【参考文献】
「人を動かす」
D・カーネギー 著 山口 博 訳
昭和３３年 第一版 第一刷発行
第二部 人に好かれる法六
第５章 関心のありかを
見抜く
オイスターベイの邸に
セオドア・ルーズベルトを訪ねた者は、
だれでも彼の博学ぶりに驚かされた。
「ルーズベルトは、相手がカウボーイ
であろうと義勇騎兵隊員であろうと、
あるいはまた、政治屋、外交官、
その他だれであろうと、
その人に適した
話題を豊富に持ち合わせていた」
ガマリエル・ブラッドフォードの
文句であるが、では、どうして
そういう芸当ができたか、
種を明かせば簡単だ。
ルーズベルトは、だれか
訪ねてくる人があるとわかれば、
その人の特に好きそうな問題に
ついて、前の晩に遅くまで
かかって研究しておいたのである。
ルーズベルトも、他の指導者たちと
同じように、人の心をとらえる
近道は、相手が最も深い関心を
持っている問題を話題にすること
だと知っていたのだ。
ニューヨーク一流の製パン会社
デュヴァノイ商会の
ヘンリー・G・デュヴァノイ氏の
場合を取りあげてみよう。
デュヴァノイ氏は以前から
ニューヨークのあるホテルに
自社のパンを売りこもうと
やっきになっていた。
４年間毎週支配人のもとへ
足をはこびつづけた。
支配人の出席する会合にも
同席した。
そのホテルの客となって
逗留もしてみたが、
それもダメだった。
デュヴァノイ氏は、その時の努力を
こう述べている。
「そこで、私は、人間関係の研究を
しました。
そして、戦術を立て直しました。
この男は何に関心を持っているか、
つまり、
どういうことに熱を入れているかを
調べはじめたのです」
「その結果、彼は
アメリカ・ホテル協会の会員
であることがわかりました。
それもただ会員で
あるばかりでなく、
熱心さを買われて、
その協会の会長になり、
国際ホテル協会の会長も
兼ねていました。
協会の大会がどこで開かれようと、
飛行機に乗って
野越え山越え海越えて出席する
という熱の入れ方です。
そこで、私は次の日彼に会って、
協会の話をもち出しました。
反応はすばらしいものでした。
彼は目をかがやかせて３０分ばかり
協会のことを話していました。
協会を育てることは、彼にとって
無上の楽しみであり、
情熱の源になっているらしいのです。
そのうちに、彼は、私にも
入会をすすめにかかりました。
「彼と話してる間、私は、
パンのことはおくびにも
出しませんでした。
ところが数日後、ホテルの
用度係から電話があって、
私にパンの見本と値段表を
もってくるようにとのことです。
ホテルに着くと、
用度係が『あなたはどんな手を
使ったのか知らないが、
うちのおやじは、ばかに
あなたのことが気に入った
らしいですよ』と私に
話しかけました」
「考えてもみてください。
あの男と取引したいばかりに、
４年間も尻を追いまわして
いたのです。
もし、あの男が何に関心を
もっているか、
どんな話題をよろこぶかを
見つけだす手数を
省いていたとしたら、
私はいまだに彼を
追いまわしていることでしょう」
ゆえに、
人に好かれる法の第五
ー相手が関心をもって
いることを見抜いて
話題にすること。
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