ワシリーチェアの回で、「デザインが悪い」ことについて言及したが、最近購入したものが何とも言い難いものであったので、書いてみたい。



 商品を取り扱う企業から頼まれたわけでもないのに、商品の悪しき点を書き並べるのは、書き方にもよるが、よろしくない人であると思われても仕方がない。


 しかし、デザインを語る上で、良い点は当然として、悪しき点を語ることは、避けて通れないことであろう。


 そのため今回は、商品名は明示せず、形状を文章で表した上で、形状のどの部分が、個人的に、何とも言い難いと感じたのか紹介するということに挑戦したい。

 どの商品か分かる人もいるかもしれないが、そっと心の中にしまっておいて頂けるとありがたい。

 

 さて、その商品とは、


 スマートフォンスタンドである。

 

 卓上用ではなく、壁に設置して、スマートフォンやタブレット等(以下、スマホ)で動画等を視聴するためのものだ。


 私はとにかく長風呂であるが、入浴しながらひたすら無心でいるのではなく、必ず何か読むか、見るか、したい。以前は、お気に入りの本を繰り返し湯船で読んでいた。そして終いには落とすこと数回。湯でふやけた本を冷凍庫に何度入れたことだろう。(ただ乾かすよりも、冷凍した方が、本が平らに戻りやすいらしい。)


 最近は、いわゆる老眼という現象により、本を読むのが苦痛になってきたため、浴室には専らスマホを持ち込んでいるのだが、動画を見るのは老眼には優しいが、今度は、ずっとスマホを手に持っているのが苦痛になってきた。


 スタンドにもなるカバーやリングで、浴槽の縁にでも置ければいいのだが、生憎そのようなものは持っていない。そこで、浴室にスマホを設置するためのスタンドを設置しようと考えたわけである。

 

 浴室用のスマホスタンドは、スマホの背面全面が壁に接するように設置するものが多いようである。このタイプのスタンドは、浴槽内に座った入浴者の、足元又は側部に、スマホが設置されることになる。

 足元のスマホは、顔からそこそこ遠く、画面が小さく、視力に自信がない者には見えない。側面のスマホは、視聴のために首を壁側に捻り続ける必要があり、さらに、スマホの画面は斜めから見ると見辛い。

 そのため、背面を壁にくっつけるタイプでは設置する意味がないと思い、様々探してみたところ…


見つけたのである、件のスマートフォンスタンドを。

 

 そのスマートフォンスタンドは、全体的に、倒「L」字型である。底板の長手方向片端部が90度立ち上がり、側面を形成し、全体として「L」字型を成している。

 側面はマグネットが全面を覆っており、金属が仕込まれた壁に貼り付けることが可能である。その結果、底板を壁に対して垂直方向に取り付けることができる。


 つまり、入浴者自身の、右又は左の壁の、自分に近い箇所に、スマホの画面が自分に対して正面に向くように設置できるのである。首を捻ったような無理な体勢で、目をしかめながら視聴していた微妙にリラックスできないバスタイムを、真にくつろげる時間に変えてくれる商品のはずだ。

 

 だが、しかし。そう、今日の本題はここからである。

 

 このスタンドの問題の根本は、スマホを載せる台部分が、横にも、縦にも、あまりにも短いことではないかと思う。

 

 底板の長手方向(横幅)は、スマホが壁から生えた程度の長さである。そのため、壁際に体を寄せざるを得ない。のびのびと入浴したいと、浴槽の真ん中に体を置いた場合は、スマホに向かってやや首を捻らなければならないだろう。

 

 また、底板から5cmほど上部には、スマホを立てかけるための横棒が存在するのだが、ただでさえ底板の短手方向の長さ(たて幅)が短く、横棒まではさらに半分の長さとなるため、立てかけた時のスマホの角度は、ほぼ垂直である。

 

 そして、横にも縦にも短い台は、ストラップを付けたスマホには、更に、不向きである。私のスマートフォンは、底面の一方の角からもう一方の角に渡るストラップを付いているのだが、このストラップの紐と金具が、スマホを垂直又は水平に置くことを妨げるのである。

 また、水平・垂直にならないだけにとどまらず、置いた時にただでさえ垂直気味なのに、ストラップのせいでさらに垂直度が増し、震度1でも湯船に落下しそうなのだ。

 

 結局、この商品を使っても、入浴中に動画を見る時には首を捻らなくてはならないし、湯船に落下する危険性も低くならないのである。

 

 底面の面積がもう少し広ければ、これらの問題が多少解決しそうだが、それはそれで、今度は、狭い浴室内では邪魔になるという別の問題が生じるかもしれない。

 

 そもそも、マグネット式なのだから、スタンド自体に少し角度を付けて設置すれば、落下しそう問題は解決することはわかっている。スマホからストラップを外せば、より安全だろう。

 しかし、ストラップを外さなければスマホは相変わらず垂直にも水平にもならないし、ストラップを外す手間が惜しいのは私だけではないだろう。

 

 結局、このスマホスタンドは、「浴室で首を捻らずに真っすぐにスマートフォンと向き合える」というコンセプトは良いのだが、形状がそのコンセプトに今一歩及びきれておらず、課題が解決されていない、ということになる。

 

 つまり、課題が形状で解決しきれていない場合、「デザインが悪い」といえるのではないかと考えられる。

 

 各自の美的造形基準に見合わないことを「デザインが悪い」ということもできるかもしれないが、それはデザインを表装としかとらえていないことに他ならない。

 

 とはいえ、散々書いておきながらであるが、我が家の他の人々は毎日使っているらしい。なお、彼らのスマホにはストラップが付いていない。