褒めた言動は継続し、叱った言動は打ち消してしまう
皆さんの周りにこんな人はいるでしょうか。
「私褒められたら伸びるタイプです」
「褒められてもどう対応して良いか分からないんですよね。本当に思っているのかって疑ってしまうし」
このように一口に褒めると言っても、人によって受け取り方が多種多様なようです。
このことからマネジメントを行う上でも、特に意識することなく感情に任せるままに「褒める」と「叱る」を使用するリーダーは多いです。
ただ、集団をマネジメントする上で重要な「風土」を作っていく中で、褒めると叱るを使い分けられると非常に効果を発揮します。次の例を見てください。
もしあなたがリーダーで、社長から新規プロジェクトを任された場面があるとします。そこであなたは、自分の事業部から一緒に取り組んでくれる部下を募りたいと仮定します。
なぜなら自分のプロジェクトで成果を出せたら、同時にその部下の評価も上がるはずだから、あなたは自分の事業部のメンバーにチャンスを与えたいと考えます。
メンバーの前で意気揚々と新規プロジェクトの意義や社長の肝入りである点、成果を得た後のメリット等を説明後、いよいよ部下が手を挙げる間を取ったとします。そこで部下から挙がった声は意外なものでした。
「今進行中の事案が手一杯で手が出せません」
「もちろん手を挙げたいところなんですけど、自信がありません」
このような場面になった場合、あなたならどうするでしょうか。
1、あきらめて他の事業部に募りにいく
2、このような時に手を挙げられずに、どうやって成長の機会をつかんでいくんだと激を飛ばす
3、この場は初出しの情報だったから、一旦、その場はよく考えておくようにと伝え、次回のミーティングまでに事前に期待する部下に手を挙げてみるよう話しておく
1は結果として、自分の部下にチャンスを与えられないので論外として2と3はいかがでしょうか。
褒めると叱ることの効果について、特に信念がない多くのリーダーは2を選択してしまいます。
激を飛ばすと言うと聞こえはいいですが、なぜこういうときに手を挙げないんだ、向上心を持てないのだという気持ちからイライラした感情が伝わってきます。
激を飛ばして無理矢理手を挙げさせた仕事は成果もついてこず、下手したら後々の退職の真因になりかねません。
この場合は3を選択するしかありません。しかし、3も妥協案です。ベストは言うまでもなく、最初に発信したときに多くの部下から手が挙がることです。ではどのようにしてそのような風土を作れば良いのでしょうか。
専門学校の現場でも、意欲も能力もばらばらなクラスのマネジメントを行う上で、前述のように誰も手を挙げない空気ができるクラスと、多くの生徒が手を挙げて立候補者が多数出るクラスが存在します。
謝恩会の実行委員を募集したときに、一切手が挙がらないときの教室の空気や、平気なフリして薄ら笑いを浮かべている自分の情けないことこの上ない姿、そして今すぐその場から逃げ出したい思いを今でも覚えています。
手が挙がるクラスと挙がらないクラスの差に、どうやら先程のプロジェクトの例をクリアするヒントがありそうです。
新しいことに挑戦する風土ができているクラスは、実は普段の些細な機会でも手を挙げることに対して集団の前でリーダー(担任)がその姿勢を褒めているのです。
清掃係のリーダー、号令係、授業中に手を挙げる姿勢、行事の実行委員など、生徒が勇気を出して一歩踏み出すことに対して、担任がクラス皆の前で全力で褒めます。
そうすると、挑戦することは素晴らしいことだという空気がクラスの中に出来上がります。クラスの掲示物として「日々挑戦」などと目標を掲げなくても挑戦するクラスが出来上がるのです。
「褒められた言動を人は継続する」という特性をうまく活用しているのです。
先程の事業部の例で言えば、社長の肝入りのプロジェクトを任される前に、普段のちょっとした機会に積極的な姿勢を示した部下を皆の前でしっかりと褒めていれば、自然と手が挙がる風土ができていたはずです。
他の要因として、リーダーであるあなた自身が普段から挑戦する喜びを背中で見せているかという点も外せないのですが、今回の主旨から話がそれてしまうので、別の章で紹介することとします。
では、褒めるべき行動を起こさない相手に対して叱ってしまうとどうなるのでしょうか。
「ここで手を挙げられないと、社会で通用しないぞ」
これは焚きつけているつもりで、ますます手を挙げにくくします。または、怒られるのがいやでいやいや手を挙げるか、どちらかです。それは、叱るという言葉が持つ効果がそうさせます。
叱られた言動は打ち消す、または刹那的な奮起を促し、その後結局打ち消す
この特性を説明する上で、実際に僕が体験した事例を紹介します。専門学校ももちろん私学の学校法人なので、利益を出さないと閉校に追い込まれてしまいます。
専門学校で利益を上げるということは、多くの人に入学してもらうことです。そのためには集客と歩留まりの2点が影響します。
学校に足を運んでくれた入学希望者の集客に成功し、学校の雰囲気を掴んでもらったら、その後1カ月以上の間を置かずに再度来校いただけるようにコンタクトを取れると他校に入学してしまう懸念を減らすことができます。
この後追いの連絡は、日々の生徒対応、授業準備、行事等の校務の資料作成等、日常業務に追われると疎かになりがちです。
特に生徒対応は、目の前の生徒が苦しんでいたら急遽でも面談時間を設けます。教員はそもそも教育がしたい人が多いので、教務を優先しがちになります。
自然と広報にかける時間は減らされていくことになるのです。そこでマネジャーが奮起を促すために会議の場で、教務を優先しがちなメンバーに対し叱りつけるとどうなるでしょうか。
叱られた会議日の翌日から1週間ほどは、入学希望者に対して電話掛けを始めます。動機は怒られたくないからです。
ただし、そんなときマネジャーが出張で不在になると、途端に誰もやらなくなり、元の教務を優先する事業部に戻るのです。叱るという行為は刹那的には奮起を促すが、結局行動を打ち消すことになります。
しかし、叱るという行為を否定したいわけではありません。叱るという行為の特性を理解していると、適切な場面があることが分かります。打ち消したい行為には使用しても良いからです。
例えば、マネジャーであるあなた自身が話しているのに、メンバーが横にいるメンバーとコソコソと話す、人が話している時の聴く姿勢としてはふさわしくありません。そういった行動は打ち消すために皆の前で指摘して良いのです。
この節のまとめとしては、あなたが増やしたい言動は褒め、打ち消したい言動は叱ってください。この特性を意識的に活用すれば、あなたが思い描く事業部の風土は形成できます。
アクション11
前節で理解した事業部の風土を作る上で、褒めることと叱ることを意識的に使い分けましょう