ行きました。病院につくと早速母は入院することになり、太郎は侍に連れられ、お金を稼ぐため相撲場へと向かいました。

 

都には多くの人間が暮らしていました。

 

「ここには同じ名前なんてざらにいる。それこそお前さんの『太郎』なんて名前なんか、そこら中にいるわ。」

 

太郎は黙って侍の話を聞いていました。

 

「ほれ、そこが相撲場だ。せいぜいうまくやれよ。」

 

侍はそう言うと何処かへ去って行きました。太郎は入り口でエントリーを済ますと、早速試合に出ることになりました。相手は自分と同じような少年。賞金500円をかけた太郎にとって人生初の賞金稼ぎです。

 

しかし相手の力は強く、太郎は簡単に倒されてしまいました。

 

太郎は落ち込みながら母の待つ病院に帰ると、母が編み物をしていました。

 

「お母さん、何をしているんだ。」

 

「何ってお仕事だよ。こうして作った編み物を売れば少しは医療費の足しになるだろう。」

 

太郎は自分が情けなくなりました。

 

それから太郎は必死に稽古を積みました。メキメキ成長し、次第に相撲にも勝つようになりました。そして溜まったお金でお母さんの借金を返すことができました。

 

いつしか太郎はいくつもの大会で優勝するまでになり、人々は金賞や、賞金から『金』と言う文字をとって太郎を『金太郎』と呼ぶようになりました。

 

しかし太郎は相変わらず自分のことを『太郎』と呼びました。