表の顔、裏の顔、どちらが本物で、どちらが偽物なのか
何が本物か、何が偽物かわからないように、
結局は当の本人もまた、わからないものである。


――――もう一人の私は、目覚めるのか――――



「ねむい・・・ん?夢?」

朝日が差し込む。

差し込む?そんな気がした。

まだ、夢を見ているのかもしれない...

「えーっと、今日は...白い私?黒い私?」

黒い私...いや、い...や....


…………


…………


「はっ!」
目が覚める。
なんか、不思議な夢を見ていたような気がするけれども...
まぁいっか。
気にしないことにした。
そのまま準備を済ませ、いつもよりおしゃれを決め、彼との待ち合わせ場所へ向かう

「今日も可愛いね。僕、この黒のワンピース好きだよ」
今日は彼とのデート。行先は、水族館。
いつもより、ちょっとおしゃれしてます!
「ありがとう~。私もこのワンピース好きなの~」
彼はよく私を褒めてくれる。嬉しい。

お昼になった。

「ちょっとお腹空いちゃったー」
甘え気味に言ってみる。
「僕も空いてきたなーどこいこっか?」

その時、やんちゃそうなこどもが通りかかった

「あぶない!」

目の前で転ぶ子供
手にはアイスクリーム
黒いワンピースにちょっとだけかかってしまった。

「あらあら大丈夫?」

気にはなるけれども、今は目の前の子供の安否だ。

「うえーん」

「これはこれは!大変なことに!ごめんなさい!」

母親らしき人が、追いついてきた。
もう一人の小さな赤ん坊を抱えている。
余裕はなさそう。

「本当にごめんなさい!クリーニング代、払わせてください」

必死に謝ってくれてる。でも、なんかこの親子に負担をさせたくないなぁ。

「いえいえ、全然目立たないですし、大丈夫ですよ」

「ちょうど、新しい服を買いに行くところだったんです。本当にお気になさらず」


そんなこんなで、その日のデートはショッピングがメインとなった。


…………


…………


「おい、麻美、お前は白馬さんと結婚することになる」

そう、唐突に告げられた。

すぐに彼からも突然連絡が来る。
「他に好きな人ができた。別れよう」

え?どういうこと?

彼からは、そのまま、音信不通。

まって、まって!どういうこと?

理解が追い付かない。


…………


…………


………

……





「はっ!」

目が覚めた。

そこには太郎がいる。

「あれ?」

「麻美ちゃんどうしたの?」
彼が心配そうに私を見ていた。



おかしいなぁ?なんか、恐ろしい夢を見ていたような...

私は、結局彼と別れさせられて...

ん?私この後の展開知ってる!


目の前で転ぶ子供

手にはアイスクリーム

"白い"ワンピースにちょっとだけかかってしまった。

あれ?今朝は黒いワンピースを着てきたような・・・?

そのまま予定通り、私たちは水族館へ来た。


…………


…………


…………


人は眠っている間にも、いくつもの選択を行っている。

今日も、昨日も、大切な分岐は夢の中で起きている。



...かもしれない。






――――数年後――――

「ねぇ太郎~」
「何?麻美~」

今日は日曜日。
特に予定もなく、お家でのんびり。

「幸せだね♪」
「どうしたの?唐突に?」
彼は笑顔で聞き返す。


「なんでもないっ」

 

 

 

私はお腹をさすり、我が子と一緒にアイスクリームを食べた。





end