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Letters unread

あとちょっとだけ眠ったら 僕ら無傷でまた明日に行ける

毎朝ブラインドをあけると目に入るハイビスカスの鉢、田舎の母親が上京してきたときに持ってきた。

僕は植物を育てられない。

アパートのベランダに鉢植えを置いたことは何度かある。

元恋人が持ってきたミニトマトとか、職場を変わるときに同僚からもらったカモミールとか

(なんで男の僕にハーブをくれたんだろうか、ナゾだ)

 

でも、だいたい枯らしてしまう。なぜかは分からない。水もやっているし、太陽にもあてているのに。

 

僕の人徳が足りないせいなのか。そんなわけはないのだけれど、そんなふうに思えてしかたない。

そのくらい、植物はみんな枯れる。

 

ハイビスカスも、母親が帰ってから何週間も、花を咲かせる気配すらなかった。

それでも、僕は水をやり続けた。

ジンクスを破るためか、惰性か、命に対する義務感か、なにかで。

 

今朝ブラインドを開けたら、急に赤い花弁が目に飛び込んできた。

ささやかな小さな花だが、ハイビスカスが咲いた。

 

ハイビスカスの赤は明快な赤だ。子供がクレヨンで塗ったかのように。

その色がとても似合った人を思い出す。

 

花が咲いてよかった。