一部の方の間で人気のあるミネラル、ケイ素。
別名シリカ。元素記号『Si』。
英語では 英語ではシリコン(Silicon)と呼ばれます。

 

コラーゲン合成・美肌に繋がるとか、松果体の石灰化を防ぎ不眠の改善や第六感の覚醒に繋がるなど、怪しい噂があるケイ素について、私なりに調べてみました。

ネットの噂に影響されて高額なサプリを購入する前に読んで頂ければと思います。

平成11と少し古い資料になりますが、ケイ素の生物学という論文から。
・シリカ微粒子を吸い込むと、ケイ肺症やアスベスト症を発症するおそれがある

・イランに食道がんが多発する地域があり、原因はパンに交じるクサヨシ属のケイ酸質の毛だと考えられている。
・ケイ酸質の毛は実験でハツカネズミの皮膚に皮膚がんを発症させた
・サトウキビの収穫の際に同じようにシリカ繊維を吸い込みアスベスト症の様な症状を引き起こす。
・ヒトの血液には2ppm程度のケイ素が含まれ、摂取量が増えると尿中排泄量が増える。
・個体シリカは有害事象のみだが、吸収されたケイ酸は脊椎動物の骨格形成に必要とされている。
・完全にケイ素をシャットダウンした環境でニワトリの雛を育てると骨格の形成不全が起き発育が悪く頭蓋骨に奇形が見られた。(ケイ素を完全にシャットダウンするという特殊な状況である点に注意)
・ケイ酸の欠如のよって軟骨のグリコサミノグリカンの含有量が減少し、膠原線維のコラーゲン含有量も減少する。
・造骨細胞のミトコンドリアにはカルシウムとケイ素が集積している。

http://www.jcam-agri.co.jp/book/data/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E3%81%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%201999.05%E6%9C%88/1999%E5%B9%B405%E6%9C%88%E5%8F%B7_%E9%AB%98%E6%A9%8B%E8%8B%B1%E4%B8%80_%E3%82%B1%E3%82%A4%E7%B4%A0%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6%E2%80%955%E2%80%95.pdf

ここからわかるのは、微粒子のケイ素は危険。水に溶けているケイ素は骨やコラーゲン合成に必要な可能性がある。とのことです。

いくつかの論文からケイ素の必要性が見て取れますが、厚生労働省の定める微量元素の中にはケイ素は含まれていません。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンを多量ミネラル、
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンを微量ミネラル
として、基準を設定しています。

とされています。

分子栄養学の根拠となる、生化学という学問では、身体の各反応に必要な物質の特定がされています。
例えば、コラーゲン合成にはビタミンC、鉄、たんぱく質が必要とされていて、ケイ素は含まれていません。

ケイ素が、どの部位の反応で必要となるかが判明していないことが、摂取量が定められていない理由かもしれません。

必要な栄養素として認知されていないので、目標摂取量を国は定めていません。

現在考えられるのは
・健康なヒトが通常の食事からの摂取で過剰症になることは考えにくい。
・欠乏症は存在する可能性があるが、普通に生活していて不足するかは不明。
・サプリメントなどで長期摂取すると腎結石、腎障害を起こす可能性がある。
・腎機能・肝機能が低下している場合の積極的な摂取には注意が必要。

ということです。

では、分子栄養学的にケイ素が欠乏しやすい状況を考えます。
食物から摂取したケイ素は胃酸の塩酸で溶かされ吸収できる形態になるので、胃酸分泌が低下していると欠乏しやすいかもしれません。
副腎疲労・低血糖などのエネルギー低下状態や、減塩により胃酸を構成する塩酸(HCL)に必要な塩素(CL)の欠乏もケイ素の欠乏を招く可能性があります。
もし胃酸が不足している場合、塩酸ベタインなどのサプリで補うと食事中のケイ素を効率的に摂取できる可能性があります。

胃酸が不足している場合、たんぱく質の吸収がしにくくなるので、血液検査ではアルブミンの数値や赤血球の数値が下がる可能性があります。血液検査でこのような傾向のある人もケイ素が不足しやすいのかもしれません。

また、原因はわかりませんが、摂取する食品の植物の種類によってケイ素の吸収率は変わるとされています。
植物中の何らかの成分や、その食品に特有の調理法が関係しているのかもしれません。
緑豆や玄米を調理したものは吸収率が高いそうです。
こちらの論文ではケイ素が豊富な食物と、その吸収率や、ケイ素の摂取で骨密度が上がることが書かれています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/brte/20/4/20_263/_pdf/-char/ja

 


低たんぱくや貧血など、分子栄養学に興味を持つ方の特徴的な状態でケイ素が欠乏しやすいというのは、興味深いことです。
一時的に積極的にケイ素を摂取して何かしらの症状が改善する方は、もしかしたら分子栄養学を実践して、体調が整ったらケイ素を意識的に摂取しなくても上手に吸収できるようになるかもしれません。

逆の見方をすると、ケイ素の恩恵を感じてしまう方は、積極的にケイ素を摂取すれば大丈夫と思わず、身体全体を整えていく必要があるのかもしれません。

実はケイ素は水道水中にも多く含まれます。

不必要なのに高額なケイ素サプリで散財したり、
詐欺まがいのケイ素水には騙されないで頂きたいと思います。
お金をかけずに、最短で目指す健康を手に入れましょう。
▼全国の水道水のケイ素含有量マップ▼
 

 

*補足
スギナという植物にケイ素が多く含まれているということで、採集したり飲まれる方がいらっしゃいます。
先述したクサヨシ属やサトウキビのように、微粒子化されたケイ素による害が無いとは言えません。
健康法で癌になったという残念なことのないように気をつけましょう。

松果体の石灰化、メラトニン、脳砂については今後別のブログにまとめようと思います。