最近、高校入試に関するニュースを耳にすることが多い。

 

 ・本郷が2021年度より高校募集停止。

 ・豊島岡が2022年度より高校募集停止。

 ・渋谷幕張が将来の中高一貫化を見据えて2020年度に制服をリニューアル。

 

これらのニュースに共通するキーワードは「完全中高一貫化」。

 

中高一貫校のうち、高校募集を行わない学校のことを、完全中高一貫校と呼んでいます。

 

近年、都内私立中を中心に、完全中高一貫化の流れが強まっていると言われていますが、

 

本当のところはどうなんだろう?

 

 

前回、TAP進学教室の高校合格実績(昭和62年度)について書きました。

 

この当時(30年以上前)と比べて、高校入試の状況はどのくらい変わっているのか、

 

詳しく調べてみることにしました。

 

 

まず、この当時、高校入試を行っていた都内私立高校の偏差値を示します。

 

新教育研究協会の偏差値データ(合格者平均偏差値)です。

 

 

<男子校(東京)>

70 開成、武蔵、桐朋
69 早大学院
68 海城、早稲田、早実、巣鴨
67 早実(商)
66 明大明治、中央大付、城北、佼成学園、学習院
65 法政第一、攻玉社、成城

 

<女子校(東京)>

71 慶應義塾女子
70 光塩女子学院
69 晃華

68 共立女子
67 学習院女子、恵泉女、東京純心、普連土、豊島岡
66 日大豊山女子(理数)、桐朋女子、大妻
65 実践、頌栄、鴎友、吉祥(文理・英)、調布(現・田園調布学園)、富士見

 

 

中学受験の難易度と比較してみると、開成や慶應義塾女子が私立最難関校であることに変わりはありませんが、ここで示されている高校偏差値は、全体的に学校間の差が小さいように見えます。

 

その理由については、上記の偏差値は、高校受験する一般的な中学生が母集団となっているためです。つまり、新教育研究協会の模試は公立高校の入試問題レベルであり、上位者には得点差がつきにくいのです。

 

これらの私立校(男子校16校、女子校18校)について、現在の高校入試の状況を調べました。

 

 

その結果・・・

 

高校入試を行っている学校が激減していることがわかりました。

 

 

 

この30年の間に、高校募集を停止した学校の割合は、

 

男子校で31%

女子校では72% にも達します。

 

何と、女子校18校のうち13校が高校入試から撤退していました。

 

 

この数字から明らかなように、

男子校より女子校の方が、完全中高一貫化の流れが顕著です。

 

 

<高校募集を停止した学校> カッコ内は当時の募集定員

武蔵(40)、海城(340)、早稲田(50)、攻玉社(50)、成城(350)、光塩女子学院(25)、晃華(20)、共立女子(100)、学習院女子(45)、恵泉女(90)、普連土(15)、大妻(100)、実践(120)、頌栄(45)、鴎友(140)、吉祥(320)、調布(70)、富士見(360)

 

<募集定員減の学校>

早大学院(600→360)、早実(250→180)、巣鴨(100→70)、中央大付(500→200)、城北(350→85)、佼成学園(320→120)、学習院(50→20)、法政第一(270→92)、東京純心(180→90)、豊島岡(400→90)、日大豊山女子(500→140)

 

<募集定員増もしくは変わらない学校>

開成(100)、桐朋(50)、明大明治(100)、慶應義塾女子(100)、桐朋女子(150→170)

 

これらの私立校で削減された高校募集の人数は、4300名を超えます。

 

さらに、高校募集を停止した学校は他にもある。

 

例えば、

渋谷女子 現・渋谷渋谷 (500)

日本橋女学館 現・開智日本橋 (250)

 

また、この当時、すでに高校募集をしていなかった学校もかなりありました。

 

<男子校(東京)>

麻布、駒場東邦、芝

 

<女子校(東京)>

女子学院、桜蔭、白百合、香蘭、千代田女学園、雙葉、田園調布雙葉、三輪田、昭和女子大付昭和、和洋九段女子、目黒星美、立教女学院、川村、聖心女子、東洋英和、女子聖学院、跡見

 

これを見ると、完全中高一貫化の流れは、女子校を中心に昭和時代から進んでいたことがわかります。

 

女子校には中学入試すら行わない「完全小中高一貫校」もあります(田園調布雙葉、聖心女子)。

 

今回、豊島岡が2022年度より高校募集を停止する発表がありましたが、難関進学校と位置付けられる女子校の高校募集はほぼ皆無になりますね。

 

理系科目を中心に、中高一貫教育のメリットが非常に大きいことと、少子化の影響で子どもの人数は減っている中、優秀な子を早期に確保するために、多くの学校が高校募集を減らし、中学校の定員を増やしてきたのだと思います。

 

 

一方、開成のように高校入試を継続するだけでなく、募集定員が変わらない学校は稀有な存在です。

 

今も昔もトップ校であり続ける開成ですが、他の私立校が高校募集を減らし、中学募集を増やした影響は受けていないのでしょうか。

 

昭和60年度と平成31年度の開成高の入試結果を比較してみます。

 

<開成高の入試結果>

 

当時より応募者が200名以上減少しているのは、少子化により中学生の人数が減少している影響と考えられますが、合格者が70名増加しているのは説明がつきません。

 

開成高に合格しても、辞退する人が明らかに増えています。

 

完全中高一貫化の流れが強まる中、「中高一貫校は、附属中学校から入学するからメリットがある」と考える人が増えており、開成を蹴って都立日比谷などに進学するケースが多いのでしょう。

 

 

以上述べてきたように、高校入試については、国立や早慶付属は除き、難関私立校では明らかに減少しています(女子校は特に顕著な傾向)。

 

この完全中高一貫化の動きは、今後は私立のみならず都立の中高一貫校にも広がり、偏差値トップ校の開成高の入試に影響を与えるほど、大きなものとなっています。

 

都心の私立中高一貫校の募集は、今後、中学入試に集約されていくのかもしれません。