「夏の終わり 8月最後の土曜日の朝、僕は仕事前の1Rサーフィンがしたくなり、いつもより少し早起きして海に向かった。AM4:30過ぎにいつものポイントに着くと天気は快晴で無風。予想通り、まだ薄暗い中で堤防脇から手頃な胸肩サイズのレギュラーの波が形良くブレイクしている。はやる気持ちを抑えるようにゆっくりとパドルして沖に着くと既に2人の先客サーファーさんがおり、そのウチの1人の女性サーファーはもう数本の波に乗ったのだろうか、ミッドレングスのボードで波待ちしながら器用に濡れた長い髪を結い直している。登ってきたばかりの朝日にその彼女のシルエットが映し出されてとても美しい画になっていた」
「良い波を数本乗り終えた6時前には次第にサーファーで混み合ってきたので、僕は満足して予定より少し早めに切り上げ、ウェットスーツのまま海から程近い自分のアパートの部屋へ立ち寄った。ドアを開けると目の前に、履き終えたスリッパがちょこんと行儀よく揃えて置かれたままになっている。…そう 数日前、確かに彼女はこの部屋に居てくれた。二人でカフェの食事を済ませた後 この部屋でワインを一緒に飲み たわいもない話をして、シャワーを浴び そして愛し合った。
2人で空けたボトル、2つのワイングラス、まだ乾き切ってないバスタオル。。それらは彼女がこの部屋で僕と過ごしてくれた時間の愛おしさを深く濃く感じさせてくれる…」


「そんな事をボンヤリと考え僕は少しためらいながらそれらを軽く片付け、シャワーを浴び 着替えながら 今日一日の仕事のルーティンを整理してみる。夏の間にサボり気味だったやらなきゃならない仕事は山積みだ。時計を見るともういい時間を回っていたので慌ただしく帰り支度をして外に出ると、夏の終わりの朝とは思えない強烈な日差しが照り付けていた。まだ夏は終わらない、まだもう少し時間は残っている。僕は自分にそんなふうに言い聞かせながら、今日一日が動き出す朝の街に向かって車を走らせた」

