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2011年12月21日記す

去る12月17日にPlay Station Vita[PS VITA]が発売された。しばらくは提灯記事が並ぶ頃であろう。そこで色々書き漏らしはあると思うが、任天堂派としてPS VITAに関する雑感をまとめてみたい。

コンセプトが不明瞭

◆ゲーム機としての性格が不明瞭

PS VITAのサイトを見ると、魅力と特徴として、いわゆるSNS関連の脅威を感じてか、3G搭載機種を始めネット・SNS関連の機能が目に付き、肝心のゲーム機としての宣伝が薄い印象を受ける。専門機は本業が、ゲーム機であればゲームの性能しゃんとしてこそナンボのものである。

◆有料3Gをラインナップする割に覇気がない

3G回線を用いたネット関連のコンテンツは、既にネット端末のシェアを持つ圧倒的なパソコンや携帯電話の存在がある。

この状態で同じネット端末という土俵に有料でサービスを展開するなら、ネット端末として数割のシェアを採るぐらいの気迫が必要である。特に序盤の数ヶ月~一年のが肝心である。出だしがつまずくと「3Gの魅力あるソフトがない→3Gモデルを買う魅力がない→低シェア→採算が見込めず対応ソフトが出にくい→3Gの魅力あるソフトがない…」の悪循環となる。一旦こうなると挽回が面倒であり、3G撤退の可能性も出てくる。

しかし、有料3Gでシェアを獲るという気概がどうも感じられない。3GモデルがPS VITAの目玉となるという見方があるが、逆に3Gモデルが足を引っ張りそうな印象を受ける。

◆3Gやネット活用の方向性も不明瞭

有料3GをラインナップするにはWi-fiモデルにない差別化が必要である。さらに3Gでつなぐネットは既にパソコンや携帯電話等がシェアを持つため、なおさら具体像の例示が求められる。それをするのはハードを開発したSCE[ソニー]ということになるのだが、一体3Gの魅力・方向性が何なのか例示が見られない。

◆ハードとソフトのサラダボール

Twitterやニコニコ動画などのコンテンツをPS VITAでどう使うのかの方向性も見られない。ただ単にコンテンツとして載せるのであれば、パソコンや携帯電話との差異が少なくVitaへの益は薄い。ゲーム機能に関連しない直接コンテンツに軒を貸しているだけであり、毒にも薬にもならない「ハードとソフトのサラダボール」に過ぎない。

これはPS VITAの全般にも言え、3Gなどの機能をがどのように使うのか、基本丸投げのように見受けられる。ソニー自身が具体例を明示していない、つまりソニー自身がゲーム機像をつかめていない。過分に高性能路線や多コンテンツ路線に走るのも、その自信の無さが由縁の一つにあるように見える。

◆何がウリなのか

◇PS VITAのウリは?

一方、PS VITAのウリとしている点は今ひとつ不明瞭である。

ソニーもSNSの脅威を感じて押されたのだろうが、あくまでネットはサブだという認識は持っているようだ。もしSNSに首ったけにでもなっていれば、今頃VITAでなく「PS KIZUNA」にでもなっていたかもしれない。

ソニーが先進機能のブランド色を失って既に10年以上経つ。PS VITAで新搭載された機能も、その性能の上下は別として、3DSや他社スマートフォン・多機能携帯音楽端末でデビュー済のものばかりで、めぼしいものは特にない。

ソニーの自慢だったはずの有機ELも、ニンテンドー3DS[3DS]の3D液晶が不評説に怖じ気づいたのか宣伝が薄く、提灯記事の中では背面タッチがウリ文句にするものもあるが、新世代機のウリ文句にしてはややしょぼい感がある。PS VITAのスペック値も現状では相当のものであるはずが、その宣伝色は希薄である。

◇確たる指針がない?

UMD[PSPソフト]所有者に対し当該ソフトを安価ながら有償ダウンロードできる仕組み[UMDパスポート]が発売近くなって発表された。UMD非対応は当初からのことであり、UMD不評を聞き付け焼き刃で追加した感が否めない内容である。3Gの料金形態説明も理路整然としない印象があった。

ソニー自身PS VITAについて確たる見通しや指針を持っておらず、自信を持っていない印象すら受ける。

◆目立つ出費要素

これはゲーム機としての性能には直接関係はない。ただ印象的なのが、やたら出費要素がしているように感じられることである。

特に目立つのがメモリーカードである。当初PS VITAの記録がソニー独自の規格カードとは聞いていたが、てっきりメモリースティックデュオのことだと思ったので、PSVITA用の新カードと知った時はさすがに露骨な印象を受けた。3DSは、市場シェアの大きく価格競争も大きいSD(HC)カードを採用。さらに2GBカードを本体同梱としている一方、PS VITAのメモリーカードは別売りである。

メモリースティックデュオに関しては汎用化させる目論見があったといえるが、PS VITAロゴ入りのメモリーカードを見ても、名前からして完全に汎用化を断念、収益源にするつもりだとも捉えられる状態である。SDカード採用を固辞し、PS VITAロゴを入れた新カードを採用した度量は評価したいが、あまりいい印象は受けるものではない。

他に、有料の3G料金形態や有償のUMDパスポートなど、実費としてやむを得ない面もあろうものの、全般的に悪印象を受けるのは確かである。

◆一年前の3DSの轍

さらに、PS VITAは不調だった序盤の3DSの轍を面白いように踏んできている。

*本体同日・近日発売ソフトが貧弱。
*[Wi-fiのみモデル]希望小売価格が3DSの当初の2.5万円とほぼ同じ。
*【欧米市場】当初年末発売を期待された。
*【欧米市場】しかし、発売予定が翌年2月以降。

◆醒めた雰囲気

何となくの印象として、PS VITAに対して、高性能路線を正統とする派のコアゲーマーやマスコミは盛り上がっているが、全般的にはPSPの時に比べ盛り上がっておらず、3DSの発売前後同様に醒めている印象を受ける。

秋葉原などでは家電店に数十人が並んだというが、コアなゲーマーが集まればそれぐらいはいるし、潜在も含む日本のゲーマー数千万の内の数百人に過ぎない。

予約完売店ありという報道や、逆に発売後売り切れ店少なしという報道もあったが、これらは販売店側の予約枠や仕入れ台数のさじ加減で次第でいかようにもなるものであり、何とも言えるものではない。実際に、僅少在庫で購買意欲を駆り立てる手法は、Amazonでなくとも商法の常套手段の一つである。

ソニーのポジション

◆二番手としてのソニー

以上で述べた不振要素は現状のものであり、後々の挽回の可能性はある。個人的には広汎なユーザーが任天堂、マニア~コアユーザーをソニーがシェアする状態が理想的ではと思っている。

任天堂派とすれば、ソニーが居てくれた方が良い面もある。無論仲良く共存しましょうというめでたい話だけでない。

*親御が嫌うようなコアゲームをソニー機が囲ってくれる
*ソニーが先進気質から切り開いた技術・概念を、後から「枯れた技術」として取り入れられる。
など

露骨にいえば、ソニーがいてくれた方が都合がよい面もあるということである。

3DSのニンテンドーeショップはニンテンドーDSiショップから大きく進化したが、主な追加要素を見ると、動画・PV配信、体験版配信[2011年12月より]、追加アイテム?等の販売[予定]など。これらはPSPのPLAY STATION STOREで実現済のものであり、これはソニーが先駆けたと評価できるものである。

◆ゲーム機の本懐

PS VITA登場に際し、3GやSNSに色気を出しながらも、Twitterやニコニコ動画などのあまり毒にも薬にもならないコンテンツと組み、噂されたモバゲーやグリーとは連携しなかった・ゲーム機としての自傷行為というマイナス点は取らなかったという点は評価できるはずである。

ソニーは、多分にゲームの本質からはずれている面があるが、致命的な認識の踏み外しはしていないとは思う。だからこそ、2005年前後の苦境の後もゲーム市場に踏みとどまれた一面はあると思う。

◆今後について

◇主導者としては不適

基本的にソニーはサポート対応が悪い印象がある。ハッカーに狙われたのも、常日頃のソニーの態度が彼らの義賊的心を奮起させた一面があるようにも見える。また、家電メーカーのハード至上・高性能・多機能志向が強く、ソフトウェアへの思慮も薄く、ゲーム業界を引導する役としては力不足である。

◇期待点

しかし一方で、今でもある程度強いブランド力に現れているように、、パナソニックなど他AV機器メーカーとは比べ高い技術力を持っているのは、プレイステーションやウォークマンを見ても自明である。ゲーム市場のトップとしては不適だが、市場二番手や三番手としては、期待の掛けられる力強い存在ではあることには違いない。「ソニーにはほどほどに頑張ってほしい」と言いたいところである。

◇問題点

しかし、PSPの当時は対DSのスペック値の相対的優位性が大きく、スペック値の少なさからPSPを選ぶ要素が多分にあった。そこにDSに遅れた分を挽回する余地はあった。

ところが、3DSで見た感じPSP相当までスペック上昇し、必要充分な程よい域に達した印象を受ける。実際、不評な頃の3DSでもスペック不足の声はほとんど聞くことはなかったと記憶する。

個人的にはモンスターハンターの3DS移籍もスペック値不足が解消された点があるのではないかと見ている。PSVitaにまた戻るだろうという見方が強いからか、モンスターハンターの3DSでの発売の報への反応が今ひとつ低いが、後々には「PS1でのFF7発売」に準ずるようなターニングポイントになる可能性も考えられる。

◆販売台数は如何に?

◇発表された値

発売半週ほどを経て、一部 実績推計値も出てきている。日本経済新聞によると、

①初期出荷約50万台の初日完売に未達。
②発売二日で約32万台販売で、3DSの発売二日約37万台の約87%。[エンターブレイン集計値]
--日経は「3DS同様の滑り出し」とするが、1割強差では同様とも大差とも言い難い?「3DSに及ばず」と言ったところか。

◇今後の発表

PS VITAと3DSは異なるコンセプトの商品であるが、同じ携帯ゲーム機としては参考になるものと思う。
直近で目安になるのは次の販売台数辺りであろうか。

①3DSの発売初週とPS VITAの発売初週
②PS VITAの発売初週における3DSとPS VITA
③いつの週でPS VITAの販売台数が3DSを下回るか

上で述べたような不振要素から早い内にPSVitaは失速するかと思われるが、特に、②においてPS VITAの台数が下回れば、かなり前途多難が考えられる。

まとめ

ゲーム機の本懐はゲームである。しかし、スペック値の相対的な優位性が薄れた以上、先発で軌道に乗りつつある3DSを追うのはPSPの時以上に困難が考えられる。

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