奈良県御所市の葛城山の麓に鎮座します「葛城一言主神社」にやって参りました!!
是に答へ曰りたまはく、「我まづ問はえつ。故吾まづ名告(なの)りを為む。吾は悪事(まがこと)というともよく一言、善事(よごと)というともよく一言、言ひ離(はな)つ神、葛城之一言主之大神(かづらきのひとことぬしのおほかみ)ぞ」とのりたまふ。 (『古事記』 葛城山と一言主大神)
これに相手が答えて、「自分が先に尋ねられたので、自分がまず名乗りをしよう。自分は、凶事も一言、善事も一言、事を決めて宣託する神、葛城之一言主之大神である」と言った。
今回はこの葛城山の麓に鎮座する「一言主神社」にやって参りました。
彼岸花がたくさん咲いていて、この青空とマッチして、もう最高でした!!
もう、テンション上がりまくりです(笑)
さてさて、
「古事記」に出てくる話で、
第21代雄略天皇が葛城山に登ったときの話が残されています。
概要はこんな感じです。
ある日、雄略天皇がお供を連れ添って葛城山に登っていると、向こう側の尾根にも登ってくる人たちがいた。その人たちを見ると、雄略の行列と人も服装も全く同じで区別がつかないほどであった。雄略が「天皇は国にただ一人。お前は一体誰だ?」と聞くと、相手も全く同じ質問を返してきた。激怒した雄略と臣下たちは弓をつがえた。すると相手も同じく弓をつがえてきた。雄略が「名を名乗れ。お互い名乗ってから矢を放とう」というと、相手が「先に尋ねられたから私から答えよう。わたしは葛城之一言主之大神だ」と答えた。雄略は恐れ畏まり、「人の姿なので気付きませんでした」と言って、自分の服と弓や刀、臣下たちの服なども脱がせて拝礼して献上した。一言主は手拍子を打ってそれを受け取った。雄略が帰るとき、一言主は行列を従えて、天皇を見送った。
概要と言ったのに、長くなって申し訳ないです。
しかし、天皇を裸にしたのは一言主が初めてじゃないですかね?(笑)
雄略天皇はユニークな話が多いので、調べてみると面白いと思いますよ(笑)
さて、一言主とはどんな神様なのでしょうか?
もう一度、一言主の言動を見てみましょう。
まず、天皇の行列と同じ衣装を身につけて向こうの尾根を登ってきます。
そして天皇の言葉や動作をそのままそっくり言い返したりやり返したりしています。
これ、山で起こる何かに似てませんか?
...そうです!!
「やまびこ」と「ブロッケン現象」です!!
山で「おーい」と叫べば「おーい」と返ってきます。
ブロッケン現象は、モヤに映った自分自身ですので、自分と全く同じ動作をするのは当たり前ですよね。
一言主は、山で起こる自然現象を「神様」と考えて出来上がったのだと考えられるのです。
また、この話では天皇と一言主に上下関係が見て取れます。
一言主が名乗ると、天皇が恐れ畏まって衣服や弓矢を献上している部分がそうです。
一言主が上位、天皇が下位の関係です。
しかし、「古事記」は天皇の正統性を著わした書物なので、
天皇を下位に見せるのは避けたいところです。
そこで、最後のシーンで一言主に天皇を見送らせ、対等の関係にまでして、天皇の権威を守ったと言われています。
雄略天皇は「古事記」の最後の方に載っている話です。
神の時代が終わり、人間の時代が近づいているようにも読めますね。
言葉には魂が宿るという考え方です。
古代、男が女に名前を尋ねることは求婚であり、女が名前を明かすのは承諾でした。
名が人の本性や本質だったのです。
「古事記」にも、名前だけしか出てこない神様がいます。
しかし、名前そのものがその神様の存在を証明しているのです。
名前があるから、そこにいるのです。
一言主は「凶事も一言、善事も一言、事を決めて宣託する神」です。
一言主はそんな古代からの言霊信仰が生みだした神さまとも言われています。
一言主は他にもいろんな話が残っている神様です。
調べてみたら面白いですよ!
おわり