久しぶりのブログ。

 

父がいよいよ危ないかもしれないって、施設から連絡があった先週。

ずっとガラス越しにしか会えなかったのに、特例で父がいるお部屋での面談が許されました。

↑↑↑この時以来の、そばで会える機会。

 

私が行った日は、熱も下がっていて、容態は安定していましたが、下血したり、吐血したり。

人工肛門の調子も悪かったり。

全身状態は悪化して、食べても栄養が吸収できないから、ガリガリに痩せて。

 

でも、父は。

 

部屋に入っていくと、ものすごく穏やかで、平和な顔をしていました。

 

「友達がな、たくさん会いに来てくれるんや。

みんなみんな、いいことばかり言ってくれる。

素敵やねぇ、いいねぇって、優しいことばかり。

嫌な人は誰もいなくて、ホンマにみんなが優しいんや」

 

ベッドサイドに私が座ると、穏やかに笑って、父はそう言いました。

 

苦しいだろう、痛いだろう、父がどんな苦悶の表情を浮かべているかと。

それを見て、何もしてあげられることがなくて、私はどうしたらいいのだろうかと。

 

恐れていたのがウソみたいに、

「そうか、そうなんや、よかったね」

と、言いながら、涙が勢いよく蛇口をひねったみたいに出てきました。

 

しばらく、そんな話が続いて、突然に父がハッとした顔をして言いました。

「お母さんも、会いに来てくれたんや。

それで、優しいこといっぱい言ってくれて。

『大丈夫よ』って言ってくれたんや」

 

おばあちゃん、お父さんに会いに来てくれたんやね。

それで、お父さんに大丈夫よって言って、安心させてくれたんやね。

 

お母さんの話をする父の、嬉しそうで、幸せそうな顔。

70代後半のおじいさんになってもなお、お母さんの「大丈夫よ」は、何より効くんや。

 

そんな父の顔を見て。

自分が3人の子ども達の母になれたこと、震えるくらい感謝しました。

 

子ども達がいつか、おばあさんやおじいさんになって。

死が目前に迫ったら、私も魂になって、そばに行って、「大丈夫よ」って言ってあげたい。

「お父さん、大好き。

私、お父さんのおかげで、本当にいま幸せやよ。

お父さんの子どもに生まれてきて、ホンマにホンマに良かったよ。

ありがとう」

 

父の腕をさすりながら、そう言ったら、父、顔をゆがめて、涙をこぼしたけれど。

すぐに穏やかな顔にもどって、よかったってつぶやいて。

 

そして、とぎれとぎれに、

「元気で。仲良くな。ずっとしあわせに」

って言った。

 

お父さん。

お父さんが私に望んだことは、いつだって、これだけだった。

 

勉強ができるとかできないとかで、評価されたことはない。

何かをがんばって、いい結果が出たら喜んでくれたけれど、できなかったからと言って、罵られたこともない。

容姿のこと、かわいいねって褒めてもくれなかったけど、ぶさいくだって言われたこともない。

 

ただ、ただ、いつも、「元気で、仲良く、しあわせに」って。

ずっと想って、育ててくれてたんやんね。

 

私も、いつも、子ども達にそう思ってるよ。

 

父との面談の、父の表情や、話してくれたこと。

色んなこと、思い出しては、泣いてしまう。

 

目が壊れた蛇口みたいになって、泣いてしまう。

 

でも、こんなに悲しいのに、すごくしあわせな自分がいるのです。

 

私の今の時間は、父の死を待っている時間じゃない。

 

父からたくさんもらった、もらいすぎるほどもらって、もらいっぱなしの愛情を、深く感じる時間だ。

 

 

 

 

 

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