東京新聞さま

TPP 交渉「迷宮入り」も 2014年1月5日 朝刊


食品や工業品の安全性など、経済の国際ルールを定めるために参加十二カ国の話し合いが続く環太平洋連携協定(TPP)交渉は今月、妥結に向けた協議が大詰めの段階に入る。決着していないのは日本の農産品の関税問題など五つほどの課題。ただ、これらの分野は各国の意見の隔たりが大きく、交渉が決裂し「迷宮入り」する可能性も残る。一方で妥結すれば国民生活にさまざまな影響が出ることは必至。これまでの協議を振り返るとともに、今後の交渉の行方を展望した。 (吉田通夫)

Q 各国はTPPにどんな利点があると考えているの。

A TPPには加盟国間の関税を撤廃して貿易を活発にしたり、食品の安全基準などを守るルールを統一したりすることで各国の経済を発展させようという狙いがある。話し合いは二十一の分野に及ぶ。


Q 交渉の現状はどうなっているの。

A 協議は十五ほどの分野でおおよそまとまった。食品の安全性や遺伝子組み換え食品の表示に関しては、各国が現行のルールを適用する方向で議論が進んでいて、日本に輸入される食品についても今の基準が守られそうだ。


Q 決着していない分野は。

A 日本と米国が主に二つの分野で対立している。日本が維持を目指す農産品の関税について米国は完全撤廃を要求。一方、米国は日本への自動車の輸出を増やすため安全審査を簡単にすることなどを求めている。このほかの各国の交渉では著作権や特許の保護ルールを扱う「知的財産」など五分野ほどで米国が新興国と対立している。


Q 日米は二〇一三年中に交渉をまとめようとしていたと聞いたけど。

A そうだね。でも話し合いがまとまらず交渉は年を越した。妥結の目標時期を先延ばしするのは、〇一年に始まり、協議が難航している世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)と似ている。ただ、自国企業の利益にこだわることが多い米国が譲歩する姿勢を示せば、TPPは一気に動きだすかもしれない。次の閣僚会合は今月か来月に開かれる予定で、妥結の目標時期はオバマ大統領がアジアを歴訪する四月になるだろうとも言われている。


Q 私たちの生活に影響する内容が多い交渉なのに、なかなか中身が分からないのはなぜ。

A WTO交渉は百五十カ国以上が参加してルールを統一しようとしている。過去には政府と関係団体が一緒に交渉戦略を練ったこともあったけど、多くの国が関係団体の反対を抑えられず、話し合いはまとまっていない。このことを理由に、TPPでは各国の交渉担当者が守秘義務契約を結び話し合っている。
(海外との条約は憲法にも勝るのに?)


Q でも、国民が内容を知らないまま妥結してもいいの。

A 妥結したら各国は協定の文章をつくり、それぞれ国会に承認をもらわねばならない。だから各国は「国会で国内への影響を説明する」と主張している。だけど結果だけ知らされても、日本では国会の承認を得るのは容易ではないだろう。
(多数決になると自公が押し切るかもしれませんが、公明党が一般指示者に説明できなくなり求心力は失われる、内部崩壊していく、自民も含めて選挙に勝てなくなる)