「絶滅」と「根絶」
2021.06.23
ある工事の現場に「・・・重機災害の絶滅」との言葉を書いた横断幕が掲げられていることに気づいた私は、その表現に違和感を覚えた。「絶滅」より「根絶」の方がふさわしいのではないかと思ったのである。
広辞苑第7版を繙くと絶滅の項目の語釈として
①滅ぼし絶やすこと。絶え滅びること。
②ある分類群のすべての個体が消滅すること。→大量絶滅。
一方「根絶」の語釈として、根本からなくなるようにすること。ねだやし。根こそぎ。「飲酒運転を――する」と記述されている。
「ーーーが絶滅する」とは言うが、「---が根絶する」とは言わない。「絶滅」するという場合、絶滅の対象物は、当の絶滅するものそのものである。つまり絶滅するものが主語となっても、目的語として使うことに私は抵抗を覚える。
「根絶」の言葉を使うとき、「根絶」するそのものは、目的語とはなっても主語とはならない。「ーーーを根絶する」という文の主語は主に人間である。根絶にはその言葉を使う人間の意思が含まれるのではないだろうか。すなわち絶滅は自動詞として根絶は他動詞として使われるのではないか、と私は考えたのである。