ICUで出会った忘れられないご家族
ICUで面会するためには、インターフォンで来訪を伝え、家族待合室で待つ決まりでした。
待合室にいると、顔見知りのご家族もできてきました。
忘れられないご家族がいます。
Tさん家族です。
ICUの息子のベットの隣のベットで小さな女の子の赤ちゃんが眠っていました。
ご両親は朝・昼・晩に必ず病院に来て、30分ほど面会して帰って行きました。
人工呼吸器をつけて眠り続ける女の子の前に二人で静かに座って、赤ちゃんが目を覚ますのをじっと待っていました。
日に日に元気になっていく息子、そして眠り続ける赤ちゃん。
私はTさん夫婦に声をかけることができませんでした。
ある日、Tさん夫婦が私に話しかけてくれました。
私が面会に来ていて疲れないかと気遣ってくれました。
Tさん夫婦は大変な状況にあるのに、他の人を気遣って、私は心をうたれました。
その後、息子は一般病棟に移り、Tさん家族と会えなくなりました。
退院間近のある日、売店でTさん夫婦に会いました。
挨拶をすると、いつもの笑顔で挨拶を返してくれました。
私はICUで見たTさん夫婦の後ろ姿を忘れることができません。