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今回インタビューをさせて頂くのは、鬼才映画監督の原崑。「恫喝」でイスタンブール映画祭穴熊賞、「蚯蚓の春」ではスリランカ映画祭錦蛇賞を受賞と、日本が世界に誇る映画監督だ。現在撮影中の最新作「天下無敵のラッキーガール」にも大きな注目が集まる。そんな原監督に撮影の合間を縫ってインタビューをさせて頂いた。


ー監督、本日は撮影の合間のお忙しい時間に取材をさせて頂き大変恐縮ですー


悪いね。こっちもこういった時間しか用意できなくて


ーとんでもございません。こうしてインタビューさせていただけてとても光栄です。先ほどの撮影ではワンカットのために、あそこまで力を入れることに驚きました。さすが原監督の現場は違うなと感じましたー


俺はあれが普通だと思ってるよ。いい映画を撮るためには、いいカットを撮る。いいカットが撮れるまでカメラを回す。それだけだよ。


ーなるほど、それにしても役者さんが流す涙の塩分濃度にまでこだわる姿は、やはり映画に対する原監督の想いを強く感じ取ることができましたー


本当に悲しみで流す涙はしょっぱい。これは俺が映画を学んだ隅靖夫監督が言っていたことなんだ。そのために役者が流す涙の塩分濃度を極限まで高める。そのためにロドリゲス里美には大量の塩を食べさせたんだ。本当は塩で満たした壺の中で1年間生活してもらいたかったんだけど、今回はそこまでの時間は無かった。今の映画を観ていると、本当の意味で涙を流している役者はすごく少ないと思う。あれじゃあただの水を目から垂れ流しているだけだね。その点、上原昌志君の涙を流す演技は本当に上手いと思う。あれだけしょっぱい涙を流せる役者はそうそういないんじゃないかな。


隅靖夫 映画監督。昭和を代表する名監督として知られる。代表作に「関節」や「鼻毛」「Dr.サカイの焦燥」などがある。また、1968年から1987年まで放送されたドラマ「金語楼シリーズ」の監督も手がける。


上原昌志 俳優。東京都出身。1993年生まれ。ブリタニカ国際映画祭優秀新人賞受賞を始め、数多くの賞を受賞している期待の若手俳優。2001年「まさお」で映画デビュー。その後多くの映画に出演。代表作に「カボチャ畑の疾走」「僕とファーギーの11日間」がある。


ー悲しみによって涙のしょっぱさが変わってくるなんて考えたこともありませんでした。そういった細部に至るまでの作り込みが作品の質を劇的に高めているのでしょうね。他に監督が映画を撮る上で力を入れていらっしゃることはお有りなんですか?ー


そうだね。俺は撮った映像が馴染んでいるかを常に考えているよ。


ー映像が馴染むとはー


例えばワンカット撮って映像をチェックする。空が映っている割合とか木々の映り込むバランスそういった比率が悪いとどんなに役者がいい演技をしてもOKは出さない。俺の現場では雲の形が映像に馴染むまで撮影を止めることなんてよくあるし、ロケで建物が邪魔な時は交渉して取り壊すことも日常茶飯事だよ。この前公開された「侍の轍」では35階建の高層ビルを取り壊した。


ーそんなことまでされるんですか!ですが、それだと撮影スケジュールなどは大丈夫なのですか?ー


そこはスタッフや役者にいつも無理を言っているよ。ただ今も撮影が止まっている作品があるんだ。「間取りーど」って作品なんだけど当初は1989年に公開予定だったんだけどどうしても馴染まないシーンがあってね。


ーそれはどんなシーンなんですか?差し支えなければ教えていただけないでしょうかー


主人公がスペインの行きつけのコーヒーショップでコーヒーを買うシーンなんだけど、どうしてもサグラダファミリアが邪魔で、映像が馴染まない。だから今は少しずつサグラダファミリアを取り壊しているんだ。だけど、建設も同時に行われているからイタチごっこだね。何とか俺が生きている間には取り壊したいんだけど


ー何と!ワンシーンの為に世界遺産まで解体するのですかー


いい映像を撮るためには世界遺産も民家も関係ないよ。最高の映画を作らないとお金を払って観てくれるお客様に申し訳ないからね。まあサグラダファミリアは、俺達が取り壊していなければ5年くらい前に既に完成していただろうけどね。


ーそうなんですか。いやはや、原監督の映画に対する情熱には驚きました。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございますー


こちらこそありがとう。