自分の記憶を遡っていくと、その記憶の最も古い映画の記憶は、「ダンボ」や「白雪姫と7人の小人」、「シンデレラ」などのディズニーアニメがある。それと時期ははっきりしないが父に連れられて行った片岡千恵蔵、市川右衛門、丹下左膳シリーズの大友柳太郎、中村錦之助、美空ひばりが出ていた東映の時代劇。それが幼年期から小学校低学年の記憶。

 

 小学校に入ってからは2年で渋谷から世田谷に転居したのも関係しているのか、音楽と比べ余り映画の記憶に乏しい。その中でも今も記憶に際立っているのが、1歳上の姉と一緒に行った下北沢のオデオン座で観た「サウンド・オブ・ミュージック」(同じミュージカルの名作であのバーンシュタイン作曲という「」と併映)。これにはびっくりした。ミュージカルというのも余り観たことがなかったのと、音楽の素晴らしさと子守役のジュリー・アンドリュースの声と唄の素晴らしさにノックダウン。彼女は一時ぼくの女神であった。さっそくサウンド・トラックのレコードを買い、擦り切れるほど聴いていた。でも友達は「」の方がいいという。何かそこに大人の雰囲気を感じたりしたのを覚えている。

 

 次には記憶には乏しいのだけれど、デビッド・リーン監督「アラビアのロレンス」。これは高校1年生の時に、地理の担当の新左翼思想の先生がいて、その先生にこの映画を観た人いるか?と授業中にたずねられ、手を挙げたけど、どんなところを覚えていますか?といわれ、砂漠のアリ地獄みたいな場所で部下の兵が巻き込まれて死ぬところや、爆薬の信管を腹にはさみ、列車爆発しようとしたが、自分のミスで自爆してしまった兵のことか答えるとその先生は失望したらしく、もっと覚えているところはないか・・?といわれても、とっさに聴かれてもすぐに思い出せなくて、先生に申し訳ありませんという感じのやり取りがあったから思い出した位で・・。後年流行ったコリン・ウイリアムの「アウトサイダー」の本に出てくる最初の人物がアラビアのロレンスその人であることを知った。えいがの冒頭でイギリスに戻った主人公がマン島でバイクを爆走して事故にあってなくなるシーンがある。

 

 中学から高校1年までは、体育会系の部に所属していたぼくは、余り映画の思い出はないが、それでも「サウンド・オブ・・・」に勝るとも劣らない地位を得るのが「ドクトル・ジバゴ」これも長編で3時間を超すのかな?これにはまった!!

高校時代を経て、この映画にはぼくが憧れていた恋愛と革命の全部のエッセンスが詰まっていたと気付いた!!デビッド・リーン監督、オマー・シャリフとジュリー・クリティ。音楽も最高。自分のこれから進む道も影響を受けたのか?という映画。

 

高校時代には幸せにもアメリカンニューシネマ時代と遭遇する。「俺たちに明日はない」(この映画のフェイ・ダナウェイは最高である)、「俺たちには明日はない!」・・これはニューマンとレッドフォードの二人の役者の配妙とそれに絡むほんとに素敵な堅気の先生のキャサリン・ロスの三人、バート・バカラックの最高の音楽、映像の妙味(バカラックの「雨に濡れても」という曲をバックに、レッドフォードが自転車に乗っているところ)、最後のシーンで、傷を負いながら次にどこで仕事をしようか?などいうことを話しながら軍隊に包囲されている中に打って出る、二人のユーモアと楽観的な生き方に感動する。「卒業」や「真夜中のカウボーイ」はピンと来ず。「イージーライダー」とはしばらくたってから観た位。

 

いつ観たかは忘れたが、フランス・ヌーヴェルヴァーグのゴダールの「勝手にしやがれ」も観たが、今一ピンと来ず。「死刑台のエレベーター」に至っては音楽のマイルス・ディビスだけ聴いた。あっそうだ、忘れられない映画があった。「去年マリエンバードで」。強迫観念のような、ループを作ったかのような独語と情動強迫の画面が印象的であって忘れない。

 

高校時代以降4年の空白期には巣ごもりの時期もあり、外出しない時も多かったので、映画が欠落している時期。

これも男性二人と女性一人の「冒険者たち」(ジョアンナ・シムカスが超魅力的)。「スケアクロウ」も同時代には観ていなかったが、ジーン・ハックマンとアル・パチーノのコンビはとにかくいい、最高。最後に涙・・。

 

大学で地方生活。この頃に観た映画では圧倒的に印象に残っているのは「カッコーの巣の上で」。60年代初めのアメリカの州立精神病院が舞台。ジャック・ニコルソンの圧倒的な演技とそれに対立する白人の女性看護師長。品のある落ち着いた物腰で秩序を守ろうとする母性的な印象もするが、理知的に対処しようとする彼女にすごく魅力がある。結局彼女と主治医は彼を殺しはしなかったが、脳の外科手術で人間としては生きられなくしてしまう。地方TV の深夜番組で観た「仁義なき戦い」の凄惨さ。トラポルタの「サタデーナイト・フィバー」は笑えたし、ビージーズの音楽が良かった。

 

1981年に卒業し、東京に戻り仕事に就く。慣れない仕事は大変で、映画を観る余裕がない。

 

ぼくにとっての80年代は「インディジョーンズ」で始まる。本当にこのシリーズが好き。あと「バック・トウ・ザ・フューチャース」も大好き。どちらもお金をかけた、すごいエンターテイメントの名画。またうちのカミさんとデートで、今はなくなった国立の映画館で観た「アマデウス」、これも良かった・・。元々音楽好きであり、十分楽しめたが、後日プラハへ旅行に行った時にその街を舞台として作られたと聞いて納得。余談だがプラハにはジョン・レノンの落書きも残っていた。

 

レンタルビデオで観た「パリ・テキサス」、「E.T」「スタンド・バイ・ミー」、「ドライビングMissデイジー」ほのぼのとしたいい映画。「バグダッド・カフェ」主題歌が印象的で忘れられず、ストーリーも淡々としたリズムだが、奇抜でいい。「プラトーン」は観た時には余り印象になかったが、最近TVで放映されているのを観て感動した映画。

その80年代の末を飾るぼくの大好きな映画、いくつかのDVDを持っているがこの映画のDVD はぼくの宝。「エイミー」というめずらしいオーストラリアの映画。ドラマの着想が奇抜で面白く、精神病理の深い近所の役柄設定も絶妙で観ていて快感。ストーリーも本当に素晴らしくできた映画。忘れてはいけない郷愁をそそる名画「ニューシネマパラダイス」もあった。

 

90年代はすごい。まずP.ルコントの「髪結いの亭主」、「ユージュアル・サスペクト」、「パルプ・フィクション」。それぞれ味わい深い一篇。

中でも同時代ものとして渋谷の単館封切り映画館で観た「トレインスポッティング」はアンダーワールドのボーンスリッピーとともに疾走しているスコットランドの若者達の刺激的な始まり方で、圧倒的に引き込まれる。内容はジャンキーの若者たちの話で、こんな状態から抜け出なければと思う主人公が最後に仲間を裏切り盗んだお金を持ち逃げし、一部は若者の一人に分け与えて出立していくという話。本当に刺激的で面白かった。

 

あと公開当初には観ていなかったが、レンタルDVD店で興味を持って借りて、感動し、結局DVDも欲しくなり、手元に持っているという「シェルタリング・スカイ」もいい映画だ。まず初めの船旅からアフリカに上陸する時の場面のまったりした雰囲気、その中で聞こえてくる坂本龍一の印象的な音楽。これで決まり。何をしているのかも不明の男女に、取り巻きのその後も神経衰弱様のJ.マルコビッチと男をもてあまし気味の健康な女性デブラ・ウィンガー。男の知り合いで上流社会出身のデボラに憧れる男もいる。衛生状態の良くない第2次世界大戦後47年のアフリカ。バスで移動時に顔中に蝿にたかられたり、アフリカの壮大で美しい景色も魅力。女性の生命力の礼賛の映画である。

 

90年代で特記すべきは「マトリックス」で、ぼくの中では自分が本当に生まれ変わったかのような大きな出来事であった。斬新で衝撃的な映像処理にびっくり。TVの宣伝でも銃の弾をかわすところが出ていたが、とにかくすごかった。キアヌ・リーブスがかっこいい。そのネオがボスとしたうモーフィァス、柔術を教えられている時の二人のやり取りは、まるで膳問答。預言者との会話も預言者のあいまいもことした会話が映画の後半、最後になってくるにつれ、あっそういうことだったのかと腑に落ちて感動する。ネオはキリストとなったのだ。(映画のストーリィは決して先読みしないこと!素直な感動や驚きが失われてしまうので。)宗教的にも、哲学的にも影響されて書いてあるなと思わせるシナリオ。最近観た「エリジウム」というSF/革命ものにも同じ雰囲気を感じたが、こちらの映像は節度なくうたれた後に体に残った銃弾がのちに爆発し、人間の体が八方にばらけ死ぬ。このようなえげつない作品と違い、この作品は銃などもあるにはあるが、原則、敵との戦いは柔術(カンフー?)で体と体のぶつかりあいで戦われる。(なおシリーズⅡ以後は語らない。)

 

1952年生まれ。アメーバまさたろ Vol. 1