1998年、ロシアのデフォルト(日本ではデフォルトという言葉は使っていない。政府の債務放棄と言っていないそうです。ロシア財政危機と呼んでいた)

ロシア財政危機とは、ロシアの財政が悪化したところへアジア通貨危機の余波も受けて発生した債務不履行(デフォルト)並びに、一連の経済危機を指す。
狭義には、1998年8月17日にキリエンコ政府並びにロシア中央銀行の行った対外債務の90日間支払停止と、これに起因するルーブル下落、キャピタル・フライトなどの経済的危機を指す。
広義には、それ以前から各種の要因でロシアの財政が逼迫し、債務支払い停止を経て資本の流出、ルーブルの下落を見たロシア国内の経済混乱、並びに、金融不安に伴う株価下落、投資方針を量から質へ転換した資本の移動、巨大ヘッジファンドのLTCM(米)の倒産など、世界経済が受けた影響を指す。

=>エリツィンが国営企業をオルガルヒ(ソ連のユダ金)に切り売りしようとして庶民が立ち上がり、プーチンが「あんたの汚職は追及しないから引退しなさい」と交渉してエリツィンを退陣させ、オルガルヒを追放したことでロシアは立ち直った。

2014年、アルゼンチンのデフォルトは回り回って石油暴落につながった。

今回は「2010年欧州ソブリン危機」
2009年10月、ギリシャにおいて政権交代が行われ、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。従来、ギリシャの財政赤字は、GDPの4%程度と発表していたが、実際は13%近くに膨らみ、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていた。

2012年3月 10年国債の利回りは36.5%。
2014年4月10日 ギリシャ国債発行で市場復帰

一連の経済危機とその対策の不手際により、ギリシャの実質的な国内総生産は2009年から2012年の間に17%減少した。

ギリシャは沢山のCDS(クレジットデフォルトスワップ)に投機されている。だから世界中の債権市場で何が起こるかわからない。

CDSとは、信用リスクの移転を目的とするデリバティブ取引の一種であり、一定の事由の発生時に生じるべき損失額の補塡を受ける仕組みをとるもの。
クレジット・デフォルト・スワップは、定期的な金銭の支払と引き替えに、一定の国や企業の債務の一定の元本額(「仮想元本額」)に対する信用リスクのプロテクションを購入する(すなわち、信用リスクを移転する)取引である。具体的には、プロテクションの買い手は、仮想元本額に対する一定の割合の金額を定期的に支払い、一方、プロテクションの売り手は、参照組織についての倒産その他の信用リスクの顕在化を示す一定の事由(「信用事由」)が発生した場合に、一定の方法で特定された参照組織に対する債権(貸付債権や公社債など。)について、予め合意したところに従って、買い手から参照債務を元本額で購入する(「現物決済」)か、参照債務の価値の下がった部分を補う金額を買い手に支払う(「現金決済」)か、いずれかの方法によって決済を行う。

=>デフォルトするに100万円、しないに100万円!みたいなギャンブルですよね。

ギリシャはEU圏を出ない。

ギリシャはIMFからの借金を盾に「自由を奪う」とする戦略にはNo!である。

EU圏の責任者はドイツ。ドイツがどうするかを決めるしかない。


藤原直哉先生の解説

田中宇、ふんばるギリシャ
もしギリシャがユーロ離脱をEUに申請したとしても、EU側が離脱のメカニズムを作るのに2年はかかると言われている。ギリシャはユーロを使い続けることを強く希望している。東欧や南欧に、そんなギリシャに味方する国も多い。重要事項の決定に全会一致が原則のEUが、ギリシャをユーロ圏から追放する決定をするのはまず無理だし、そのような決定を裏付ける規則すら何もない。ギリシャを強制的にユーロ離脱させるには強制離脱の手続きを作らねばならないが、それには何年もかかる。「泥棒を捕まえる前に縄をなう(というより刑法を定める)」必要がある。ギリシャのユーロ離脱は、ほとんどありえない。

ギリシャは6月末までにIMFに金を払わなくてもデフォルトしないのに、なぜチプラス首相は6月末を機にトロイカと土壇場の交渉劇や国民投票を挙行するのか。それは、チプラスやシリザが、この問題を大きな国際問題に発展させ、IMFとその傀儡と化したECBによる借金取り戦略が国際犯罪であることを、同じく借金取りの犠牲になっているスペインやポルトガル、イタリア、東欧などの諸国の人々に気づかせ、全欧的な政治運動に発展させ、EUをIMFや米国覇権の傀儡である状態から解放することをめざしているからだろう。これは、フランス革命以来の市民革命の伝統を持つ欧州ならではの、欧州の支配機構を対米従属から離脱させるための「革命」といえる。そして、以前の記事に書いたように、欧州の最上層部の中にも、EU統合推進のためにチプラスやシリザ、ポデモス(スペイン)などをこっそり応援する人々がいる。

米国がドル延命のためユーロ危機を起こしたり、ECBにQEをさせたり、NATO(軍産複合体)延命のためにウクライナ危機を起こしてロシア敵視を強めたりといった、米国による覇権延命策が長引き、欧州がその犠牲になる中で、欧州政界では、左派の政治家が反米傾向を強めている。最近はドイツの有名な左翼議員(Oskar Lafontaine)が「米帝国主義くそくらえ」と表明した。これは、米国の好戦的なヌーランド国務次官補が昨年ウクライナ政権転覆に協力しないEUを「EUくそくらえ」と述べたことに引っかけたものだ。

米国が外交的(対露)にも経済的(IMF、QE)にも強硬策を強める中で、ギリシャは米国覇権の横暴(延命策)と立ち向かう経済面の政治闘争の最前線になっている。チプラスは、それを自覚して動いている。

日本は権力機構(官僚)が徹頭徹尾の対米従属で、安倍政権によるひどい言論抑圧が行われているとFTに指摘された日本のマスコミは、米国覇権に立ち向かうチプラスを批判したり「素人政治」と揶揄している。国際政治を把握するチプラスは、素人でなく、かなりの策士(革命家)だ。米国覇権がゆらいでも対米従属以外の策をとらない日本の官僚やマスコミの方が、国際政治の素人だ。日本のマスコミは、すっかり対米従属のプロパガンダ機関に成り下がっている。マスコミ志望の学生は、志望を他業界に変えた方が良い。

ギリシャ危機はまだまだ続きそうで、次に危ないのは銀行業界の国際的な連鎖破綻だ。ギリシャの銀行閉鎖に連鎖して、欧州や日本で、銀行の株が急落した。先進諸国のゼロ金利政策の長期化で、銀行界は利ざやで稼ぐことができなくなっている。ゼロ金利は(ドル崩壊まで)ずっと続きそうなので、銀行は弱いところから順番に米欧日のあちこちで潰れたり消滅していく。ギリシャなどで金融危機があるたびに連鎖して破綻傾向が強まる(就活学生は銀行業界も避けた方が良い)。欧州の危機が、米国の債券金融システムの危機へと感染する兆候は今のところないが、その感染が起きると大変なことになる。米国では最近、準州(コモンウェルス)のプエルトリコが、事実上の財政破綻を宣言したが、米連邦政府は同州を救済しないことを決めている。