暖かい布団の中でなぜかパチッと目が覚め、枕もとの携帯をみると4:44を示していた。
4:45にアラームセットしたので、幸先が良いと思った。
アラームを解除してそろっと布団から抜け出し、携帯で今日の温度を確認した。
現在時刻の気温は3℃が表示されており、とにかく厚着しないとヤバいと思った。
4:45にセットしている理由は、飼っている犬と外を一周散歩してから坐禅にいくためだ。
夏場はその時間には起きて外出するのを楽しみにしているのだが、もうだいぶ年をとってきたのと
寒いので、犬も全く起き上がる気配はない。
少し早めだが家を5:15に出ていつもの北鎌倉駅前駐車場に向かう。
車のディスプレイが示す気温は6℃で、少し暖かいと感じた。
外は真っ暗なのに、もうジョギングをしている人やサイクリングをしている人がいて、
とても自分にはそんなエネルギーはないと思いながら車で抜いていく。
いつもお世話になる、円覚寺の通用門まで行くと、門に張り紙があった。
「今後、毎月1日と15日は暁天坐禅会を行いません。」
普通、暁天坐禅会は仏殿の裏口から入場し、坐禅会を行う。
しかし1日と15日だけは特別で、正面から入場するのだ。
正面の仏像から向かって左側に二十数名のお坊さんたちが並び、
在家というか一般参加者は麦側に並ぶ。
朝6時になったら外の梵鐘がなり、お坊さんたちがお経を唱える。
お経が終わるころに円覚寺の管長さんが入場して仏像前に跪いて礼拝してお祈りの言葉を唱える。
この儀式に何度か参列したことがあり、毎回管長さんの礼拝する姿に感動していたので、
もうあの儀式が見れないのかと思うと寂しい気がした。
緩やかな坂を登っていくと、なんだか今日は慌ただしい雰囲気がした。
お坊さんたちが速足で坂をのぼっていくのが見えた。それも何人も。
私が仏殿横に到着したとき、3人の参加者が並んでおり、3番目の方に一礼してから列に並ぶ。
明るくなるのが以前より早くなってきたなと思いながら立っていると、何人ものお坊さんが
やはり速足で上の方に急いでいた。
そのうち一人のお坊さんが登場し、半鐘を鳴らす準備を始めた。
そういえば今日は節分だ。
季節のイベントにあわせて少し変化をつけてくるのが特別感があって得した気持ちになる。
今日担当するお坊さんは丸顔で、列の前に立つと人の良さそうな声で
「みなさん、おはようございます」と挨拶した。
声をだして挨拶するお坊さんと、全く声を出そうとしないお坊さんは大体半々くらいだ。
裏口の扉を開けて固定し、入場する。
座蒲を1枚とってお気に入りの席に置き、仏像に一礼をした。
今日の参加者は30名ちょっとくらい。ほとんどが男性だ。
私の妻もそうだが、低血圧気味の女性には冬の季節は少し厳しいのかもしれない。
暖かくなり観光シーズンになると女性の比率がぐっと高まってくるが、眠いときはしっかり眠るのが良い。
今日は初めての参加者は珍しくゼロだった。
丸顔のお坊さんが「始めます」と言って拍子木を鳴らし、鉦を4回力強く打った。
いつものように腰骨を立て、背骨の下のほうから一つづつ脱力していく。
肩甲骨と肋骨の間の力を抜いてしばらく待っていると段々整っていく感じがする。
今日はなんだか調子が良さそうだ。
やっぱり暖かくしてきたのが正解だった。
足が冷えると鼻が詰まるので、生地が二重のズボンをはいたのが良かった。
今日試したかったテーマは体重の分散による安定化だ。
腰骨を立てて座骨が座蒲に当たる一点に意識を保ちつつ、組んだ両脚の膝と座布団の接地点を意識して、きれいな三角形をつくることを意識した。どうしても座骨の1点接地意識だと不安定になるため、気づかないうちに姿勢が乱れてしまう。
座骨、両ひざの3点に等荷重をかけることで長時間の姿勢保持ができると考えられる。
膝に体重をかけるとやや前傾姿勢になり、腰が沿ってしまうのでそうならないように脱力を組み合わせながら姿勢をつくっていく。
下が落ち着いてきて、頭が上から引っ張られる感覚ができれば、呼吸の調整に移る。
しかし頭というのはなんでこんなに重いのか。
悲しい話だが1週間のうちで良い姿勢ができていると感じるのは坐禅しているときだけで、
いつもは気づくと猫背になっている。
崩れた姿勢に気付くたびに坐禅の手法を使って姿勢を直すのだが、1分もすればまた猫背に戻ってしまう。
常に姿勢が良い人というのは余程才能があるのか、もしくは圧倒的な時間を費やした努力の結果なのだろう。
2回目の坐禅は警策の渇入れつきだった。
今回のお坊さんは2年弱で初めてお会いした方なので叩かれてみることにした。
目の前を歩くときに合掌して両腕を交差して両肩に乗せ、頭を垂れる。
寒い床をお坊さんは裸足で歩いていることに気づいた。
多くのお坊さんは叩く前に警策を参加者の肩の上に乗せて「ここを叩きますよ」と教えてから片側を2回たたく。
しかし今日の丸顔のお坊さんはわざわざ掌を肩の上にのせて場所を教えてくれた。
叩く力は強くも弱くもなくだが、お坊さんの親切さが叩かれた肩に残った。
自分の番が終わり、隣の参加者も叩かれることを希望したので、どんな感じで叩くのかを横目で観察した。
まず礼は腰からさっと曲げて行い、肩に乗せる掌に気持ちを乗せている感じだった。
そして一番良い角度で警策が当たるように膝の曲げ具合を調整していた。
改めてなんという親切なお坊さんだと思った。
呼吸に集中して一段と深い意識をしようと思ったのが、お坊さんが巡回を終わって着席したときだった。
なんとか深い呼吸を3回したところで鉦がなり、終了となった。
外はすっかり明るくなり、窓から白い梅の花が見えた。
またこの丸顔のお坊さんにお世話になりたいと思う。